第20話 用務員
「もうそれぐらいにしてもらえませんなか? 道場破り殿」
「ぬ、何者であるか?」
「ただの老いぼれでございますよ」
ぬぅ、
「我は剣聖に用があるのである」
「であれば、この爺に付き合って貰えませんかな?」
「ぬぅ、前提条件と言うヤツであろうか?」
「何とでも。 それよりもワシが勝利した
「元よりあのままにしておくつもりはないのである」
「判りましたじゃ。 ではお手合わせを願えますかな?」
「仕方あるまい」
何だか爺さんと手合わせする事になったのである。 まあ、さっさと済ませて剣聖を探すとしよう。
爺さんは
「いざ勝負!」
「かかってくるのである!」
取り敢えず
何となく
剣術レベルで言えば我よりも確実に劣っているのだが、駆け引きが上手い様で、スルリスルリと
とは言えスピードの遅さは
「剣を使わないのは、爺に対するハンデのつもりですかな?」
「何、爺さんには
「ほっほっほっ、まさか手加減される日が来ようとは思いませんでしたぞ」
「『
「老いとは悲しいモノで御座いますなぁ」
そう言いながらも攻防は続いているのだが、今のところ決着がつく様子は無い。 だがまぁ、お互いに判っているのだ。
老人の体力は無限ではないし、我は
「捕まえたのである!」
「ほっほっほっ。 本当に年は取りたくないモノですなぁ。 もうワシに勝利の目はありますまい。 ですが武士の情けで、せめて敗北は剣でお願い出来ませんかな?」
「よかろう、
爺さんの頼みであれば仕方あるまい。 本当は殺すつもりなど無かったのであるが、かと言って生き残るとも思えない。
ならばどうせであるから、我の魔剣を披露する事としよう。
我は腰の剣をアイテムボックスに仕舞い込み、代わりにレバンテインを引き出す。 と同時に周囲の空間が濃密な魔力によって
「おおぅ、コレは…何と言う…」
爺さんは言葉にならない様であるな。 だがしかし、その時間はスグに終わる。 もうすぐレバンテインの全身がアイテムボックスから出てしまうのだから。
そして、レバンテインの全貌が明らかになった直後、周囲を魔力嵐が襲った。
地面が捲れ、壁が吹き飛び、建物が消し飛ぶ。 まあ中心にいる我には実害は無いのであるが、周囲は悲惨なものだ。
「そう言えば道場の敷地内であったな。 見る影もないが…」
周囲は爆発でも起こったかのように、我を中心として吹き飛んでいる。 当然爺さんも真っ先に消失した。
「ぬぅ、そう言えば剣聖とやらは何処に行ったのであろうか? この程度で死ぬとも思えぬし」
どうやら留守であった様である。 我は運が無いのであるな。
流石にこのまま王都を
我は運命の女神にでも嫌われているのであろうか? まあ魔王を気に入る女神がいるとは思えぬが。
仕方がない。 冒険者ギルドにでも戻って、クレームでも言うのである。
我はトボトボと歩いて冒険者ギルドへと向かう。 うむ、
だが言わねばなるまい。 でないと爆発してしまいそうなのである。
「受付嬢よ、剣聖は不在だったのである!」
「そん事知りませんよ。 それよりも王都内で起こった魔力災害について、何か知りませんか?」
「魔力災害であるか? 我は爺さんの相手をしていたので知らないのである。 それよりも剣聖の居場所を吐くのである!」
「私はマネージャーじゃないんですから知りませんよ! そんなに戦いたいなら、もうすぐ開かれる武闘大会にでもエントリーしてみたらどうですか? きっと剣聖様もエントリーすると思いますよ」
「エントリーするのである!」
「まぁとは言っても、魔力災害の影響で武闘大会自体が開かれるのか微妙なんですケドね」
「何とかするのである!」
「無茶言わないで下さい! 災害復興なんて役所の仕事であって、ギルドの仕事じゃありませんよ!」
「ぬぅ、役所の人族でも締め上げるべきであろうか?」
「止めてください! ギルドは役所と
「ぬぅ、
「どっちがですかっ!」
受付嬢にまでフラれてしまったのである。 人族は我の相手をするのが嫌なのであろうか?
魔族であれば修行にも付き合ってくれるし、こんなに
人族とは色々と面倒なのであるな。 大体からして、今の人族は
その昔、人族は魔王が誕生すると、魔王城まで攻め入って来たと言うではないか。
それに過去の勇者パーティーの中には、当時の魔王を倒した者もいたと聞く。
今の人族と当時の人族との違いは何であろうか? 何か
これは調べてみる必要があるのであるな。 我の楽しい戦いのためにも。
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