第17話 下層

「ロックガトリング!」

「GUGYAAA~っ!」


 ぬぅ、段々とロックガトリングがづらくなってきたのである。 まあ高速で岩をぶつけているだけであるなから。 仕方あるまい。


 勇者と分かれて下ること10階層程度、この階層のバトルオーガには有効な攻撃とは言えなくなってきた様である。


 このロックガトリングは実質的には物理攻撃であり、魔法の属性攻撃とは異なるのだ。


 レイスなどの一部の魔物には通用しない攻撃ではあるが、それ以外の魔物には通用するので多用しているのだ。


 無論、弱点を考慮した魔法攻撃の方が有効ではあるのだが、一々相手ごとに攻撃手段を変更するのが面倒なのである。


「ぬぅ、次からは拳でいくか」


 拳は我が一番多用する攻撃手段である。


 本来であれば剣を使えば良いのであるが、何と言うかオーバーキルなのである。


 我愛用の魔剣を使えば、相手の魔物は消し飛ぶし、ダンジョンにだって被害が及ぶ可能性があるのだ。


 だからと言ってこの旅用に用意した使い慣れていない剣では、狭い場所では戦いにくいし、ポッキリいくのも怖い。


 結局はインファイトになろうとも、拳の信頼性がそこまで高いとも言えるのである。


「さて、下への通路はどこであろうか?」


 我の経験則から言えば、入り口から最も遠い場所か、魔物の数が最も多い場所のどちらかである。


「GUWOOOO~っ!」

「ふんぬっ!」


 正拳突きで腹に大穴が開くバトルオーガ。 まぁ所詮しょせんはオーガであるな。


 そのまま死体が残らず魔石になったので、一応アイテムボックスへ収納しておく。


 最初は勇者育成ダンジョンと言う事で高かったテンションも、長々と続く雑魚狩りで駄々下だださががりである。


 それに探知魔法では魔物の位置は分かっても、マップ情報まで分かるワケではないのだ。


 まあ端的に言えば、飽きてしまったのである。


 いっそうの事、ここで津波魔法であるダイダルウェーブを使うのはどうであろうか?


 雑魚な魔物は流されるであろうし、それに水の流れを観察していれば、下層への道も発見できそうな気がする。


 まあ、必要な水量は階層を水没させる程度も必要なのであるが、我には造作もない事である。


 よし、やるのである。


「ダイダルウェーブ!」


 低周波の振動と共に、どこからともなく現れる大量の水。 今は膝下程度であるが、このまま完全に水没させるのも悪くないかも知れない。


 我ならば、1日程度であれば息を止めておけるのでおぼれる心配すらないのだ。


 それに上手く水流に乗る事が出来れば、もしかしたら最下層まで到達出来るかも知れないのだからな。


 水が天井付近まで到達した段階で力を抜き、そして水が無くならない様に魔力を使って大量の水を生みだし続ける。


 すると我の体は、ゆっくりと、しかし確実にある方向に向かって流れ出した。


 まあ壁に衝突したりして刺激を感じるのではあるが、我のはがねの肉体は至って無傷だ。


 おっ、あれに見えるはバトルオーガであるか? 溺れているのかジタバタしているのだが、何ともあわれだな。


 力がない者はダンジョンでは死ぬ運命にあるのだ。


 それに軟弱な魔物たちは既に、魔石となって流されている。 うむ、どうやら我は画期的なダンジョン攻略法を編み出した様である。


 それからどのくらい流されたことであろうか? だいぶ階層も下っているが、我と一緒に流されているのは魔石だけになっていた。


 どうやら水棲の魔物は、このダンジョンにはいなかったらしいな。 今のところは、生き残っている者はいなさそうである。


 流される事10時間程、流れは徐々に収まってきた。 ふむ、最下層が近いのであろうか?


 あっ、ドラゴンである。 連中はやはりシブトイな。 青やら赤やら緑やら、多数のドラゴンが我を見つけて怒り狂っておる。


 まあここまでくれば十分であろうな。 我は水中でも戦えない事はないのだが、多数のドラゴンを相手にするには、ちと面倒臭い。


 我はダイダルウェーブの魔法を解除し、襲ってくるドラゴンたちを次々と拳で撲殺する。


 そう言えば、我の周りの者たちは、どうしてドラゴン程度を大げさに言うのであろう。 殴れば普通に死ぬぞ?


 ぬぅ、それにしても多いな。 一体、何階層分のドラゴンが集結しているのであろうか。


 元気なのは青いのと黒いので、赤と緑は弱っているようである。 所詮はトカゲの仲間であるな。


 だが関係なく殴り殺す。 殴って殴って数を減らす。


 ぬぅ、あれだけがれたドラゴンであるが、ありがたみが無いのである。 だってまだまだいるし。


「ぬぉぉぉぉ~っ! 連打、連打、連打、連打なのである!」

「GUGYAGYAGYAGYAAA~っ!」


 中には火とか風とかを吐き出してくる者もいたが、まあドライヤーみたいなものである。


 全く我には通用しないと悟った何匹は逃走を図ろうとするが、逃しはせんよ。


 だって何だか、楽しくなってきたのであるから。


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