第16話 勇者

「お主が勇者であるか?」

「ええ、一応そうなると思います」


 ぬぅ、どう見てもヒョロガリにしか見えないのである。 一応鑑定しておこう。


「鑑定!」


 --------------------------------------------------

 名前 : ガイル

 種族 : 人族


 Level : 8


 HP : 63

 MP : 21


 Power : 103

 Speed : 26

 Att : 74

 Def : 62

 Dex : 31

 Int : 28


 スキル :

  運搬Lv8、剣術Lv6、支援魔法Lv3


 称号 : 運搬人、勇者(仮)

 --------------------------------------------------


 ぬっ、(仮)ではあるが一応勇者なのである。 それにしても低いステータスであるな。 勇者の卵であろうか?


「ぬぅ、一応勇者なのである」

「本当ですか? あっ、鑑定持ちなのですね」

「うむ。 勇者の卵の様であるな」

「へぇ、僕が勇者なんだぁ。 嬉しいなぁ。 これで皆にバカにされなくなるぞ!」


 ぬぅ、とてもではないが戦う気にはなれないのである。


 そう言えば、剣の所有者がどうとか言っていたな。


「その剣の装備がどうとか言っていた様だが?」

「あっ、コレですか? コレは『選定の剣』と呼ばれていまして、勇者の選定にも用いられる剣なんです。 そして僕は拒絶されていない事から、勇者と言えるワケなんですよ!」

「ほぅ、選定の剣であるか。 鑑定」


 --------------------------------------------------

 名前 : エグソカリバン

 称号 : 選定の剣

 備考 : 元々は所有者を厳しく選定する剣であったが、

    今は誰でも所有者にしてしまうビッチな剣

 --------------------------------------------------


「色々と言いたい事はあるが、確かに『選定の剣』に違いないのである」

「でしょう?」

「うむ」


 でもこれでは、誰でも勇者になれてしまうのではあるまいか? そうか、勇者は血で決まるのではなく、剣だけで決まるのであるな。


 ならば、「魔王と勇者は永遠のライバル」とは戯言たわごとであったのであるな。 ショックである。


「それでお主はどうするのであるか?」

「そうですねぇ、勇者になったからには王様に公認して貰う必要がありますね。 だから、ダンジョンから脱出して王城に向かい、謁見を申し込もうかと思います」

「一人で…その…このダンジョンから出られるのであるか?」

「ええ、何とかなると思いますよ。 この剣だってすごいですし、僕はこう見えても剣術がレベル6もあるんです」

「…そうであるか。 頑張がんばるのである」

「はい、頑張ります!」


 あの『選定の剣』とやらは我に数秒で屈服した剣であるし、剣術がレベル6しかないのに何を自慢気じまんげに言っているのであろうか?


 我の魔剣であるレバンテインは、屈服するまで1週間は掛かったのであるがな。 その分強力過ぎて、使い道があまり無いのであるが。


 まあ良いのである。 勇者とは言え、この様な弱者には用は無いのである。


「それでは達者でな」

「はい、助けて下さり有難う御座いました。 それじゃ僕、もう行きますね」

「うむ」


 そして勇者を見送ると一人になった。 ぬぅ、これからどうすべきであろうな。


 王都にやって来たのも、勇者が目的であったし、やる事が無くなってしまったのである。 困った。


 まあココはダンジョンとは言っても浅い階層であるし、出るのは容易である。 いや、待て。 本来は勇者をきたえるダンジョンであったか?


 であれば、深層まで行けば、それなりに楽しめるのではあるまいか? うむ、魅力的である。


 ならば今は、ダンジョンを攻略して気分をまぎらすのも悪くはないであろうな。


「ダンジョンの完全攻略である!」


 えた気分を吹き飛ばし、これからの攻略に思いを巡らす。


 そういえば我が修行で使っていたダンジョンでは、ラスボスはエンシェント・ドラゴンであったな。


 普通のドラゴンとは違い、倒すのにも数日は掛かったのである。 あの時は楽しかったのであるな。


 色々な修行の成果を確認出来たし、なにより相手が弱くは無かった。


 自慢のうろこは、殴った程度では傷付かず、最終的には魔剣で討伐したくらいだ。 我が生涯でも上位にランクインする戦いであった。


 もしもココが勇者を育成出来るダンジョンであるなら、それ以上のラスボスがいる可能性があるのだ。


 ふっ、ふふふっ。 楽しみであるなぁ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る