第15話 成敗

「助太刀するのである!」

「あん、誰だテメェ?」


 我は急いで男と荷物持ちの間に入り、男に対してデコピンを喰らわす。 ノロマな男は我に反応すら出来ない様だ。


「てい!」


 ぱぁん!


 はぁ? 何が起こったであるか? 何故だか男の頭の上半分が破裂したのである。


 あっ、もしかしてデコピンでも強過ぎたのであろうか。 軟弱であるな。 まあ仕方がない。


 残っているのは荷物持ちの他には、武闘家っぽい男、魔術師っぽい女、ヒーラーっぽい女である。


 次に動いたのは武闘家っぽい男であった。 仲間が攻撃されたと思ったのか、我に向けて一直線で突進してくる。


 ぬぅ、どうするべきであろうな。 デコピンでもオーバーキルなのであれば同じ方法は止めておいた方が良いだろう。


 今度は注意しながら人差し指で、突進してくる男の額を抑え込む。


「てい!」


 ぷすっ!


 ぬぬっ、何が起こったのであるか? 自分の人差し指を見つめてみると、男の眉間に根元まで埋まっていた。


 男は膝下から崩れ落ち、るように倒れ込む。


 ぬぅ、これもダメであったか。 ちょっとこの武闘家は弱過ぎではなかろうか? 修行が足らないなんてレベルではないのである。


 続いて魔術師っぽい女が呪文の詠唱を始める。 顔は恐怖に引きっている様だが仕方あるまい。


 我は極限まで威力を弱めたファイヤーボールで迎撃する事にする。


 今回、魔術を使う事にしたのは、魔法耐性の問題である。 魔術師は通常、魔法耐性が高いのだ。


「ファイヤーボール!」


 じゅっ!


 ぬっ、ぬぬぬっ、女の上半身が蒸発してしまったのである。


 いかんな、手加減がこんなに難しいモノとは思っても見なかったのである。


 だがしかし、我は学習するのである。 残るヒーラー女であるが、体術で制圧するのは悪手であろう。


 かと言って魔術も厳禁だ。 確実に殺してしまう未来しか見えない。


 ならば息を吹き掛けてみるのはどうであろう。 軽く壁にでも押し付けてみれば十分ではなかろうか?


「ふぅ!」


 べちゃっ!


 何やら女が壁と衝突した瞬間に、真っ赤に染まったのである。


「おい女、大丈夫であるか?」


 返事が無い。 ただのしかばねの様だ。


 おかしい。 我は穏便に無力化するつもりであったのだが、何故か全員死んでしまった。


「うむ、悲しい事故である」


 そして、生き残った目撃者である荷物持ちの男に目を向ける。 あっ、震えているのであるな。 男に殺されそうになった事が、余程に恐怖であったのだろう。


 さて、この現場をどうすべきであろうか? 確かダンジョンでは死体が残らなかったのではあるまいか?


 ならば可哀想な荷物持ちのために、金目かねめのモノは拾い集めてやるべきであろうな。


 そう思って最初の男の剣を拾い上げてみたのだが、妙な声が聞こえてくる。


『ちょっとぉ、私は選ばれた者にしか触れられない高貴な剣なんですけどぉ! カッコいい男しか所有者にするつもりはないんですけどぉ!』


 ぬっ、言われてみれば少し、拾い上げた右手がピリピリする。 拒絶反応であろうか? 確かに高そうな剣ではあるな。


 だがしかし、相手がインテリジェンス・ウエポンであるなら対処は簡単である。 魔力を過剰に送り込み、教育してやれば良いのだ。


「ふん!」


 一気に高圧縮した魔力を送り込み、剣の意志をバキバキに折るのである。


『嫌ぁぁぁ~っ! そんなに大量に注ぎ込まないでぇぇぇ~っ! 壊れちゃう! 私、壊れちゃう! らめぇぇぇ~っ!』


 静かになったのである。 抵抗するようなピリピリ感も無くなった。 これで問題解決であるな。


 何やら白かった色調が全体的に黒っぽくなったのであるが、まあ誤差の範囲であろう。


 ついでに杖やらメイスやらの装備品を拾い、荷物持ちの下へと向かう。


「お主のモノである。 災難であったな」

「あっ、有り難うございます。 お陰で助かりました」


 装備品を受け取った荷物持ちは、頭を下げて礼を言った。 うむ、「終わり良ければ全て良し」であるな。


 そして立ち去ろうとした我は、思わず耳を疑う言葉を聞いた。


「あれ? これって勇者にしか装備出来ないって言われている聖剣? 拒絶されていないって事は僕が勇者?」


 何ぃぃぃ~っ! この荷物持ちが勇者だとぉぉぉ~っ!


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