第14話 ダンジョン
「勇者に会いたいのである」
「えっ、何を?」
王都の冒険者ギルド、ここの受付嬢は頭が悪いのである。 言葉が通じなかったのであろうか?
「勇者に会いたいのである!」
「だから急に何を
「『会う』とは人と人が遭遇する事を言うのである」
「それくらい知ってます!」
ぬぅ、何が判らないのであろうか?
「我、勇者、遭遇、望む、である」
「いや、言葉が判らないのではなく、貴方は誰で、どうして会いたいのかって聞いているんです!」
ぬ、違うのか?
「我はAクラス冒険者のアビスである。 勇者に用があるのである」
そう言って我は、冒険者カードを差し出す。
「あっ、はい。 アビスさんですね、確認しました。 それで緊急の依頼でしょうか?」
「そうであるな。 出来れば早急に対戦したい」
「はぁ、
「つまり、自分で勝手に挑んでも構わないと言う事であるな」
「まぁ、そうなりますね。 でも言っておきますが、勇者さまは強いですよ。 貴方もAクラスですからそれなりに出来るのでしょうが、お勧めはいたしません」
「構わないのである。
「今は王都近郊にある、Sランクダンジョンにアタック中ですね。 確か、1週間ほどでお戻りになる予定だと伺っております」
「それは、どこのダンジョンであるか? 詳しい場所を聞きたいのである」
「地図をお持ちですか? お持ちでない場合は、王都周辺の地図も販売しておりますが?」
「買うのである」
「銀貨1枚です」
おおぅ、我が持っている地図よりも詳細であるな。 そう言えばダンジョンであるか。 修行でよく潜っていたので、懐かしいのであるな。
「
「またのお越しを、お待ちしております」
ふふふっ、待っているのである、勇者よ!
冒険者ギルドの外に出て、向かうのは当然、勇者のいるダンジョンである。
「フライ!」
上空か地図を確認し、最短距離でダンジョンへと向かう。
勇者もダンジョンに潜っていると言う事は、やはり修行であろう。 我もそうであったのだから判るのである。
欲を言えば、開けた場所で思う存分戦いたかったのであるが、
斬り合いであろうか? それとも殴り合いであろうか? 我としては総合格闘技も捨てがたい。
ふっ、我の大胸筋や広背筋、腹筋までもが歓喜しておるわ。
いつ以来であろうな。 こんなにもドキドキワクワクするのは。 まるで少年時代に戻ったかのようである。
これが魔王の血によるモノなのか、それとも宿命や運命と言ったモノか。
我の修行が、この日のためであったかと思うと、感慨深いモノがあるのである。
そうか、このダンジョンの中に勇者がいるのであるな。
探知魔術を全開にし、中へ、そして奥へと突き進む。
「ロックガトリング!」
途中で遭遇する魔物などは、「ロックバレット」を改造して作成したオリジナル魔術、「ロックガトリング」で一掃した。
こんな事で時間を消費するなど、
そして階層を40ばかり降りた時であろうか、我は人族を発見した。
「ひゃはははは~っ、ガイル、お前は追放だぁ!」
ぬ、何であるか? 何か込み入った状況らしいので、我は物陰に隠れて様子を
「そんな、今までパーティーのために尽くしてきたじゃないか。 どうして俺が追放なんだよっ!」
「それはお前が無能だからだ! 何が尽くしてきただよ、雑用なんで誰にだって出来るだろうがっ!」
「そんな、荷物持ちだってしてきたし、支援魔法だって使ってきたじゃないかっ!」
「アイナがアイテムボックスのスキルを取得したからな。 それにお前の使えない支援魔法がなくても、オレ達は十分に強くなったからだ」
「そんな事は無いハズだ。 確かに俺の支援魔法は独特で、攻撃の瞬間にしか効果が無いから分かり辛いかも知れないが…」
「うるせぇ! 全ての荷物と有り金を差し出せ! 今までの迷惑料だ!」
「そんな、こんなダンジョンの奥底で装備も無しでどうしろって言うんだ! 生きて地上に出られないじゃないかっ!」
「知ったことか。 弱く無能なお前が悪いんだろ!」
仲間内の
どうすべきであろうか?
「死ねっていってんだよ!」
「お前、何をっ!」
あっ、これ以上はイカンな。 男が剣を抜いて、荷物持ちに斬りかかったのである。
ちっ、勇者に出会う前のトラブルは回避したかったのであるが、放置して折角の宿命の対決に影響してはつまらんからな。
迷惑だが助太刀するとするか。 はぁ、勇者に会う前の試練として、処理するしかあるまいよ。
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