第13話 クレーター
「うむ、我には預かり知らぬ事ゆえ、見なかった事にするのである」
「んなわけあるくわぁぁぁ~っ!」
何故か王女の人格が崩壊しているのである。
「いや、我にどうしろと?」
「こんなの大災害じゃねぇかっ! 何とかしろよっ!」
宮廷魔術師と戦えと言ったり、クレーターを何とかしろといったり、
「何とかなりますよね? 今なおジワジワ広がっていたりするんですけど、このままだとどうなってしまうのですか?」
「そうであるなぁ…」
我が使った魔術を簡単に言えば、
「そうであるなぁ、この穴は広がり続け大陸全土は深淵に沈む事となろう。 だが安心するのである。 いくら何でも、他の大陸までは沈まないのである」
「安心出来るくわぁぁぁ~っ! それってば、王国が滅ぶって事じゃねーくわっ!」
「それだけであるぞ。 古来より技術の進歩には失敗は付き物、それくらいは大目に見るのである」
「大目に見られるくわぁぁぁ~っ!」
何をそんなに起こっているのであろうか? ただ単に、他の大陸に移住すれば解決する話であるのに。
「ねぇ、何とかして下さいよ! 出来るんでしょ?」
「崩壊を止める方法であるか? あるのである」
「あるんくわぁい!」
「何、簡単である。 要するに崩壊部分が無くなれば良いワケであるからな」
「それで、どうするんですか?」
「崩壊部分を吹き飛ばせば良いのである。 まあその代わり人類の危機になるやも知れんがな。 では早速…」
「待てやこらぁぁぁ~っ!」
ぬぅ、止められてしまったのである。
「大体、何をしようとしていやがったんだよっ!」
「単純に最上級の爆裂魔法を使おうと思っただけである。 なに、星のそのモノを吹き飛ばすのではなく、表面を削る程度であるからな。 それだけで星が崩壊する事はあるまいよ」
「本当だよな。 それでこの崩壊は止まるんだよな」
「まあ大丈夫であろうよ。 衝撃波によって地表が波打って津波の様な現象は起こるであろうが、地表に住む生物が成層圏まで吹き飛ばされるだけである。 飛んで戻ってくれば良いだけであるからな。 では早速…」
「もう一回、待てやこらぁぁぁ~っ! 人間は空なんて飛べねぇんだよ」
「それなら第一宇宙速度を突破して、宇宙を旅するだけである」
「おめーは大丈夫かも知れないが、人間は宇宙に放り出されたら死ぬんだよっ!」
「ぬぅ、修行不足である」
「そう言う問題じゃねぇよっ!」
本当に
「そうなると、後は崩壊エネルギーが尽きるまで、水魔法や岩石魔法で質量を送り込み続ける必要があるぞ。 面倒臭いので、我はやりたくないのである」
「いや、やれよっ! 面倒臭いとか言うな! 人類の危機とか大陸の危機とかよりもマシじゃねぇかっ!」
「ぬぅ、どうして我が…」
「いや、テメェが原因だからなっ!」
仕方が無いので天変地異レベルの降雨魔術を使う事にする。 まぁ大気中の水分を全て使う事になると思うが、問題が起こっても世界中で干ばつが起こる程度であろうしな。
「【空よ泣け、世界の全ての涙をここに】、ノア・フォーリンダウン!」
次の瞬間、スコールが可愛く見える程度の
おおぅ、質量の相殺が始まったのである。 ただし、大陸1個分の質量ともなると膨大で、このクレータの周辺には1週間は雨が降り続く事となるだろう。
またそれは、それだけの量の水分がこの世界から失われる事を意味しており、いくつかの地域では急激な砂漠化が始まるだろう。
まあ、湖や場合によっては海が消失するかも知れないが、その程度である。
「これで崩壊は止まるのか?」
「そのハズである。 しかし収束までは1週間は掛かるであろうな」
「なんだ、1週間の
この分だと、次に起こる干ばつについては黙っていた方が良さそうであるな。
「では我は先を急ぐのでお別れである」
「何も隠していないよな」
「とっ、当然である! この後は純然たる物理現象が起こるだけである!」
「…そっ、そうですか。 まあ、この状況ですし、もう襲撃される事は無いと思うので、ここでお別れですね」
「そうであるな。 でわっ!」
物理現象と言っても連鎖反応とかもあったりするのだろうが、まあ、それはそれ、これはこれである事だしな。 魔界にまでは影響が出ないであろうから、我には関係ないし。
土砂降りのクレータを
今はまだ大した混乱など起きていないであろうし、上手くすれば勇者に会えるであろう。
やっぱりあの王女は
そして王都の広場上空に到達し、そのまま着地。
「うわっ何だ?」
「人か? オーガか?」
「でけぇ、何だよアレ」
もう二度めともなると、慣れたものでモノである。
第一インスピレーションで目が合った者に突撃する。 押しに弱そうな人間を選ぶのがポイントである。
「冒険者ギルドに案内するのである!」
「えっ、僕ですか?」
「何か問題でもあるのであるか?」 大胸筋ぴくぴく
「はぃ、案内させて頂きます」
「うむ、苦しゅう無い」
何だか「
なぜなら、我を勇者に引き合わせた歴史的な証人になるのだから。
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