第10話 貴族馬車
我は王都へ向かって空を飛んでいるのである。 うむ、やはり旅は飛行に限るな。
そして街道の上空から王都へ向かっている時、空からは異常な光景が見えたのである。
「ぬぅ、あれは襲撃されているのであろうか?」
先行する貴族馬車に、殿軍を努める兵士達。 そして、その後に続く武装集団。
だが数に圧倒的な差があった。 襲撃する側が異常に多いのである。
あっ、
「これは助けるべきなのであろうか?」
例えば我が正義の主人公気質であり、盗賊行為など見過ごせないなら、迷わず助けに行ったであろう。
だが我に言わせれば、襲撃されて敗退するなら襲撃される側が悪い。 なぜならば、敗退するなど修行不足だからである。
それにこの手のイベントに付き物のヒロインとかも遠慮したい。 だって修行の邪魔になる様な気がするし。
「うむ、見捨てるか」
そう思って何気なく襲撃側に目をやると、一際大きな男が目に入った。 明らかに有象無象とは違う様だ。
器用にハルバートと呼ばれる斧と槍を組み合わせた武器を使い、一人、一人と削っていく。
「そう言えば、ハルバート使いとは戦った事が無かったな。 うむ、助けに行こう」
そうと決まれば話は早い、我は戦闘に介入した。
「助太刀するのである!」
「うげっ、何だアレは?」
「どうしてオーガが助太刀に?」
「違う、アレは新種のトロールだ!」
「人族である!」
ブン!
パーンッ!
変身魔法には自信があったので、思わず殴ってしまったのである。 まあそのせいで、人をトロール呼ばわりした奴は爆散してしまったのだが。
「やっぱりアレはオーガの亜種か何かですよ! だって殴っただけで人が爆散したんですよ! きっとバトルオーガとか呼ばれるヤツです!」
「オーガでもないのである!」
ブン!
パーンッ!
当然、人をオーガ扱いする奴も、爆散の刑に処するのである。
「矢だ、矢を使えっ! 接近すれば潰されるぞっ!」
「ダメだ。 矢が刺さらない。 どうなってやがるんだ?」
「ツベコベ言うなっ! それなら槍で突き刺せっ!」
「ダメだぁ! このオッサン、槍がまるで刺さらねぇ!」
「ふはははは~っ! かゆい、かゆいのである!」
ブン! ブン! ブン!
パーンッ! パーンッ! パーンッ!
「やべぇ、アレは隊ちょ…お
「ん? 何だアレは? 俺の部下たちが、紙風船みたいに潰されていく」
「隊ちょ…お頭、アイツの相手をお願い出来ますか?」
「ああ、ありゃぁ部下たちには荷が重いな。 下がらせろ。 俺が出る。
おおぅ、やっとハルバート使いと戦えそうなのである。
「次の相手はお主であるか?」
「ああ、無駄に部下を死なせるつもりも無いからな」
「ならば全力でかかって来るが良い」
「なあ、その前に少し聞きたい」
「ぬっ、何であるか?」
「どうして腰の剣を使わないで、素手で戦っているんだ?」
「ハンデである!」
「後悔させてやるよ。 これでも戦場じゃぁ『死神』って呼ばれているんでね」
「死神が使うのはデスサイズである!」
「ちげぇねぇ。 だが俺のハルバートは、鎌の一撃とは比べ物にならないくらいには重いぜっ!」
「かかって来るが良い!」
「遠慮なく!」
そうして振るわれるハルバートの一撃。 我は特に防御する事無く、その一撃をワザと喰らってみた。
「ふむ、攻撃の重さはバトルアックスと同程度であるか。 おもしろい武器であるな」
「なぁ、もう一つ聞いていいか?」
「何であるか?」
「お前本当に人間か? オカシイだろっ! ハルバートの一撃を喰らって無傷とかっ!」
「なっ、何を言うのである。 我は何処からどう見ても人族である! さっ、参考意見程度であるが、どこら辺が人族に見えないのであるか?」
「全部だよっ!」
「証拠隠滅であるっ!」
「うわっ! イキナリ本気になるんじゃぁねぇ!」
因みにハルバート使いは強くなかった。 て言うか弱かったのである。
ぬぅ、中々強者とは出会えないものであるな。
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