第6話 オーク討伐

「で、どうやってオークを探すのだ?」

「足跡や痕跡から追跡するのが通常です」

「うむ、ではそのようにせよ」

「いや、『せよ』ってなんですか?」

「まだ『話し合い』が必要であるか?」 大胸筋ぴくぴく

「いっ、いえ。 誠心誠意やらせて頂きます」

「うむ」

「くそう、どうしてオレたちが…」


 協力者が出来た事により、展望が明るくなったのである。 持つべきモノは優秀な仲間であるな。


「それでどうなのだ?」

「足跡を見つけたんで、そちらを追跡しようかと思います」

「うむ」

「ところで水辺の近くにはオークが出現するらしいので、ランクが低い冒険者は近寄らない様に言われているんですが、ご存知ありませんか?」

「我はCランクなのである」

「事前情報の確認などは?」

「受付嬢は何も言わなかったのである」

「いや、普通確認するでしょ?」

「我は冒険者になったばかりであるからして、常識などは知らないのである」

「はぁ、そうっすか」

「ぬぬっ、何やら疲れる事でもあったのであるか?」

「いや、持病なんで気にしないでください」


 持病持ちで冒険者が勤まるのであろうか? まあ、ゴブリンなどの害虫専門なら問題無いのかも知れないが。


「こっちです」

「ふむ、随分手慣れているのであるな」

「まあこれでもDランクですからね。 それなりに経験があるんですよ」

「なる程、『それなり』であるか。 だからDランクなのだな」

「もしかして、ワザと言ってます?」

「ぬぬっ、何がだ?」

「そっすか。 そうっすよね」

「やはり疲れている様であるな。 休憩が必要であるか?」

「いや、世間の理不尽さに疲れただけなんで、大丈夫ですよ」

「そうであるか。 だが無理は禁物なのであるぞ」

「そうですよねぇ、出来れば今すぐ家に帰りたい気分です」

「ならば案内が終わったら直ぐに家に帰るのである」

「ですよねー」


 Dランクの案内は思いの外的確で、迷い無く進んでいく。 ふむ、これが下積みから抜け出せない冒険者と言うモノであろうか? 正直、健康な体ならさっさとCランクには昇進しそうなので残念ではあるな。


 まあ病弱な体を与えた神を恨むしかあるまいよ。 流石さすがに我でも、健康な体は与えられないからな。


「いやした。 オークの集団です」

「おおぅ、豚共があふれかえっておるわっ!」

「しっ、相手に聞こえてしまいます。 静にして下さい。 って、アレはオークジェネラルかっ? やべぇ、スタンピードの前触まえぶれじゃねぇのか?」

「ぬぅ、豚に種類があるのであるか? 我には全て雑魚に見えるのであるが」

「帰りましょう。 これはギルドに報告する必要がある案件です!」

「何を言っておるのだ? 豚は群れようが豚であろう。 態々わざわざ戻っていては二度手間になるではないか」

「いや、スタンピードですよ、スタンピード。 対策を立てないと被害が甚大になってしまうじゃないですかっ!」

「豚相手に被害? 何を言っておるのだ?」

「いや、豚じゃなくてオークだからっ! オークジェネラルだっているし、オークキングまでいる可能性だってあるんだ!」

「ふっ、飛ばない豚はただの豚なのである!」

「何の話だよっ!」

「狩ってくるのである!」


 やはりDランクの冒険者は臆病なのであるな。 たかが豚程度に尻込みするとは。


 だが我には雑魚である事には違いないので、飛び出して覇気をぶつける。


「【動くな】である!」


 これだけで雑魚ざこなどは萎縮いしゅくして動けなく事が多い。 おやっ、一匹だけ動ける豚がいるようであるな。 まあたまにはこんな事もあるのである。


 ならば必殺の腹パンである。


 パァン!


 お腹に穴が空いて、倒れこむ豚。 あっ、そう言えば素材を傷付けてはいけないのであったか。 失敗失敗。


 取りえず、動いた豚をアイテムボックスに仕舞い込み、動けない豚の屠殺とさつに取り掛かる。


 はて、どうするのが正解であろうか? ぬぅ、分からん。 確か豚は肉が大切とか聞いたことがあるので、頭をむしっておけば問題ない気がするな。


 プチッ、ポイッ、プチッ、ポイッ、プチッ、ポイッ、プチッ、ポイッ、プチッ、ポイッ、プチッ、ポイッ、プチッ、ポイッ…


 頭を毟って、アイテムボックスに放り込む作業の繰り返し。 ぬぅ、飽きてきたのである。


 いや、それ以前に豚の数が多すぎではあるまいか? 発情期にパーリーナイトでもしたのであろうか。 まあ食料的には有難い事なのであろうが。


 こうなったら、親切な冒険者達にも手伝ってもらって…って、ダメであるな。 あやつらまで動けない様であるし。


 と言うか、後何匹残っているのであるか? 数えるのもウンザリなのである。 ここは氷漬けにでもするか。


「フローズン・ワールド!」


 ふむ、残っていた豚共も、全て凍った様であるな。 まあこれなら毟る手間が省けるので、少しは早くなるのである。


 ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ…


 ぬぅ、日が傾き始めたのである。 一体何匹いたのであるか…。


 ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ…


 我はマシーン、豚をアイテムボックスに放り込むだけのマシーン…。


 ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ…


 …。


 ぬぉぉぉぉ~っ! 終わらぬ、終わらぬぞ~っ!


 冒険者の下積みとは、実に過酷である事よな。


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