第5話 初依頼

「ぬぅ、見つからないのである」


 我はオーク狩りのために森に来ているのだが、一向に出会わないのである。 いや、それ以前に獣などにも出会わないのは何故であろうか?


 確かに一度だけウサギっぽい何かを見つけたのであるが、目が合った瞬間に脱兎のごとく逃げ出してしまった。 ウサギだけに?


 これは何か、異変であろうか? 探索魔法を使用してみたのだが、何故か我の周辺だけには生物がいない。


 それも、ウサギだけではなく小鳥のたぐいまでも我を避けているようなのだ。 不思議である。


 これがうわさに聞く、ハブられた状態と言うものであろうか。 別に嫌われる様な事をした覚えなど無いのだがな。 せぬ。


 だがまぁ、ウサギや小鳥などに嫌われたとしても実害は無い。 我の目的はオークであるからな。


 問題は、そのオークが見つからない事であろうな。 こう言った場合は、どうするべきなのであろうな、冒険者として。


 確かに我は、オークを狩った事など無い。 屠殺はした事はあるのだが、態々わざわざ狩ろうなどと思う獲物でもなかったゆえな。


 もしかしたら、オーク狩りには特殊な知識や経験が必要なのであろうか。 特に見つける事に関して。


 これがドラゴンなどであれば、縄張りから移動する事も稀であるので、事前の目撃情報だけで事足りていたのだがな。


 罠の設置などが必要なのであれば、我には難しいぞ。 そんな姑息な方法など、我は学んだ事すら無いのだから。


「困ったのである」


 そもそも狩りの仕方を知らないのである。 勿論、オークの習性なども言わずもがなである。


「ぬぅ、火でも着けるか?」


 確か、動物は火を恐れ、そこから逃げ出すと言う。 ならば、森の外周部に火を放ち、中央部で待ち構えると言うのはどうであろう。


 問題で言えば、この森の動物全てを狩る必要がある事だろうか? とてつもなく時間が掛かりそうな気がする。


 ならば、森全体を吹き飛ばすなんてどうだろう? それなら一瞬だし、森にいるオークも余すこと無く滅ぼせるだろう。


「そう言えば、討伐証明とか言って、耳を千切る必要があったのであるな」


 魅力的な作戦だが、ここは断念せざるを得ないだろう。 仕方がない、ここは修行だと思って地道にやっていくしか無さそうだ。


「面倒臭いのである」


 やはり下積みとは辛い作業が多いのだ。 あきらめてちゃんと探す事にする。


「探知魔法、森全体!」


 思いの外広い森であるが、全ては探知魔法の索敵範囲内である。 そこは苦労しない。


 ただし探知される動物が多すぎるのだ。


「ウサギ、ゴブ、コボ、鳥、ゴブ、人、ゴブ、ゴブ、ええい、ゴブリンめっ! 多すぎるのである!」


 ちょっとイラッとした。 遠隔魔法で吹き飛ばしたい衝動に駆られるが、残念ながら人族と交戦中である。


 何だったか、獲物の横取りは厳禁とかで、手出しはしてはいけないらしいのだ。


 ならば、戦っている人族もまとめて吹き飛ば…ゲフンゲフン、我も今は冒険者、一人前になるためにもルールは守のである。


 そうだ、冒険者には助太刀すけだちとか言う制度があり、獲物を譲ることで成立し、になるらしい。


 ならば偶然を装いゴブリンを殲滅せんめつし、戦っている冒険者にオーク探しを命じるのはどうであろう。


妙案みょうあんである」


 ならば実行だ。


「転移!」


 すると、目の前には複数の冒険者とゴブリンたちが交戦中。


「助太刀するのである!」


 有無を言わさず、ゴブリンたちに腹パンをしていく。 もちろん頭を狙わないのは、討伐証明を気にしての事だ。


「すげぇ、あのオッサン、素手でゴブリンを倒してやがる」


 冒険者が何か言っている様だが無視する。 そして1分と掛からず、ゴブリンとの戦闘は終了した。


「ゴブリンの討伐証明は、全てお主たちの物である!」

「お、おぅ」

「そしてこれはである。 従って、お主たちはオーク探しに協力するが良いのである!」

「ちょっと待ってくれ」

「何か問題が?」

「俺たちは別に救援要請などはしてはいない」

「ほぅ、つまりお主たちは踏み倒すつもりであるな。 あっ、そう言えば我は、ゴブリンと人との区別が苦手だったきがするのである」大胸筋ぴくぴく

「いやぁ、そう言えば救援要請をした気になってきましたぁ!」

「Win-Winの関係である!」

「ちくしょーっ!」


 何だか冒険者がやさぐれている気がするが、討伐部位のぎ取りを観察する。


 やはり下積みの作業は地味であるな。 早く一人前になりたいものだな。


「さっさとするのである」

「もう少し待って下さいよ」

「あっ、新たなゴブリンがっ!」

「助太刀するのである!」

「それが言いたいだけだろっ!」


 何だか文句があるようだが、いまは害虫であるゴブリンを狩るとしよう。 そして、終わった後は肉体言語で話し合いだな!


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