第3話 冒険者ギルド

「たのむのである!」

「うわっ、何だ?」「カチコミかっ!」

「素材を売りに来たのである」

「ビックリさせんじゃねぇ…カウンターはアチラで御座いますです」

「うむ、ご苦労である」


 おや? 中々注目されているのであるな。 ここは視線を送ってくれた者に笑顔を返すべきであろうか? にやっ


 ふむ、何故か目を逸らされたのである。 シャイであるのだな。


「おいおい、でけぇな。 2メートル50はあるんじゃねぇのか」

「おい、あんまりジロジロみるなよ。 殺されるぞ」


 まあ注目されるのは、悪くない気分なのである。 おおぅ、自ら我先にと道を譲ってくれるではないか。 実に親切であるのだな。


 ならば好意に甘えて、用事を済ませるのである。 カウンターに座っている女性はどうして固まっているのであろうか?


 もしや一目惚ひとめぼれであるか? 我は、壊れそうな女子は好みではないのだがな。


「換金を頼みたいのである」

「ひぇっ、かっ、換金で御座いますね。 冒険者カードはお持ちですか?」

「無いのである。 何か不都合でも?」

「ひぃ、いっ、いや、不都合なんて無いのですが、差定額に差が出てしまうのです」

「ほぅ、つまりはボッタくるつもりであると?」

「いっ、いやっ、そんなつもりはないのです。 ですから、そんな怖い顔でにらまないで下さいっ!」

「我にどうしろと?」

「じっ、時間に余裕があるようでしたら、冒険者登録を先に済ませてはいかがでしょうかっ!」

「よかろう。 ならば冒険者登録とやらをするがよい」


 ふむ、冒険者であるか。 確かドラゴンを狩って生計を立てている者たちの事だったな。


「でっ、ではお名前を伺っても宜しいですか?」

「アビスである」

「ご職業は?」

「国のトップである」

「国王様ですか?」

「そのような軟弱者ではないのであるっ!」

「ひぃぃぃぃ~っ! すみません、すみません、命ばかりはお助けをっ!」

「許す!」

「有難う御座いますぅぅぅ~っ!」


 小さなミスをした程度では、一々処刑したりなんてしないのだがな。 精々、スクワット1万回の刑に処する程度である。


「それで冒険者ランクについてなのですが、Fランクからのスタートになります」

「ふむ。 冒険者ランクとは何なのであるか?」

「冒険者の実力に応じて仕事を割り振るためのしくみで、ランクに対応した依頼をして頂く事になります」

「了解したのである。 で、買い取りは問題ないのであるな」

「はい、適正価格で買い取らせて頂きます」

「では早速、買い取りをして貰いたい。 これなのだが…」


 アイテムボックスから、ワイバーンの頭をニュッと出す。


「こっ、こんなところに出されても困りますから、アチラの買い取りカウンターにお申し出下さい」


 意外と難しいのであるな。 人族の習性がよく判っていないだけかも知れないが、面倒臭いのである。


「ココが買い取りカウンターであるか? ワイバーンの買い取りを頼む」

「あっ、ワイバーンすか? 大物っすね。 それなら併設の倉庫に直接お願いするっす」

「ほぅ、我をタライ回しにするとは良い度胸であるな。 ちと教育してやろう」

「わっ、解体員を直接呼んでくるので、ちょっと待って欲しいっす! だからそんな目で睨まないで欲しいっす!」

「早くするのである」

「はっ、ハイ。 喜んで!」


 そういって、解体役人は誰かを呼びに行った。


 まあ、教育がなっていないのは減点だが、素直に指示に従ったのは評価出来るのである。


 大人しく待っていると、先ほどの解体役人が男を2人ほどと、台車を伴って戻ってきた。


「お待たせしましたっす!」


 ごねても仕方がないので、台車の上にワイバーンをデーンと出す。 半分以上台に載っていないようだが、問題ないだろう。


 そもそも台車が小さすぎるのが問題なのだ。 我は顎で次の動作を促すと、我に返った解体役人があたふたとしだした。


「これじゃぁ裏まで運べないっす。 でもお客様が怖いので、ここで査定するっす。 命が惜しくば、さっさとするっす」


 別に命までは取るつもりは無いのだがな。 腹筋2万回で許す程度なのである。


「そっ、そうだ。 待っている間、掲示板でも眺めていて下さいっす。 ランクに見合った仕事が掲載されているので、時間つぶしになると思うっす」

「掲示板とは、あの板の事であるか? ランクに見合った仕事とは、我に相応しいモノがあると考えて良いのだな」

「そうっす。 因みにランクは何っすか?」

「Fランクである」

「げっ、苦情は受付に頼むっす! 連中がランク分けとか仕事の割り振りとかしてるっす!」

「了解したのである」


 ふむ、我に相応しい仕事とはどの様なモノであろうな。 少しワクワクするのである。


 何々、オーク退治がCランク、ふっ、家畜狩りなんて雑魚に似合いの仕事であるな。


 えーと、オーガ退治がBランク、こちらも雑魚だな。 パンチ一発で吹き飛ぶ魔物なんて、眼中にないのである。


 ほう、ゴブリン退治がEランクか。 このような害虫退治の仕事もあるのだな。


 だが妙だな。 Fランクの仕事がないぞ。 どこにあるのだ? ん? もしかして、あの隅っこのヤツであるか?


 えーと何々、Fランクの仕事は…薬草採取…ドブ掃除…草むしり…ほう、面白いものだな。 ここまで愚弄されたのは久しぶりなのである。


 さぁ、どうしてくれよう。


 今の気分は、この建物ごと跡形もなく消し飛ばしてしまい状態であるな。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る