パーティーへ行く準備中

新生活に揉まれて、更新が遅くなり申し訳ありません。


そして、誤字脱字報告ありがとうございます!

今回一気に訂正しました。










 父上たちに生暖かい目で見られながら、書類を手渡された。何かと思ってみれば、婚姻届だった。やっぱり実行する気なのかと思いながら、人生で一番綺麗なんじゃないかと思うぐらい、丁寧にサインをした。シーラに渡せば、シーラも丁寧にサインをしていた。そして、父上とゴルドールがサインをしたので、これを教会に提出し、写しを父上が保管して終了だ。

 手続きはすぐに終わり、翌日には俺たちは夫婦だと公表されて、シーラは俺の部屋の隣に引越しをした。

 一週間後に婚約発表ならぬ結婚発表をすることになった。急遽決まった話だから、来れるなら来てね、ぐらいの軽いパーティーだ。予定の合いにくい辺境伯などは来ないだろう。

 

 朝から色々あったが、学園はできるだけ休まないように通学をした。その日の昼食で、いつものメンバーで王族専用部屋にいた。何があったかを説明すれば……

 

「え、じゃあ、本当に大聖女だったの??」


 フェルがキョトンとした顔で聞いた。まぁ、俺たちも、そうだったら良いのになーと軽く思っていただけだったからな。


「コツを教えたら速攻で使えるようになったぞ。」


「あはは! じゃあ、ゲームとは完全に展開が違うじゃん! 聖女が聖女じゃないって、もうシナリオの前提が崩壊してるよね!」


 シリアスは乙女ゲームはやったことないらしいが、R18指定のギャルゲーはあるからか、『恋ラブ』をやったことがない奴の中では一番、理解度が高かった。


「シリアスは笑いすぎだろ。」


「これが笑わずに言われないでしょ。あー、俺も恋ラブやってればよかったなぁ。ギャップの差で笑い転げそうだよ。」


「シリアス、男に甘ったるい声で喋りかけられるの、大丈夫か?」


「……それは遠慮する。」


 言うと思ったよ。シリアスは俺と同じで乙女ゲームは苦手そうだと思った。だって、俺がシーラを口説くと最初は嫌そうな細目で見ていて、今は無視を決め込んでいるからな。男の甘い声とやらは嫌いだろうなと。ちなみに俺も嫌いだ。セスが婚約者を口説いている時、俺は存在感を消して、物理的に音を遮断しているし。


「それについては置いておいて、これからどうしますの? プリシラ様が大聖女だと公表しますの?」 


「それについては一部の貴族には言ってある。正式に公表するのは一週間後の結婚発表のパーティのときだ。」


 突発的とはいえ王家主催のパーティーがあると知ったとき、学園生は基本的に参加する。王都にいるから、親の代わりに情報を集めてくるとか、親は無理ですがせめて子供だけでも、と送り出して我が家は忠誠を誓っております的な意味合いもあったりするからだ。まぁ、普通に考えて、王都という近場にいるなら来るのが貴族としての常識だ。学生なら制服でも構わないと言われてるほどには重要であり、実際、一部の下級貴族の子供は制服で参加することも多い。前回と同じドレスを着るのは貴族の子供として良くないからアクセサリーを変えたり、ドレスに一つ手を加えて工夫をしてやりくりするんだが、毎回それだとネタが尽きるため、何もしなくてもいい制服は貧乏貴族にとっては結構助かったりする。

 

 だから、パーティーには小娘も来るだろう。さて、どういう反応をするのか、見ものだな。







 一週間後。これから結婚発表のパーティーのため、シーラを迎えに行った。と言っても、隣の部屋だけどな。


「海のお姫様かな?」


 中には俺の目と同じ青色の生地に一部だけ白色の生地のドレス、銀糸で花の刺繍が入っているもの、胸元には白のガーベラのブローチをつけたシーラがいた。まだヘアアクセをつけてなくて、侍女が後ろで髪を触っていた。


「ふふ、それは褒め言葉ですか?」


「もちろん。いつも可愛いけど、今日は一段と綺麗だ。お姫様と言っても過言じゃない。」


 この世界だとお姫様というのは王女、もしくは皇女にしか適用されないから、シーラはお姫様じゃない。でも、お姫様のように綺麗で美しい。

  

「それは言い過ぎですが、ありがとうございます。キース様もとても素敵です。」


 俺は、シーラとお揃いになるように青の軍服に、胸元に白のガーベラのブローチ、紫の魔法師アメジスト である証のアメジストのブローチを付け、シーラの髪色である水色のピアスを付けている。


「キース様はいつ見ても素敵なので、隣にいるのが私で釣り合っているのか心配です。」


 俺の姿を見たシーラが、心配そうな顔をして、頬に手を当てていた。


「いやいや、むしろ俺が釣り合うか心配だ。こんな魅力あふれる女性がそばにいれば、俺なんて簡単に霞んでしまう。」


 今世の俺は、まぁまぁ顔はいいと思う。思うけど、有象無象と比べればの話だ。シーラのような美女が隣にいれば霞む。どう考えてもシーラの方に目がいくだろう。


「そんなこと、」


「はいはい。二人とも、そこまでだ。いつも同じやりとりをしてよく飽きないな。」


 否定しようとしたシーラの言葉を、セスが手を叩いて遮った。呆れたような顔をしているけど、セスも婚約者の綺麗な姿を見たら褒めちぎるくせに……


「セスは婚約者が目の前に、違うドレスを着ていたらどう思う?」


「褒めちぎるし、俺が釣り合わないと思うだろうな。」


「それと一緒だ。」


「それなら仕方ないな。」


 あっさりと手のひらを返したな……まぁ、気持ちはわからなくもないけど。


「クリスの愛らしさに釣り合う男などいない。」


 それ、暗に自分も釣り合わないって言ってない??


「病的なまでに婚約者厨め。」


「キースには言われたくないな。」


「それもそうだ。」


 ある意味いつも通りの会話をしていれば、支度が終わったようで、シーラが立ち上がった。よく見れば、俺が贈った桜の花びらを模したかんざしをつけていた。


「キースからもらったかんざし、早速つけてみたのですが、似合ってますか?」


 ゆらゆら揺れるかんざしを指先で触るシーラの可愛いことよ…

 それに、呼び捨てしてくれて、萌える…


「すごく可愛いよ。初めて使う髪飾りなのに、綺麗に仕上げてくれるなんて、シーラの侍女たちは本当に腕がいいな。」


 さっきも見ていたけど、手際よくスルスルとシーラの髪をセットしていくのを見ていた。俺は前世の親戚の子供達にやった時、グシャグシャにして怒られたっけ………


「殿下が事前に使い方を教えてくださったからでございます。」


「それにしても、概念を知らないから不安だっただろ。」


 かんざしをどうやって使うのかを知らないのに、いきなりこれやってと子供たちにせがまれた時は本当に不安だった。そのあと怒られたから、めちゃくちゃ調べた。子供たちの母親よりも上手くなった時は母親たちから教えてほしいとせがまれるようになったけど、この世界だとネットがない上に全く知らない物だから、最初は教えてもいいものか悩んだんだよな。


「そのようなことはありません。初めてのことを教われて、とても楽しゅうございました。」


「それなら良かったけど。」


 本当に楽しかったようで、笑顔で答えてくれたので、俺は満足です。これからも教えようっと。


 

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