現実と物語
さらっと追記(ほんの一文だけとか)、修正してる話もありますが、読んでなくても全く問題ないので、スルーしてください。
誤字脱字報告してくれる方、ありがとうございます。毎回返信を返さないことに決めたので、ここで感謝を伝えようと思います。
もちろん、感想を書いてくれている人もいます。
全部読んでますし、とても嬉しいです。
執筆の励みになりますので、どんどん書いていただけると、作者は喜びます。
応援ありがとうございます。
引き続き、よろしくお願いします。
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「大聖女が現れれば一気に解決しますわね。」
ミシェルが紅茶を飲むと、俺に向かってティーカップを差し出した。もちろん、中身は空。紅茶を入れろって催促だ。こいつ、超大国の第一王子にお茶汲みさせてんだぜ。まぁ、俺がいつも淹れてやってるし、ここには俺の側近(一部違う)しかいないから、いいんだけどな。
「確かにそれが一番手っ取り早いけど、そう簡単に行くかっつー話だろ。」
大聖女は、神聖魔法を使える人間しかなれない。神聖魔法は女神の加護で貰うか半神しか扱えないし、どちらか一個でも条件を満たす人間はかなり少ないのだ。そうそう見つかるわけがない。歴史で見ても片手で数えられるぐらいの人数しかいない。もっと数がいるなら名前が多く残るはずだ。神聖魔法の存在は隠せないぐらい、強力な魔法だからな。
ミシェルから受け取ったティーカップに紅茶を淹れて返してやると、ミシェルは嬉しそうに紅茶を一口飲んだ。カップを置いて、サンドウィッチに手を伸ばしながら、俺を見据えた。
「ここはゲームの世界ですが、ゲームとは違いますわ。ちゃんとした現実の世界。NPCだった人は、ちゃんと自分の意思を持ち、自由に動き、しゃべり、死にますの。製作者の作ったシナリオ通りに絶対なるならば、グラキエスは今頃死んでるはずですわ。」
そうだ、ここはゲームではない。現実世界で、ゲームのシナリオはほぼ崩壊している。未来はいくらでも変えられるのだ。忘れていたわけじゃないが、どこかでゲームの世界だと意識していた気がする。ったく、ダメなやつだな。視野が狭くなるのは良くない。
「天を見たものだからこそ、運命を変えられる……」
「その通りですわ、プリシラ様。ゲームでヒロインだったあの女は、今は転生者です。だからこそ、大聖女に目覚めるかはわかりませんの。というか、あれが大聖女? ビッチの間違いでは?」
ふっ、とバカにするように鼻で笑った。
まぁ、攻略対象の男三人と、神官長の息子、まぁまぁな有力貴族子息を侍らせてるって報告にあったから、ミシェルがビッチって言いたくなるのはわかる。つか、この世界でもビッチって通じるんだな。セスたちが遠い目をしていた。でも、複数人と関係を持ってなければ、転生者だったらビッチではないのでは…?たまにそういう奴いたし……
「あながち、その評価も間違いではありませんよ。」
「「え?」」
アインは何か知っているらしい。
「複数人の男と肉体的な関係を持っています。ゼーリア様はまだのようですが、あの娘の肩を持つ男はほぼ全て………」
ま、まって…………え?……ってことは、あの周辺の人間、全員きょうだ……ぃ…いや、やめよう………想像だけで吐きそうだ………
良い子は、意味を知らなくていい。知っちゃダメだ。
「うげぇぇぇ………」
「グラキエスって、意外と潔癖なんですのね?」
ミシェルが心底意外そうに俺を見ていた。
「…いや、別に他人がどうなろうと知ったこっちゃないよ?? ちょっと、他人の生々しいのは想像したくないだけで……」
俺に害がない範囲なら、どんなことしててもいいけど、俺に触れないでくれって感じだ。シーラ以外は物理的に女は受け付けてないのもある。
「男性は夜のお店に通ってるイメージでしたわ。」
「それ、男に対する偏見だからな。男が常にエロいこと考えてると思うなよ。男にだって選ぶ権利ぐらいあるわ………」
確かにあそこに脳みそがついてるような男はいるよ?? ヤリ○ン野郎とかな。だけど、それは性欲が強すぎる野郎だけだ。俺は断じて違う。全女=性的対象にはならないから。確かに好きな女じゃなくてもそういうことができるのが男だけど、それでも好みがある。好みじゃなきゃ普通に萎えるわ。って、何の話してんだ。そうじゃねぇ。
「それもそうですわね。アイザリードは私なんかに欲情してくれませんし。」
ぶっすーと、不満ですって顔に出ているミシェルの視線の先はアイだった。そのアイは、いきなり引き合いに出されて紅茶を吹き出していた。人にふっかけなかったのは偉いぞ。
「ぶふぉっ、ごほ、なんでそこで俺を引き合いに出すんだよ!!」
「自分で考えれば?」
ふんっと拗ねたようにそっぽを向けば、アイが複雑そうな顔をしていた。この二人、お互いに気持ちがあるって気づいてるな? 気づいてる上で、アイだけは気づいてないふりをしている、と。
「お前ら拗らせてんなぁ…」
「私は拗らせてません。アイが拗らせてるんですわ。それより、今は大聖女の話です。」
お前が話逸らしたんだろうが、と言いたいが、我慢しよう。話が進まらないしな。
「でも、ミシェル。実際問題、大聖女はどうやって探す気なの? 人海戦術で探し回るのは現実的じゃないよ?」
ミシェルが脱線しかけた話を戻せば、フェルが首を傾げながら問いかけた。
「いるではないですか。一番可能性が高くてまだ試していない方が一人。」
ミシェルが、食べていたサンドウィッチの最後の一口を口の中に入れてもぐもぐしながら、シーラを見た。そして、フェルやアイ、セスがつられてシーラを見た。その視線で言いたいことがわかったぞ…
「え、私ですか?」
シーラはほぼ全員に見られて首を傾げた。理由はわかってないようだ。
「この世界は、転生者が未来を変えようと動けば、結果は簡単に覆ります。ゲームでのプリシラ様は、とんでもなく性格が悪かったのですが、グラキエスが干渉したことで、ゲームとは全くの別人ですの。」
「え、えぇ、それは聞いてますけど、それと何の関係があるのでしょうか?」
「あなたは今、とてもいい子ですわ。性格が良いという意味でも、未来の王妃として国民を思い、尽くせるという意味でも、です。つまり、大聖女として覚醒しても何もおかしくないですの。」
大聖女は、慈愛の心がある人間しかいない。慈愛の心があるから覚醒するのか、神聖魔法があるから自然と慈愛の心を持ち合わせるのか。どちらが先かはわからないけど、この二つは関係があるのかもしれない。歴代の大聖女は大体優しかったらしいし。
俺? 俺は別に慈愛なんて無いけど。
「私は大聖女になれるほど、いい人間ではありませんわ。キース様のことしか考えてませんもの。」
本人は否定したけど、言われてみればシーラが大聖女として覚醒してもおかしくは無いと思う。
「私、大聖女=私欲がない、なんて思いませんわ。人間なら誰しもが何かしらの欲を持っているはずですの。無いわけがありませんわ。ですから、二人は手っ取り早く一線超えてしまいなさいですの。そしたらわかりますわ。」
あけすけに言いやがったので、意味を理解したシーラは顔を真っ赤にしていた。俺はできるだけ平常心を心掛けて、訪ねた。
「その根拠は?」
「女の勘。」
当てになるんだか、ならないんだか、わかんねぇやつきたー……
「俺はミシェルと同じだ。別に二人は結婚するのだし、今関係を持ったとしても父は怒らない。むしろ孫の顔が見れるかもしれないと張り切り出すぞ。」
あー、どうしよう……ガーディーアン侯爵家の人たちがニヤニヤしているのが想像できるなぁ……
「セスは兄だよね? 妹の不純異性交遊は止めるべきだよな?」
「相手がキースなので何も問題はない。信用してる。」
「信用が重い………」
信頼は嬉しいけど、男としてはどうなのかと複雑なんだが……俺は聖人君子じゃねぇぞ……?
「まぁ、まだ妄想の域を出ないし、今のところは後回しでもいいんじゃない? 後から色々言われるのも面倒だし。」
「フェルの言う通りだな。うん。そういうことは結婚してからだよな。うん。」
「「「ヘタレか?」」」
「うるせぇ!!」
ヘタレで何が悪い。しょうがないだろ?! 俺はシーラが大好きだし、結婚したいし、イチャイチャしたいし、キス以上だってしたいわ!! けど、そんなことしたらがっつく自信しかない!! それで、好きな女の子に嫌われてみろ、軽く10回は死ねるからな!!
「とにかく!! 父上とゴルドールに相談してくる!!!」
相談はするんだなと思った一同だった。
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