第三章
学園入学
学園を入学する時期は、17歳になる年なので、新入生には16歳と17歳の生徒が存在します。
そのため、入学式前に誕生日を迎えた生徒は17歳です。キースも当てはまりますので、17歳になった数日後に学園に入学しました。
あとでキャラクターたちの誕生日も載せたいと考えています。
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3年前。当時14歳の時。俺は、精霊王イグニスに、魔神アクゼスターの封印が解けるという衝撃的な情報を聞かされた。それについては嘘ではなく、この世界の創造神、女神イーストリアラからもたらされたものだった。
魔神アクゼスターに対抗するために、
俺は
この3年で、俺は相当力をつけられたと思う。いや、正確には、力の使い方を覚えたというべきか。
半神に至った瞬間は、力加減ができずにティーカップを潰すとかドアノブ壊すとかやらかしたせいで、
まぁでも、手加減する癖はついたけどね。うっかり人なんて殺したらやばいし。
「はい、オックスリザード討伐、確認しました! キースくんはこの度、Sランクモンスター討伐5回達成なので、SSランクに昇格です! おめでとうございま〜す!」
「うぉぉぉぉ!!!!」
「キー坊、本当にやりやがったなぁ!」
「すげーな! 史上最年少じゃねぇか?!」
俺は今、1人で冒険者ギルドにて、依頼達成の報告をしていたところだった。
なんでも、街道にオックスリザードというSランクの魔物が現れたとか。近隣の村や街が被害に遭ったからその討伐の依頼が俺にきたのだ。正確には俺とセス、オーレン、セフィ、新たに加わったシリアスの五人パーティー、
1人で解体するのはめんどくさかったから、死体丸ごと異空間収納に収納してギルドまで持ってきて、解体を頼んだ。
「あーあー、うるせーよ。そんな騒ぐことじゃねぇだろ。」
本来SSランクに上がるのは大変だ。Sランク以上の魔物を1人で5体討伐しなきゃならない。ただでさえSランクの魔物は、Aランクの魔物とは一線を画す存在だ。強さの格が違いすぎる。Sランクを討伐するのにAランクパーティが最低5パーティいないと難しいほど。だから、1人で…なんて挑めば死ぬだけ。Sランク冒険者ともなれば、そこは控えるはずだ。それでも挑むのはよっぽどのバカか、俺のような理不尽の権化的な強さを持つ奴のみ。
だから、この国では唯一のSSランクだったスカーレット以来のSSランクの登場に、ギルドの連中が馬鹿騒ぎするのも無理はない。
「騒ぐだろうが!! SSランクだぞ?! スカーレット以来だろ!!」
「へーへー。そうだねー。」
「なんだよ! ご本人は興味なしか!」
いやぁ……だってさ? 俺、半神だし……言わないけど半神だから、納得というかさ……
「もっと喜べよ、キー坊!」
バシバシと俺の背中を叩くのは良いんだ。痛くないからさ。でもさ?
「つか、俺もう17なんだけど?! まだガキ扱いなの?!」
この3年で俺の身長は180センチに伸びたし、鍛えてるから筋肉も多少はある。なのに、キー坊呼びなのか。
「キー坊は幾つになってもキー坊だろ〜!」
「ったく、俺が四十になってもそう呼ぶのかよ。」
「40のキー坊とか想像できねぇなぁ! ガハハハ!」
「でも、その見た目だからナイスミドルになってんじゃね?」
「それはあり得るな! はっはっは!」
「俺のことバカにしてんの……?」
「可愛がってんだろ〜。うりうり」
俺の首を腕を回して、こめかみあたりを軽く拳でぐりぐりされる。まぁ、嫌われるより、可愛がられんのは良いんだけど、大人の男としては複雑なんだよな……
ギルドのおっさんたちに絡まれていると、奥の席で酒を飲んでいたトリッサが近づいてきた。
「そうだ、キー坊。お前、学園に行くのか?」
「え、なんで?」
「風の噂で聞いたんだ。俺は、お前ら以外の貴族には良い印象がねぇ。この国は比較的良い貴族は多いみたいだが、それでも他国よりはまだマシってだけだ。あんな連中がいる魔窟に、行くのか。」
トリッサは元々他国で冒険者をやっていたAランク冒険者だ。ランクが上がるにつれて、貴族と関わる機会が多くなり、やがて貴族の闇の部分に触れてしまった。その闇に巻き込まれて、濡れ衣を着せられ国を追放されたらしい。この国はどんな奴でも基本受け入れるから、肩身の狭い思いをしなくて済んだと言っていた。でも、貴族とは関わりたくないらしく、どんなに誘いがあっても絶対に受けないと言っていた。貴族嫌いで有名なのだ。俺たちも最初は貴族だからと遠巻きにされていたけど、いつのまにか仲良くなっていた。
トリッサは、冒険者なんかやってる俺らは貴族からしたら異物として扱われるんじゃないかって心配なのだろう。俺も冒険者やってる貴族なんて(俺たち以外)見たことがない。だから、そう思うのも無理はない。
「大丈夫だ、トリッサ。俺らはそんな柔じゃねぇよ。」
「……ふっ、それもそうか。悪い、愚問だったな。」
「心配ありがとな。」
「貴族でもお前らは好きだ。だから、何かあったら俺のところにこいよ。ちゃんと、面倒見てやるぜ。」
「その時はありがたく頼らせてもらうよ。さて、俺はそろそろ帰るわ。しばらく来れないかもしれないけど、ちょくちょく顔は出すようにするよ。」
明日は学園の入学式だから、あんまりのんびりしてると明日に響く。いや、響くような体してないけど。でも遊んでるのは良くない。
「あいよ! 気をつけてな!」
「誰に言ってんだよ。」
「キー坊なら危険はねぇな!」
最後まで賑やかなおっさんどもの声を背に受けて、ギルドを後にした。
翌日。俺は学園へと向かう馬車へと乗り込んだ。中にはアイがいた。挨拶をしてから、まずはガーディーアン侯爵家へと向かう。シーラと朝の挨拶をしてからセスを拾い、一緒に学園へ向かった。
「いよいよ入学式ですね。」
「はぁ……シーラがいないから、会う時間が減る……俺の癒しがいないなんて地獄かな……」
「あなたは、本当に妹が好きだな。わかってはいたが。」
「はぁ……早く3年経たないかな………」
「なぜですか?」
「シーラが学園に来るじゃん。」
「一年経ったら、俺たちが卒業してまた離れるけどな。」
「そうなったらまたつまんねぇじゃん……はぁ……」
「まぁ、それもそうだが、俺たちが気にしなきゃならないのは魔神の封印だろ。」
それも気にしなきゃいけないのはそうなんだが……
「封印が解ける前兆はわかるらしいから、今から気にしても仕方ねぇよ。イグニスたちが保証した期限まであと2年はある。」
「それもそうだな。シリアスも良い感じに育ってきてるんでしょ?」
「あとはイグニスの加護と他の神の加護があればすぐにでも成るよ。」
半神に至るにはいくつかの条件があると知った。その条件の一つが、創造神か種族神の加護を三つ以上持っていることだ。これは正直運ゲーに近い。イグニスに見られていた俺の近くにいれば、加護をもらいやすいけど、誰の協力もなしに加護をもらうとなると、結構難しい。半神が数千年出てこなかった理由はこれがでかい。
二つ目は、神獣か竜王族と仲良くなること。これもかなり運ゲーだよ。この二種が暮らしていた場所は魔物の最低ランクがAランクで、SやSSランクの魔物が跋扈しているようなところだと言っていた。ベテランパーティじゃないと神獣たちに会うことさえ難しい場所だ。たとえ運良く会えたとしても懐かない神獣たちと仲良くするのは大変難しい。会うよりも、難しい。
三つ目は、自分のレベルだ。半神は条件さえ満たせば誰でもなれるけど、誰でも良いわけじゃない。半神になるということは、今の種族じゃなくなるということ。つまり、強力な力を手に入れる分、自分の体がその力に振り回されたり、その力で潰されることもある。だから、人間なら少なくとも100以上はないときつい。俺? 俺は能力値上昇(特級)という、レベルアップした時に上がるステータスの数値が少しだけ増えるというスキルがあるから、100レベルまで上げなくても耐えられる身体だったということだ。
四つ目は、死んでも守りたいものがあること。俺に当てはまったのはシーラだった。どういうことかというと、守りたいものがないと、強力な力を持ったとしても悪用するバカがいるからだそうだ。今までは半神を作るのに積極的ではなかったらしい。理由が一度、力を使って世界を支配しようとか考えた男がいたから慎重になってた。その男と他の半神になった奴の違いは何かと考えたところ、死んでも守りたいものがあるかないか、だったそうだ。家族や恋人、友人、国……なんでも良い。どんなことをしても守りたいと願うものがあること。
でもさ、大事なものを無くした時、その無くし方によっては、力を復讐とかに使うようになるよね? 俺、シーラを殺されたらその殺され方によっては復讐に駆られると思う。だから、イグニスとかに言ったんだけど、返答はあっさり。それならそれで仕方ない、だって。
神ともなれば自分の子供ともいうべき種族が、先に死ぬのは織り込み済み。そして、死んだとしても、魂は輪廻に帰り、また生命として生まれることから、肉体的な死はあれど魂の死はあまりない。だから、気にしないそうだ。さすが神様。スケールが違うね。世界を滅亡させようとさえしなければ、別に良いそうだ。
閑話休題。
とまぁ色々とあるけど、主にこの四つが半神になる条件だ。
シリアスは俺が父上を説得して速攻で巻き込んだ。俺と同じ転生者だし、半神になれるはずだと説得した。
2年前に武神とも言われる獣人神からの加護をもらい、魔物を倒すともらえる経験値が2倍になるスキルを習得した。レベルが上がりやすかったから、あっという間にセスを追い越し先に100レベルに到達。スリアルはもちろん、リーベルティも何回か顔を会わせたら懐いたし、死んでも守りたいものは、家族だと言っていた。前世で事故にあった時に両親に守られて自分だけ生き残ってしまったから、守りたいんだそうだ。だから、残り2つの加護のみ。精霊神でもある精霊王イグニスが審査中とのことだから、頑張れ。
セスは今レベルが98だから、後少しで上がる。守りたいものは家族と、クリスティーナ嬢。スリアルもリーベルティもなついている。加護は現在二つ。レベルさえ上がれば、イグニスが加護をくれるそうだから実質レベルだけだ。
アイは加護問題とレベル問題が残ってるが、レベルに関しては97だからそこまで気にしなくて良い。スリアル、リーベルティはなついているから問題なし。守るべきものは俺とか言ってたな。セバスが言うには、俺が側近に誘ったことが本当に救われたんだとか。つきものが落ちたかのように晴れやかな顔になったことを感謝されたっけな……
最初、俺の側近になって挨拶に来た時、「この命にかけてもお守りします。」と、覚悟した目で見られたっけ。懐かしい。
「加護だけは、俺たちがどうこうできないものだからな。焦らず気長に待つしかないか。」
「そういうこと。お、見えてきたな。」
何気なく御者席側にある子窓を見ると、半分は御者の腰で見えなかったが、もう半分から学園の尖塔の屋根が見えた。すぐに御者から学園についたと言われたので、セスの後に続いて馬車を降りた。
俺は主席で合格したことで新入生代表挨拶がある。そのために早めに学園に来たのだが、チラホラと学園生がいた。早く来すぎたからかベンチに座っていたものや、どこかへと向かうもの。
「意外と早めに来る生徒はいるんだな。」
「初日から遅刻なんて出来ねぇだろ。」
「確かに。」
俺とセスの存在に気づく生徒はいるが、目が合えば会釈をするのみで話しかけようとせず眺めるだけ。上の身分のものに話しかけることは基本的にマナー違反だからだ。学園ではある程度許されるが、それでもくだらない話をしに来る度胸があるものはいない。目的の場所まで一直線に使えるから楽で良いけど。
職員室に行き先生と新入生代表挨拶についての最終確認を軽くしてから、入学式の会場へ向かった。
前世ではゲームだったからか、前世で経験した入学式と似た構成で流れていき、二時間ほどで終了した。精神的に疲れるんだよな、これ……なくなって欲しいけど、節目としてはないとダメなんだろうな……
この学園は平民貴族関係なく実力至上主義だ。長男だろうが次男だろうが、女だろうが、将来好きな職業になるために研鑽するための場所だ。学園を卒業したという実績だけで、それが自分の箔付になる。その分、試験はとんでもなく難しいけど。
クラス分けは、入学試験の成績順に配置されるが、文官志望の人間と武官志望の人間が半々に入れられる。7〜15人の武官志望者と7〜15人の文官志望者、二つを合わせて1クラスになる。理由は交流の幅が広がるようにすること、人数に幅があるのは競技祭などの関係が考慮がされているからだ。この辺は今は必要ないから省略する。大体、下のクラスになればなるほど人数が多くなる。
通常A〜Fクラスだが、幻のクラス、 Sクラスが存在する。これは、その年に入ってきた生徒の能力によって作られるので、作られない年もある。ないほうが多いから幻と言われている。
このSクラスはどういう人が該当するのか。簡単にいうと、魔法も剣術も座学も教師に教える必要がない、教えることが何もないと判断された場合だ。あくまで学生の範囲でと限定するが。専門家より詳しくなくても大丈夫だし、詳しかったら専門家が可哀想だ。
このSクラス、戦闘力はもちろん地頭もいいから色々な進路の選択肢があるし、王家や王国の騎士団たち、研究員からも注目されるため、推薦の嵐になりやすい。
人数は最低5人。上限はない。あったところでそんなにも優秀な人間はあまりいないしな。
そのSクラスに俺、セス、アイが配属された。アイは俺たちの一つ上だったんだけど、セバスに扱かれたことで、能力的にSクラスになってもおかしくないとのこと。だから、俺の側近ということもあり一年入学を待ってもらった。15歳以上であればいつでも入学試験を受けられるし、合格すれば学園に入れるからね。
俺たちの他にあと2人いるらしいが、誰だかは知らない。興味がないのもそうだけど、他国の貴族らしいとしか教えてもらってない。
教室に行けば嫌でも顔を会わせるから深くも聞かなかった。
指定された教室に向かうと、大きな両開きの扉が現れた。中に入ると、3人ほど腰掛けられる机が横に3列、縦に2列、計6個の机が設置されていた。前列窓際に腰まである髪を一つにまとめてポニーテールにした女性と、後列廊下側に赤髪茶色の目をした男性が1人ずついた。クラスメイト、なのはわかる。間を取って真ん中に座るか。俺が真ん中の机の廊下側に、セスが窓際に一個開けて座り、俺らの後ろの机の真ん中にアイが座った。
そのまま沈黙を貫いていると、金髪が肩まである翠眼の丸メガネをかけた女性が入ってきた。
「はーい、みなさん。私はミルティア・アストリーです。今日からこのSクラスを担当します。これから1年よろしくお願いします。」
ミルティア・アストリーとは王国魔法師団 師団長の弟子と言われていて、学生時代のセフィとライバル関係にあるとか言ってたな。セフィはライバルだとは思ってないから一方的に、だけど。魔法師団の中では有名だ。セフィと同じで、魔法と短剣を使いこなす万能型だった。今は後進の育成がしたくて軍を離れている。
「顔見知りがいると思いますが、ここには留学生もいるのでお互い知らない人もいます。だから、自己紹介をしましょう。最初はアーノルド殿下から。」
名前を呼ばれた男が、気怠げに立ち上がり自己紹介をした。
「フェルド・ボッサ・アーノルド。アーノルド王国第五王子。よろしく。」
とにかく眠そうに答えるフェルド。つか、王族かよ……俺が言えたことじゃないけど、王族らしくないな。
アーノルド王国は、アイスリア王国と同盟を結んでいる国の一つだ。今代の王子たちは、8人いてみんなそれぞれの分野で優秀だと聞いた。ただ、第五王子は自堕落だと聞いた。
俺は、そのイメージを覆すことにした。自堕落だと言うなら、このステータスは一体なんだ……
「はい、じゃあ、グラキエス殿下。」
「グラキエス・ウィン・アイスリア。一応、この国の第一王子だ。趣味は魔道具と魔法の開発。特技は書類作業。よろしく。」
「次、セスタ様。」
「セスタ・ガーディーアンです。趣味は読書、特技は書類整理です。よろしくおねがいします。」
「はい、じゃあアイザリード様。」
「俺は貴族ではないので様はやめてください。」
「じゃあ、アイザリードさんにしますね。」
「俺は、アイザリード。趣味……と呼べるものではないが、鍛錬だ。特技は剣術。以後お見知り置きを。」
「はい、じゃあ、ミシェル様。」
「ミシェル・ワーグナー。メトス公国出身。趣味は紅茶の飲み比べ。特技は……ないわ。よろしく。」
メトス公国もこの国と同盟を結んでいる。そのワーグナーとなると、騎士団団長ワーグナー侯爵、だったか? その娘だろうか。
「はい、これで全員ですね。さすがに人数が少ないと早く終わりますねー。久しぶりに少人数クラスを担当します。さて、今日は学園についての説明をしたら学園の案内をして解散になります。」
アストリー先生の学園についての説明を受け、案内されて、学園初日は終了した。
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