光 〜side:プリシラ〜

 昨夜、何者かに暗殺されかけました。


 とても大きな音が近くで鳴り響き何事かと飛び起きると、見知らぬ男がいたのです。ですが、キース様にいただいたブレスレットが結界を張っていて助けてくださいました。安心してすぐに魔道具なのを思い出し魔力を込めて、強固な結界を張りました。

 同時に男は抵抗せず、やはりとつぶやいたかと思ったら短剣をしまい、見知らぬ男に捕縛されました。おそらく国王直属の暗部、影でしょう。本当に抵抗することもないですし、私も一応殺意というものを知っていますから、この男に殺意がないことにも気付きました。どうにも違和感が拭えぬまま、お兄様が部屋に入ってきて、お父様とお母様、騎士が押し寄せました。

 色々とあり、少しだけ寝て、朝を迎えてキース様に会いました。そのあとは、キース様の後を尾行しました。

 男はアインと言い、ケミサリー公爵家の隠された三男だったようです。この境遇には同情しますが、闇ギルド最強になったのはすごいと思います。色々と問答がありキース様はアインを部下にすると言いました。それにお父様が躊躇しています。それはそうでしょう。

 

 キース様は勘違いしていそうでしたが、お父様がアインをそばに置くのを躊躇していたのは、私が襲われたからではありません。いえ、少しはそれも理由に含まれていたのでしょうけど、もっと別の理由があります。私も含めて、お兄様もお父様も、凄腕の暗殺者を味方に引き入れるのは良いのです。

 ガーディーアン侯爵家は、アイスリア王国の矛として存在する、王国近衛騎士団を纏めるノーマン伯爵家と影、それに並ぶ王家の盾の役割がある武官の家です。ノーマン、影、ガーディーアン。それぞれ役割は違いますが、同じ武官。王国を守るためならば、どんな人間でも使います。たとえ、それが自分を襲った敵だったとしても。ガーディーアン侯爵家が影で冷酷と恐れられるのは、その一面があるからでしょう。

 優秀な人間を寝返らせるのはガーディーアン侯爵家の十八番。それが無理なら残念ですが殺すのみ。私も最初は割り切れませんでしたけど、キース様と婚約して、この人を失いたくないと思った途端に割り切れるようになりましたから、愛する人の存在というのはとても心強いですわ。

 

 話が脱線しました。

 

 こんな家ですから、私もお父様も、お兄様もアインを使うのには賛成です。では、なぜ躊躇したのか。

 理由は、種類は違えどみんながキース様をお慕いしているからです。キース様は我がガーディーアンにとって光なのです。お父様とお母様は、次代の国王として国民思いの優秀なキース様を、お兄様はその思いと合わせて自身のコンプレックスだった瞳の色の薄さを肯定してくれたこと。私にとっては存在そのものが、光なのです。

 そんな存在を、使えるからという理由でアインをおそばに置くのは少し不安なのです。愛する人を危険から遠ざけたいと思うのは当然のこと。アインは私たち侯爵家預かりにして欲しかったのです。

 

 しかし、キース様は一度決めたら曲げないのです。今回のアインのことも、自分の部下にすると言ってきかなかったでしょう。ならば、私は少しでもキース様に危険が及ばないように、契約を結ぶことを選びました。信頼はしてません。しかし、少しだけ、信用できるかも知れない片鱗はありました。キース様が部下にならないかと言った後からずっと、アインはキース様に眩しいものを見たかのような顔をしていました。まるで、キース様と婚約する前の私のようで……

 

 だから、キース様の不利益にならないならば、いいかと思い直しました。まぁ、それを破ったら殺しますけど。

 お兄様もお父様も私の契約スキルの効果を知っているので、今回は引き下がってくれました。助かりました。

 

 

 

 アイン。あなたがキース様を裏切ったら、すぐに殺しますから、せいぜいキース様のお役に立ちなさいな。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る