ぜひ今後とも 〜side:シリアス〜
グラキエスたちが、マゼンティア大商会を去った後…
「シリアス、殿下はどうだった?」
「父さんの勘通り、敵に回したら商会ごと潰されると思うよ。竜王族がフェネリーに擬態してたから、ネズミとかにもなれるんじゃない? 忍び込まれたらさすがに無理。情報戦ですら負けるかもね?」
どんな国とどんな戦争をするにも、まずは情報が必要で、情報を制したものが勝つ。世界の真理だ。前世の漫画とかで、政争をするにも戦争をするにも、情報を集めて準備していたものが勝っていた。
「やはりか。」
今世での父は、それをよくわかっていた。それプラス、人生経験、商人経験から、自分の直感を信じている。だから、自分の直感を確実にしたいがために、俺の鑑定スキルを利用したんだろう。商売は別にしても、白黒はっきりしたいタイプだからね。
「でも、俺は殿下のこと人として好きになったよ。仲良くなっちゃった。今度、魔道具作り一緒にやろうって約束したんだ。」
グラキエス殿下に会う前の第一印象は、できた人間だな、だった。今世の俺より一個上の子供なのに、すでに王太子教育で優秀だと噂で、天才っていたんだなって思っていた。その3年くらい後?に殿下は優秀だというのは有名な話になった頃。冒険者ギルドで強い子供がいるって噂が出てきた。まだ子供なのに色々な依頼をこなす子供2人と、少し歳の離れた少年?青年?が1人と、オーレンさん。オーレンさんは有名だったらすぐにわかったけど、なんとなく気になって他の三人を調べた。まさか三人の正体のうち1人が王族とは思わなかったけど。冒険者になる王族ってなんだよ?!ってツッコんだけど、天才の考えることはよくわかんねぇってことで頭の片隅に追いやった。それからまた数年。見覚えのあるお菓子が流通し出した。もしかして、転生者がこの国にいるのかと思って、父さんに頼んで調べてもらったら、レシピの出所は王宮専属の料理長だった。料理長なら納得と思ったけど正確には料理長じゃなかったらしい。本人が自分のことのように自慢を全くしないからだ。そういう人の可能性もあるけど、なんとなく、根拠はないけど違うような気がした。その違和感から、誰かの代わりにアイディアを出したことにされてるんだと推測した。目立ちたくない転生者なのかなって思って、ますます会いたくなった。さらに情報を集めると、殿下がアイディアを出しているようだった。
ここでやっと、俺はグラキエス殿下のことが気になり出した。もしかして、転生者なんじゃないかって。転生者なら、もし前世でライトノベルとか異世界ものが好きなら、王族が冒険者になるのも納得だった。むしろ、それしかないんじゃないかって思った。俺が11歳になった時にそれは確信へと変わった。冒険者登録をすることも、Sランク冒険者になることも、ドラゴンを助けるために身体強化魔法を駆使して王都の屋根を駆け抜ける姿も、全てが俺の心を震わせる要因だった。この人と話したいと思った。ワクワクした。
まぁ、相手は王族だから、平民の俺が会話なんて無理だろうと半ば諦めていた。だけど、数日前。この商会で婚約者に贈るアクセサリーを作るために、材料を購入したと聞いた。殿下も満足したと言っていたから、また来てくれる可能性が出てきた。諦めていたはずの心がまた浮き足だった。俺は父さんに殿下の話を聞いて、ますます話したくなって、魔道具の案内を任せて欲しいとお願いした。父さんもそろそろ任せてもいいだろうと言っていたし、すぐに了承を得られた。実際に今日会ってみると、先に転生者でしょって見破られた。びっくりしたけど、転生者だとしれて、嬉しかった。思っていた以上に親しみやすいし、気が合った。途中から王族とか、天才とかそんなの忘れてたよね。
前世で会ってたら、親友と言われるぐらいには、一緒にいたんだろうなって思った。
「ふ、そうか。お前に気の合う友人ができて、私は嬉しいよ。あの方は身分を振りかざすようなお方ではないから、学園に行っても仲良くしてくださるだろう。」
そういえば、俺は16歳になったら学園に行くんだったっけ。一応、貴族とのコネクション作りだけど、別に作らずに勉強してもいいって言われてる。魔法を学ぶのが少し楽しみではある。うちの家系は魔法からっきしだし。魔力量はあるのに魔法適正がないんだって。俺適性はあるんだけど、まぁ魔法を使わない人たちしかいないから、魔法は独学だ。あ、キース、教えてくれないかな? 今度ダメ元で頼んでみよ。今日の話してみた感じ、断られるとは思えないけど。
「俺と同郷だから、あの態度も理解はできるけどね。」
結構、面倒見のいいお兄さんって感じだったな。前世も今世も同年代のはずなんだけどねぇ?
「お前と雰囲気が似てるからそうだと思ったぞ。」
父さんは俺が前世の記憶持ちなのは知っている。俺が早々にカミングアウトしたから。だって、この父に隠し事ができる気がしないんだもん! だから、変な疑いをかけられる前に言った。まぁ、なるほどなぁーって一瞬で受け入れられたけど。
超洞察力の鬼である父さんが、俺という存在を知っていて、殿下の雰囲気に気づかないとは思わなかった。それもあって、俺にあっさりキースと会わせたんだろうけど。
「そう思ったから俺と殿下を会わせたんでしょ?」
「まぁな。あの方と仲良くやりなさい。身分関係なく友人になれる存在は貴重だぞ。」
「言われなくてもそうするよ。」
前世、友達がかなり少なかった陰キャの俺にとって、同じ趣味を共有するキースは手放したくない存在だ。仲良くならない選択肢なんてない。
……彼女は欲しいけど、諦めモードである。
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