一緒にいたい 〜side:スリアル〜

 僕の名前はスリアル。竜王族族長の息子だ。

 

 最近は物騒だから、住処から1人で出てはダメだと言われていた。だから、今日も住処から出ずにお昼寝をしていた時だった。

 父さんと母さん、竜王族のみんながいない時を狙ったのか、人間たちの気配がした。すぐに起きたんだけど、何か黒いものが飛んできて、首に刺さってしまった。痛くてすぐに抜こうとしたんだけど、体を乗っ取られた感覚がして、そのまま僕は西の大陸へと向かった。どんなに念話魔法を使ってもみんな答えてくれなくて、怖くて……でも、何もできずに飛び続けて西の大陸に辿り着いた。すぐに地面に降りると、睡眠魔法をかけられて強制的に寝かされた。強い衝撃によって目が覚めるとまたどこかへと飛んでいく。しばらく飛び続けてようやく、大きな街が見えた。だけど、そのまま飛び続けた。また街が見えてもそのまま。どこまで行くのかわからないし、帰りたいし、首が痛いし、怖いし。

 

 感情のままに念話魔法をずっと行使し続けてた。誰でもいいから、僕の声を聞いて欲しかった。

 すると、今までで見た街の中で一番大きな街が見えてくると、何かが繋がった感覚がして、声が聞こえてきた。大人より少し幼い声だったけど、僕よりは大人っぽかった。やっと、助けを呼べる嬉しさに感情のまま叫んだ。

 

 助けて、と。

 

 お兄ちゃんは戸惑っていたけど僕を助けてくれると言ってくれた。とても優しい声だった。助けてくれる人がみつかって、安堵した。街に攻撃しないでくれと言われて、自信はないけど、頑張るというと、お兄ちゃんは急ぐと言って行動した気配が伝わった。


 なんとなくだけど、お兄ちゃんはいい人だと思った。根拠なんてなかったけど、信じられると思った。だから、僕はさっき以上に呪いに抵抗した。だけど、子供であっても竜王族を操れるほどの呪いだから、簡単には行かなくて、今にも街を攻撃しそうだった。もう一心不乱に抵抗しまくると、地面に降りた感覚がした。そして、ブレス攻撃をしろと指示が来てしまい、とにかく魔力を込めないように暴れた。暴れて暴れて暴れて……抵抗しまくっていると、体の支配する呪いが少しだけ弱まって、温かい何かに包まれてるような感覚になった。その時にお兄ちゃんの声がきこえて、頑張れと言われた。呪いの杭を抜くからって。助けてくれるならなんでもよかったから、覚悟を決めた。ものすごい痛かったけど、すぐに傷は治してくれたし、優しくていつのまにか寝ちゃってた。

 

 目が覚めるとお爺さんがいて、ご飯を食べさせてくれた。

 

「ねぇ、助けてくれたお兄ちゃんは?」

 

「グラキエス殿下のことですね。魔力切れを起こして倒れてしまっているんです。目覚めるのは今日か、明日だと思います。」

 

「そっか。ありがとう。」

 

 どうしてもお兄ちゃんに直接お礼が言いたくて、待つことに決めた。僕を助けてくれた反動で寝込んでるのは申し訳なかったし、気長に待つ。その時、父さんから念話魔法が届いて事情を全部説明した。ものすごい怒ってたけど、お兄ちゃんに会いに行くと行っていた。明日には父さんと母さんにも会える。ワクワクしながら、人間に擬態する魔法の仕方を教わって練習した。5回くらい試して人間になれた。お爺ちゃんたちにめちゃくちゃ驚かれたけど、すぐに洋服? を用意してくれて着替えた。服ってサラサラしてて気持ちいいんだなって思った。


 人間サイズになれたから、お城にも行けると言われて、お兄ちゃんの顔を見に行った。お見舞い?をして、ご飯を食べた。

 キラキラした服を着ていた男の人に、なんでここにきたのか、呪われたのかを聞かれて話すと調べなきゃって言ってた。僕が操られたのは多分理由があるからって。それがいいと思った。そのあとはベッドに寝かせてくれた。ふかふかで気持ちよかった。

 

 次の日、見たことがない女の子がお兄ちゃんのそばにいて、とても心配そうにしていた。すぐにお兄ちゃんのお嫁さんなんだと気づいた。だって、母さんが父さんを心配する時と同じ顔をしてたから。

 しばらくして、お姉ちゃんが寝ちゃった。

 それからまたしばらく経って、お兄ちゃんが起きた。お兄ちゃんがお姉ちゃんを心配そうに見ていたのを見て、お似合いだなって思った。

 

 僕の勘は結構当たる。だから、お兄ちゃんとお姉ちゃんはとても優しくて、いい人だって思った。もちろん、僕を保護してくれた人たちも優しい人たちだと思ったけどね?

 なんとなく、お兄ちゃんとお姉ちゃんは大好きだと思った。そのあと、父さんたちが来て、お兄ちゃんと契約できて、僕たち竜族の現状を伝えると、移住していいと言われた。ますますお兄ちゃんが好きになった。お兄ちゃんが大切にしてる人も大切にしたいって思った。

 

 僕、お兄ちゃんの役に立ちたい。

 

 父さんたちにそういうと、お兄ちゃんのそばにいると良いと言ってくれた。もちろん、お兄ちゃんもいいって言ってくれた。これから楽しくなりそうで、楽しみだな。

 

 

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