契約と、取引?
「スリアルと竜王契約をしてほしい。」
「けい、やく??」
「従魔契約といった方がわかりやすいか? 実際には、竜王族がする竜王契約は従属というわけではなく、魂のつながりを強めてお互いを支え合うようなものか。番とは別のつながりだ。」
人間と魔物には従魔契約というものが存在する。魔物を手懐けて仲間にするというものだ。前世のゲームでいうところの魔物使いとか、テイマーとか、なんかそういうやつ。この世界で従魔契約とは、特殊魔法の一種で使える人は限られている。魔物と仲間になり荷物持ちをさせたり、一緒に戦ったりする。さすがに契約できる数は、契約する側の魔力量と、契約する魔物の強さに比例するらしいから、人によって違うらしい。バカスカと契約はしない。
だが竜王族の契約は少し違うらしい。
「いまいちわかんない……」
「簡単にいえば、仲間であるという契約だな! 我ら竜王族はどこにいても念話魔法を使って連絡が取れる。契約すれば契約した個体とそれができるし、契約した個体の持っている加護やスキル、魔法適正を共有できる。単純にいえば自分自身の戦力と生命力の強化になるぞ。」
「え、え?! えぇぇぇ?!!!」
そ、それ、絶対国家機密並みに知られちゃいけないやつ!!
「ついでに言うと、契約した個体との繋がりが強くなればなるほど、召喚もできるようになるぞ!」
「はぁぁぁ?!!!」
召喚?! そんなもん、街中で呼べば不意打ちで国家を滅ぼせんじゃねぇの?! しないけど、それだけ脅威だぞ?!
「ということで、我とも契約するのだ。」
我とも? 我とも?!!!
「いやいやいや!!! そんな簡単に決めていいのかよ!!!!」
「簡単ではない。スリアルのことを助けてくれた恩人なのだ。仲間認定したっておかしくはない。存分に我を使ってくれ。」
「おいおいおいおい!!! ツッコミが渋滞してんだけど?! つか、さらっとユグドラも追加すんなよ?!」
「悪い話ではなかろう。」
ふふんとドヤ顔で言うから、本気なのはわかる。だけど、スリアルとユグドラと契約、だと?! 俺のステータスはどんだけ化け物になっちゃうの?!
「それ、拒否権は……」
「我らでは不服か?」
一瞬で距離を詰められ、ズイっと顔を近づけられた。笑顔なはずなのに、とんでもない圧力を感じる。拒否権はないらしい。父上を見るが微笑んでるだけで助けてはくれないらしい。シーラは……ワクワク顔……うん、無理だ。
もしかして、さっき言ってたユグドラの命を好きにしろっていったやつ、断ったの根に持ってる? ま、まさかな……
「ありがたく契約させていただきます……」
「よいよい。ではスリアル。」
「やったー! キースお兄ちゃん、よろしくね!」
俺の前まで駆け寄ってきたスリアル。喜んでくれてるなら俺のステータスが化け物になっちゃうのも、まぁいっか……諦めよう。今更だ。スリアルの視線に合わせるように椅子から降りてしゃがむ。スリアルが俺の額に手を当てて目を瞑ったので、なんとなく俺も目を瞑った。
「我、スリアルはグラキエス・ウィン・アイスリアと契約することを望む。」
その言葉の後、体がポカポカと暖かくなった。まるで今まで眠っていた潜在能力が目覚めたように錯覚した。そして、スリアルの存在をもっと正確に、強く感じるようになった。これが魂のつながり、なのかな。
「はい、終わり! 僕はまだ父さんほど強くないけど、耐性はいっぱいあるんだ!」
「そうなんだ。ありがとう、スリアル。」
気になって隠蔽と改竄をしてないステータスを覗いてみた。
名前:グラキエス・ウィン・アイスリア
年齢:12歳
種族:人間
職業:王族 冒険者
レベル:50
HP 6800/6800
MP 12800/12800
能力値:筋力375 敏捷330 守備607(+200) 器用さ598 幸運値1500 魅力500
適正魔法属性:全属性
スキル:鑑定(上級)、隠蔽(上級)、改竄(初級)、擬態(上級)
完全記憶(特級)、能力値上昇(特級)、並列思考(上級)、洞察力強化(中級)、気配察知(中級)、危険察知(中級)
魔法創造(特級)、火魔法(上級)、水魔法(上級)、風魔法(上級)、土魔法(上級)、光魔法(上級)、闇魔法(上級)、索敵魔法(中級)
炎魔法(中級)、氷魔法(特級)、嵐魔法(中級)、大地魔法(中級)、雷魔法(中級)、重力魔法(中級)、念話魔法(特級)
武術技能(特級)、剣術(上級)、双剣(上級)、弓術(中級)、槍術(中級)、馬術(中級)、柔術(初級)
ドラゴンブースト(中級)、ドラゴンブレス(中級)
耐性:毒耐性(特級)、毒吸収(特級)、魅了耐性(上級)、麻痺耐性(上級)、石化耐性(上級)、物理攻撃耐性(上級)、眠り耐性(上級)、呪い耐性(上級)、封印耐性(上級)、病耐性(上級)
加護:竜神の加護(守備力上昇)
称号:[転生者]、受け入れられし者、毒人間、竜を手懐けた者、竜王族の仲間
その他:アイスリア王国 第一王子 王位継承権第一位
※[]内は特級鑑定スキルでも見られない。高レベルの完全鑑定魔眼持ちでやっと文字化けする。
あ、うん。被ってたものは階級が上がったって感じだけど、守備力の上昇値えぐい!! プラス200?! 竜神の加護ってなんやねん!!! エグすぎるやろがぁ!
もう、老衰以外で俺、死なないかもしれない……
シーラが後ろから覗き込んできたけど、やっぱり驚いていた。
「すごいっ!」
「スリアルだけでこれって……すごすぎない……?」
「そうであろうそうであろう。」
俺の感想にユグドラが満足そうな顔をした。スリアルが俺のステータス画面を、シーラとは反対側から覗き込んできた。
「うっわ! 父さん見てこれすごいよ!! 僕が契約したぐらいじゃあんまり変わってない! 特に魔法適正!」
「は? そんなわけ………」
スリアルがユグドラを呼んで俺のステータスを覗き込むように言うと、ユグドラは不思議そうな顔をして俺の後ろから覗き込んできた。
「其方、人間じゃなかったのか?」
「ちゃんと見て! 種族はちゃんと人間だから!!!」
不服だ!! なぜ最強種に、人間否定されなきゃならない!!
「では、人間に偽っている竜族とかか?」
「それどっちみち人間じゃないじゃん!! ちゃんと人間だよ! ……多分……」
ステータスでは一応人間ってなってるもん……
「自信がなくなっているな。はっはっは」
「笑い事じゃないよぉ……」
父上やゴルドールが笑いを堪えていて、セスに至っては爆笑一歩手前である。他人事だと思って……
「あ。そういえば転生者も似たようなステータスだったな。あの時も人間だとは思えんステータスだったのを覚えている。」
長い時を生きる竜王族なのだから、前の転生者にあったことがあるのも頷ける。
「あ、そうなの? やっぱり転生者って化け物ステータスなの?」
「ん? あぁ。もうこの世にはいないだろうが、一人だけ知っている。其奴は、其方と同じように人間とは思えないステータスだったぞ。流石に細かいところは覚えてないうえに、差異はあるだろうがな。そうか。其方は転生者だったか。」
それは個人差ってことで説明がつく。前例がいるならまぁまだ精神的にはダメージが少ない、かな?
「そうだよ。俺は異世界からの転生者なんだ。」
「ふむ。なるほどな。では、なおのこと我とは契約した方が良い。」
なんでだ。不穏すぎるんだけど。
「なぜだと思っているな? ユーマ、我が知っている転生者が仮定の話と言っておったのだが、転生者とはそのステータスの高さからか、短命の傾向にあるらしい。」
「「「え?!」」」
ちょっとまて、それは初耳だぞ!! あ、でも、アイスリア王国に転生してきたであろう、数百年ごとの国王は大体40歳ぐらいで死去していた気がする。ーその人たちの代で生活が発展するし、日本の文化も増えてるから、多分転生者たちなのだろうと思われるー
この国の昔は大体70歳前後までが寿命だと言われていたから、40歳とは若いうちに入る。今ではまぁ医療も発達してるから80歳前後に伸びてはいるけどあまり変わらないな。
「理由は、おそらく過労死だろうとのことだ。」
「は? 過労死?」
俺と似たようなステータスならあんまり死なない気がする。しかし、そうではなかったと言うことか?
「ふむ。ユーマはその仮定を信じて寿命を終えたはずだが、それ以外の転生者は国の王だったり、高位冒険者だったりとまぁまぁ忙しい人生だったそうだ。加えて、日本? という国柄、断れない性格とかなんとかで、無理に仕事を続けていたんじゃないか、と言うことだ。」
あー、ステータスの数字に気を取られて、疲労感ガン無視してたってことか? 疲労感が取れなかったそのままと言う感じか? 確かにステータスには疲労耐性とかないし。その穴を見抜けなかったとかか。
「うっわー……ものっすごい心当たりある……ついでに言うと、化け物ステータスなことに油断してたとかでしょ……」
「詳しくは知らぬ。転生者とは同じ時代に現れるわけではないそうだからな。」
「なるほどねー。気をつけまーす……」
「まぁ、気をつけるのもそうだが、我と契約すれば疲労耐性が手に入るぞ? 少なくとも過労死はしないだろう。」
「なにそれ! ほし、」
「我、ユグドラはグラキエス・ウィン・アイスリアとの契約を望む。」
「我、サンドリアはグラキエス・ウィン・アイスリアとの契約を望む。」
ほしいと言い終わる前に、額に手を当てられて契約された。さっきと同じように潜在能力が開花したような感覚だ。ポカポカと心地よい。
あれ、サンドリアさん??
ん? ちょっとまて? 俺、疲労耐性に気を取られた!!!
名前:グラキエス・ウィン・アイスリア
年齢:12歳
種族:人間
職業:王族 冒険者
レベル:50
HP 12580/12580
MP 35085/35085
能力値:筋力450 敏捷420 守備1080(+200) 器用さ695 幸運値1800 魅力800
適正魔法属性:全属性
スキル:鑑定(上級)、隠蔽(上級)、改竄(上級)、擬態(上級)
完全記憶(特級)、能力値上昇(特級)、並列思考(上級)、洞察力強化(上級)、気配察知(上級)、危険察知(上級)
魔法創造(特級)、火魔法(特級)、水魔法(上級)、風魔法(特級)、土魔法(上級)、光魔法(上級)、闇魔法(上級)、索敵魔法(上級)
炎魔法(上級)、氷魔法(特級)、嵐魔法(中級)、大地魔法(中級)、雷魔法(中級)、重力魔法(特級)、空間魔法(上級)、念話魔法(特級)
武術技能(特級)、剣術(上級)、双剣(上級)、弓術(中級)、槍術(中級)、馬術(中級)、柔術(初級)
耐性:毒耐性(特級)、毒吸収(特級)、魅了耐性(特級)、麻痺耐性(上級)、石化耐性(上級)、物理攻撃耐性(上級)、魔法攻撃耐性(上級)、眠り耐性(上級)、呪い耐性(上級)、封印耐性(上級)、病耐性(上級)、疲労耐性(上級)
加護:竜神の加護(守備力上昇)、竜王族の加護(疲労耐性)
称号:[転生者]、受け入れられし者、毒人間、竜を手懐けた者、竜王族の仲間、竜王族族長の友人
その他:アイスリア王国 第一王子 王位継承権第一位
※[]内は特級鑑定スキルでも見られない。高レベルの完全鑑定魔眼持ちでやっと文字化けする。
あ、うん。もう、いいや……ツッコむのやめよう……
「ドラゴンブレスはブレス攻撃できるってやつでしょ? ドラゴンブーストってなに?」
「身体強化魔法は、全体的に弱い強化を施す魔法だろう? しかし、ドラゴンブーストとはドラゴンの身体強化方法で、部分強化などもできるから魔法の強化版だと思ってくれれば良い。」
やばー……本格的に人間辞めてきたかも……まさか、竜王族族長とその奥方両方と一気に契約したことで、上昇値が……ね? うん。
俺が遠い目をして諦めていると、ユグドラが次の話を移ったようだ。
「さて。最後の用事だ。結論から言うと、我ら竜王族をはじめとした竜族を、この地に住まわせてほしい。」
住まわせてほしい? 竜種は、一度安息の地と定めた場所からは簡単には変えないと聞いたことがある。一体何があったと言うのだろうか。
「混乱するのも無理はない。我ら竜族は簡単には住処を変えないからな。しかし、変えざるを得ない状況になったのだ。」
ユグドラは一度言葉を切ると、紅茶を飲んだ。スリアルとサンドリアの表情は暗い。なんとなく読めてきた気がする。
「我ら竜王族は、北の大陸ゼンゼーのある国の山に住んでいる。はるか昔、我が子供の頃に当時の竜王族族長が人間の国家とある契約をした。」
「契約?」
「我ら竜王族に危害を加えない代わりに、竜脈という大地にめぐるエネルギーを大陸全体にめぐらせてほしい、と。」
竜脈とは、強力な大地のエネルギーと言われ、地中深くに存在していると言われていて、地上に湧き出ることはない。しかし、ごく稀に地上に湧き出る地点が存在し、そこを特異点という。特異点から近くの大地は富み、珍しい植物が生まれ、既存の植生は大きく成長する。
強力なエネルギー資源が故に、植物が成長しすぎて魔物化する場合もあるが、それを調整できるのが竜種だ。竜王族ともなれば、人間が得を得る分の竜脈の操作など朝飯前と言う話らしい。
「当時、人間たちは竜族たちの素材を求めて狩が頻発していた。竜王族を殺せるほどの実力はなかったが、それも時間の問題であった。竜王族とは良くも悪くも竜脈とは離れられぬ存在であるため、問題視されておった。そこに、人間が取引を持ちかけてきたので、契約をした。少ない特異点から離れずに済むなら、年に一度の竜脈の操作、体から自然と落ちた鱗や牙の採集など同族達の命に比べれば些細なことだ。実際ゼンゼー大陸では竜族は安全であった。ここ最近までは、の話だがな。」
ゼンゼー大陸は、数百年前。荒廃した大陸と呼ばれるほど、荒廃した大陸だったようだ。植物は育たず、天候は荒れていたと。特異点がある所だけ、人が住めるような所だったと。当時のゼンゼー大陸、ミッシェル国は竜王族と契約して国を復活させたと。竜を狩ることを禁止し、信仰の対象となっていたはずだ。
ちなみに、竜族とは人間に擬態ができる高位竜で大体は竜王族の配下みたいな感じらしい。ワイバーンなどの人型に擬態ができない竜種は中位、下位竜と呼ばれている。人はそれをまとめて竜種と言っている。
「最近まで?」
「十年くらい前からだったか。我らを狩るものが現れ始めたのだ。」
それ結構前じゃないのかと思うが、多分竜王族にとってはつい最近なんだろうな。でも、安全だったはずのゼンゼー大陸が安全じゃなくなった……
「最初は国に属さず、我らの素材目当てな奸佞邪智の奴輩だと思っておった。だから、配下の竜族の卵が奪われ、殺されても国には何も言わなかった。許してきた。しかし、それが間違いであった。国が率先して竜族を狩っていたのだからな。」
荒廃した世を知らぬ世代となったことと、今代の王の欲深さが出てきたと言うことか。
「ふむ。そちらの事情は分かりました。しかし、この国に来る理由はなんですか? 他にも特異点や方法はありそうですが……」
あけすけに言うと国を滅ぼしたり、竜脈を操作しなければいいと思う。この国に来る理由がよくわからない。それに、人間を信用できないだろうから、父上に交渉せずとも勝手にくればいいのではと思うのだが……
「其方らの疑問も当然だ。答えよう。一年ほど前から北の大陸以外に移り住むことを視野に入れていた。竜族総出で様々な大陸や国を見て、報告を受けた。どこも似たよう場所ばかりではあった。この国以外は。」
この国? ここは竜種に対して、特別な対応をとっているつもりはない。確かに素材は貴重だが、ワイバーンもアースドラゴンも群れで生活し、仲間意識が強いため、手を出すと相当な被害が出ることがわかっている。だから、手を出さない。それだけを徹底していた。本当にそれだけだ。
「ここは、竜脈の特異点があるのはもちろん、竜種に手を出していないそうだな?」
「まぁ、被害が大きくなるだけなので積極的に関わっていませんが……」
「それが良いのだ。その風潮がこの国にはある。貴重な素材という自身の欲よりも、身の危険を優先しているのが良い。」
「でも、それだけでは? その風潮が強いとはいえ、竜種を狩ることを禁止しているわけではありませんよ。」
「そこはどうとでもなろう。我らは強いからな。しかし移り住むにはもう少し何かが欲しかった。その一石となったのが、グラキエス殿の存在だ。」
いきなり俺を名指しされて驚いた。
「え、俺?」
「人間は信用ならない、その考えに変わりはない。しかし、警戒心が強いスリアルがお兄ちゃんと呼び慕っていること、王族であるのに我らの素材を求めないところ、そして転生者であることだ。転生者とはお人好しが多いというのが正直な感想だからな。」
別に俺お人好しじゃないんだけど……と思ったら俺の周囲の人たちが深く頷いている。なぜだ……?
「あと、人間と関わることで我らにも利益はある。その一つが、この国で売られている菓子だ。竜王族は甘い菓子が好物でな? この国はそれはもう美味なものが多い。」
確かに俺が色々とレシピを広めたけど……まさか、それがこの国に来たい大部分の本音とか言わない、よね? 言わないでほしいな。
「しかも、それを作ったのはグラキエス殿だと言う話ではないか。」
「そこまで情報収集したのね?」
俺がレシピの提供者というのはあまり知られていない。料理長に全部押し付けてるからね。さすがに料理長がよしとはしなかったから、父上に進言してアイディア分ぐらいはと半分以上押し付けられたけど。そのせいでお金が今でもドカドカと入ってきて……やめよう。
「菓子には目がないからな。」
「胸張っていうことじゃないからね。」
「でも、キース様のお菓子が美味しいのは事実だと思います。」
「シーラはそこで乗らなくていいから。」
「まぁ、色々とありこの国に移りたいと思ったというわけだ。竜王契約はそのついでで、グラキエス殿が我らと友人だといえば手を出す賊は減るだろうと思ったというわけだ。」
まぁ、そうね。ユグドラはともかく、スリアルとは友達だ。断る理由はない。管理する竜王族がこの国に移住すれば、北の大陸の竜脈の力は弱くなる一方。五年もすれば大地も荒廃するだろうというのがユグドラの予測だ。結構変化はわかりやすくなるらしい。ちょうどいい復讐にもなるそうだ。そうなれば、国力も衰退し滅びるだろうとのこと。
竜王族がこちらにくる問題点は、北の大陸と戦争することにならないか。まぁ、北の大陸も造船技術はそこまで発達していないというし、海戦はこちらが上だという自負があるけど、戦争をするとなれば無血とは行かない。絶対に犠牲が出てしまう。だから、したくはないというのが本音だ。その一点が心配だったが、杞憂に終わりそうだし、三年くらい竜族たちは人間にでも擬態して大人しくしてくれると約束してくれた。だから、向こうがこの事実を知る頃には喧嘩をふっかけられる余裕はない。負ける気はないけど。竜脈の力も少しだけ回そうと言ってくれた。北の大陸から輸入している珍しい薬草が手に入るらしいし。
「こちらに利がありすぎるのだが、何かこちらが差し出せる対価はないでしょうか。」
父上がそう思うのも無理はない。本当にこの国にとっては利益がありすぎる。それを聞いたユグドラは少し考えるそぶりを見せて、すぐに何かを思いついた。俺をチラッと見たから、俺関連だな?
「うーむ。それなら、グラキエス殿の新しいレシピができたら、すこし融通してほしい。それでどうだ?」
やっぱり俺だった。けど、お菓子って結構安価なものなんだけどな?
「え、俺はいいけど、それだけでいいの?」
「それが良いのだ。あれは本当に美味だ。竜族にとってはかなり高価なものである。」
相当お気に召したようで何よりだよ……まさか、対価に菓子をくれとはね……本当に竜王族とは価値観が違う……
この日……のちに人間と竜族の真の共存がなされた日として歴史に名が残ることになる。
人竜会談と呼ばれた。
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