魔物狩り 

 王族毒殺未遂事件から二年。母上にも俺が異世界からの転生者だと明かした。まぁ、こっちはあっけらかんとして、「まぁ、そうなの? どうりで賢い子だとは思ったわ。」だった。父上には「ほらな?」って目で見られた。その後、俺はステータスを隠蔽することに決めて、セフィリスタ含めてみんなで吟味しあったのはいい思い出だ。

 

 そうだ。色々と事件が集結していくと、騙されていた侍女は謹慎後、母上の意思で引き続き母上専属となって欲しいと言った。緘口令が敷かれたから、侍女が王族毒殺未遂を騙されて実行したと知っているのは尋問した人のみ。国王直属部隊の者のみだから、侍女はどうにでもなる。侍女はいつのまにか毒耐性がついていたらしく、自ら毒味役を買って出るようにもなった。もう、得体の知れないものは絶対に王妃様たちには出さないと固く誓ったらしい。毒耐性があっても毒を感知できるのは俺が試して知ってるから、採用した。

 

 侍女の件は一件落着だ。

 

 そして、今日。俺たちはレベルアップをするために、セフィリスタと王国近衛騎士団副団長、オーレン・アルスと一緒に魔物狩りに出掛けている。

 もちろん、お忍びだからみんな見た目を変えている。俺は髪も瞳も王族って丸わかりだしな。頭髪用の染色粉と、特殊なメガネをかけて瞳と髪の色を、平民によくいる鳶色に変えた。魔法でもできるとは言われたけど、一回くらいは使ってみたかったから、初回だけ体験することになった。雨に濡れると落ちるから気をつけなきゃいけないけど。

 

 あ、もちろん、父上の許可はおどし、ごほん、もぎ取ってきたから大丈夫。せめて護衛を、と言われたけど、それだとお忍びの意味がない! って叱って、四人になった。

 

 ちなみに、俺たちはいいところの商人の従兄弟同士って設定だ。これなら、愛称で呼び合ってもおかしくない。ということで、俺たちは一見地味な馬車に乗って王都を出た。近くの森に入って、少し奥まで進むと、スライムがいた。水色の半透明の丸っこい塊で、よく見るとうっすらと核のようなものがある。細胞みたい。

 

「スライムだ。」

 

「比較的どこでもいる弱い魔物ですね。」

 

「では、私から。」

 

「セス、がんば〜。」

 

 最初はセスが剣でスライムに挑んだ。そっと近づいていき、剣でスライムを貫いた。核が真っ二つになるとスライムはベチャッと潰れて、動かなくなった。

 

「セス、ナイス!」

 

「はい。お次はキース様ですよ。」

 

「バッチこーい。」

 

 少し奥に進むと、今度はツノがあるウサギがいた。ホーンラビットというらしい。

 

「微妙に可愛いのがやりずらい……」

 

「ホーンラビットはジャンプ力を生かしてツノで攻撃をします。油断してると大怪我をしますからね。」

 

「わかってるよ。」 

 

 オーレンに釘を刺されたので、気を引き締めて剣を抜き、ホーンラビットと対峙する。ホーンラビットが俺に気づくと、警戒心をあらわにして俺に向かって飛びかかってきた。来るとわかってれば驚かないし、よく見ればオーレンよりも動きが遅い。横に避けてから、首を落とした。

 

「う……感触が……」


 肉と骨を断つ感触が柄越しに伝わり、少し罪悪感があった。命を奪うのだから、そんなこと言ってはダメなのだろうが、結構きつい。

 

「慣れるまではきついでしょうが、頑張ってください。」 

 

「うん。わかった。」

 

 魔物の弱点は、普通の動物とあまり変わらないが心臓の代わりに魔石が必ずある。魔物が強ければ強いほど魔石はおおきく、内包している魔力量も多い。取れた魔石は、魔道具に用いられるから、冒険者ギルドで買い取ってもらえる。スライムの核は魔石だけど、魔石を壊さないとスライムは死なないし、内包された魔力量も少量すぎて使い道がないので買取はできるがとても安い。壊すから余計だろうけど。

 ホーンラビットにも魔石があるし、毛皮も使い道があるから売りに行く。冒険者なら討伐報酬としてツノも持っていくらしい。解体はその場でやってもいいが血の匂いで魔物が寄ってくるから普通は安全な場所でやる。俺らに解体技術はないからマジックバッグという、見た目よりも収納できる便利なバッグに収納して冒険者ギルドで買い取ってもらう流れだ。

 

 それから2時間ほど森の中を彷徨い、ブラックリザードというトカゲみたいな見た目のとか、毒をもったカエル、ポイズンフラッグとか、狼型のプレイリーウルフとか、なんか色々狩った。あ、その中で、虎っぽい見た目の、ブレッドタイガーという魔物は、セスと共闘して倒した。

 オーレンとセフィには「魔物狩り初日でブレッドタイガーを討伐ですか……」と遠い目をしてつぶやかれた。どうやら下から二番目のランク、Eランクの魔物らしく、レベル10やそこらの子供が討伐できるものじゃないらしい。

 (冒険者ギルドで定めた魔物の危険度があり、GからA、S、SS、SSSの十段階に分類される。冒険者ランクも同じ。基本は同じランクの魔物を討伐する。)

 

 最終的に、俺とセスはレベル7になった。

 ステータスはこう。

 

 

  名前:グラキエス・ウィン・アイスリア

 年齢:7歳

 種族:人間

 レベル:7

 HP 100/100

 MP 1000/1000

 能力値:筋力50 敏捷45 守備70 器用さ80 幸運値500 魅力80

 適正魔法属性:全属性

 スキル:【武術技能(特級)、完全記憶(特級)、鑑定(中級)、隠蔽(中級)、能力値上昇(特級)、並列思考(中級)、魔法創造(特級)】剣術(初級)

 耐性:毒耐性(中級)、魅了耐性(初級)

 称号:[転生者]、受け入れられし者

 その他:アイスリア王国 第一王子 王位継承権第一位

 ※[]内は特級鑑定スキルでも見られない。高レベルの完全鑑定魔眼持ちでやっと文字化けする。

 ※【】内は隠蔽されたもの。

  

 

   名前:セスタ・ガーディーアン

 年齢:7歳

 種族:人間

 レベル:7

 HP 50/50

 MP 350/350

 能力値:筋力35 敏捷29 守備45 器用さ70 幸運値100 魅力90

 適正魔法属性:炎、氷、風

 スキル: 魔法解析(初級)、危険察知(初級)、気配察知(初級)、剣術(初級)

 称号: 第一王子の友人

 その他:アイスリア王国ガーディーアン侯爵家長男

 

 ここ二年で俺はスキルはあまり増えてないけど、等級は上がった。セスはスキルがいくつか増えた。魔法解析についてもわかった。これは、魔道具を作成するときに魔法効果を魔法陣として道具に刻むのだが、それの解析ができるらしい。魔法陣解析みたいなものだ。

 あと、俺のスキルの武術技能。これがあるのに、なんで剣術スキルが増えたんだろうと思って鑑定スキルで詳細を見たら、剣術スキルとか、拳術、槍術、馬術、柔術などの戦闘スキルを習得しやすくなるものらしく、身体能力とか戦闘センスみたいなものらしい。反則だと思う。

 

 まぁ、それは置いといて、俺のステータスの能力値、上昇率が高すぎる。セスとかなり差が開いたんだけど。これが能力値上昇スキルか……これなら、あと数十レベル上げれば、能力値平均500は超えるかな。

 これから週に一回、実践訓練とレベル上げをするから、すぐにレベル20はいくだろう。

 それから、計3時間森を彷徨い、魔物を討伐し、王都へ帰った。冒険者ギルドで魔物を買い取ってもらい、全部俺とセスのお小遣いへと変換された。もちろん半分こである。このお金は新しく作った銀行口座(王族が小遣い稼ぎするのはよくないから、セフィがもう一個口座を俺用に作成)に各自保管された。

 冒険者登録は、12歳からできるらしいから、あと五年たったら登録しようと思った。さすがに偽名でね。セスも付き合ってくれるらしいから、巻き込もうと思った。

 

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