第一章
授業
セスタと対面して数日。セスタは意外と、ゴルドールが仕事で登城するとそれについてきて俺に会いにきてくれるようになった。ちょっと変態じみたこと言った気がするから会ってくれないと思ってたしね。セスタは、俺と一緒に、ルナとウェスの面倒を見てくれる時もあれば、ただそばにいて本を読むだけの時間があったり、本を貸し借りした。結構仲良くなったと思う。
半年くらい経ち、ルナもウェスも侍女を振り回して遊んでくるようになったが、俺はそうはいかないと思い直した。
それはとにかく、この国について詳しく勉強するために、俺たち子供に甘い父上におねだりして家庭教師をつけてもらった。本当は7歳から本格的に始めるのだが、俺は将来死なないために今からでも遊び呆けてはいられない。まぁ、父上含めた大人たちからみたら、俺は知識欲の塊らしいから、本人も望んでるなら早めに教えておいても良いだろうとのこと。
父親としての父上は、普段は俺たちと母上に甘いが、国王陛下として接する時はかなり厳しい。前世で上司にイラつきながらも黙って叱られ続けた記憶がなきゃちびってた。
もちろん、魔法も体術も武術も、考えられる限り全て。
今日は、この国の情報、世界情勢を教わることになった。まず、この世界は東のビットリア大陸、西のミッドワン大陸、北のゼンゼー大陸、南のバッカー大陸、中央のマンチッタ大陸の五大陸で形成されていて、この五つの大陸を行き来するには海を渡る必要がある。
アイスリア王国は、西のミッドワン大陸の中央にある。とは言っても、ミッドワン大陸は島国だから、中央のどでかい島がアイスリア王国で、海を挟んで西側に同じぐらいのどでかい島があり、こっちは10カ国くらいで分割されていて、西以外の方向には小さい島が点々としている。小さい島といっても、地図でみればの話で、小国を築けるくらいには大きい。前世でいう、日本の半分くらいの小さい国みたいなかんじ。そう考えると、アイスリア王国って、バカでかいんだね…
そんなミッドワン大陸はアイスリア王国を筆頭に、西側以外は島国だから海洋大陸という別名がある。
じゃあ、アイスリア王国の話をしようか。数千年も前の話。まだミッドワン大陸意外にも大きな大陸があると知られる前の話だ。かつてはアイス大陸と呼ばれ、いくつもの国があり、戦争をしていた。しかし、当時のリアティ王国の王、後にアイスリア王国の初代国王になる男が獅子奮迅の活躍をし、一代で大陸を併呑していき、アイスリア王国を築き、様々な国との衝突を限りなく無くし、平和な世になった。
アイスリア王国十代目の国王は、魔道具や鍛治技術を発展させ、生活の発展に貢献。アイスリア王国20代目国王は、薬学を開発、発展。30代目国王は船を作り上げて西側の大陸を見つける。造船技術は発展してなかったが、色々な国があり絹織物や食文化に富んでいて、貿易をするようになっり、発展等々…
なぜか10代に一度、大きく発展しているが、つっこむのはやめよ。え、だめ?俺としては多分100年に一度くらいの頻度で転生者がいたんじゃねって思ってまーす。本当かは知らないけどね?確認する人いないし。普通に天才が開発したのかもしれないしね。え、俺? どうだろう。気にしたことない。どうせ俺平凡だし。
まぁ、こんなふうに色々あり発展していき、いつのまにか西側の国々よりも発展して、大陸随一の技術を持った大国となったわけだ。
そんなところの王太子とは、ね…はぁ…
翌日。王国魔法師団、副師団長、セフィリスタ・マードナー直々に魔法を教わることになっていた。あ、そうそう、俺の他にもう一人。セスタがいる。最近、愛称でセスと呼び始めた。俺が早めに勉強すると言ったらセスもやると言って聞かなかった。勤勉なセスらしいと思って、一緒に授業をすることになった。宰相のゴルドールも授業料は払うから一緒にお願いしたいと言って、同席させてくれた。さすがに王太子教育とかは一緒は無理なんじゃと思ったら、セス本人が見学すると言って聞かず、結果全部一緒である。ゴルドールも本人も知っていて損はないだろうと主張した。いや、バカ真面目か親子揃って。
まぁそれは良いか。
「それでは殿下。魔法を使うために必要なものはなんですか?」
「魔法に必要なのは燃料となる魔力とそれを制御するための魔力制御、そして魔法の明確なイメージです。」
「正解です。では、魔法の属性はいくつあるでしょうか。これはセスタ様におこたえしていただきましょうか。」
「はい。魔法属性は基本属性で六つ。火、風、水、土、光、闇で、上位属性や特殊属性を含めると、さらに増えます。代表的な属性は、炎、氷、大地などです。」
「お二人ともまだ5歳なのによく勉強していますね。私が5歳の頃はまだ庭を駆け回ってましたよ。」
おおー、流石セス。上位属性や特殊属性まで知ってたんだ。セスの完璧な回答にセフィリス先生が感心していた。
「それでは、お二人にどんな魔法に適性があるのかを鑑定させていただいても良いですか?」
鑑定・・・スキルの一つで、初級・中級・上級・特級というランクがある。このスキルを持っている人間は対象を鑑定できるようになり、ランクが上がれば上がるほど、鑑定できる情報が増える。
ちなみに俺のステータスはこれ。
名前:グラキエス・ウィン・アイスリア
年齢:5歳
種族:人間
レベル:1
HP 20/20
MP 500/500
能力値:筋力10 敏捷10 守備20 器用さ40 幸運値100 魅力80
適正魔法属性:全属性
スキル:鑑定(初級)、隠蔽(初級)、武術技能(特級)、完全記憶(特級)、能力値上昇(特級)、並列思考(初級)、魔法創造(特級)
称号:[転生者]
その他:アイスリア王国 第一王子 王位継承権第一位
※[]内は特級鑑定スキルでも見られない。高レベルの完全鑑定魔眼持ちでやっと文字化けする。
乙女ゲームの世界のくせに、悉く異世界ファンタジー風だよなぁ……いや、ちゃんと現実世界だって認識してるよ? してるけどさぁ……
あと、俺のステータス、ちょっと突っ込ませて?
ステータスの平均値は一般人で大体30。騎士団とか魔法師団などで能力値が変わることもあるけど、それでも、レベル1でMP三桁はおかしい。
守備とか筋力は、まぁ普通だけどさ……
「……」
どうしよう。多分俺のステータスを見てセフィリスタが固まってる。
「セフィリスタ殿?」
「あ、あぁ、申し訳ありません……ここまでのステータスを見たのは、初めてなものでして……それが同時に二人……少し取り乱しました。」
メガネのブリッジを押し上げて、息を吐いた。気持ちを少しでも下げたかったんだろう。ん? 二人?
「二人、とは?」
「もちろん、殿下とセスタ様です。お二人とも、魔法の才能が有るのは100歩譲って良いのですが、魔力量が桁違いで……」
「?」
「とりあえず、詳細を書きますのでしばらくお待ちを……」
セフィリスタが紙を持ち出して、さらさらと書き出した。まずはセスタかららしい。2人でセフィリスタの手元を覗き込んだ。
名前:セスタ・ガーディーアン
年齢:5歳
種族:人間
レベル:1
HP 25/25
MP 300/300
能力値:筋力15 敏捷8 守備10 器用さ35 幸運値80 魅力75
適正魔法属性:炎、氷、風
スキル: 魔法解析(初級)、危険察知(初級)
称号:
その他:アイスリア王国ガーディーアン侯爵家長男
「……セスタ、規格外?」
確か、普通の人は魔法適正は一つ、二つあればまぁまぁ才能ありとみなされて魔法師団に入りやすいとされている。魔法適正は生まれた時から決まっている才能だから増やせない。しかし、あくまで適正があるってだけで、やろうと思えば適性がなくても魔法は習得ができるから、一つしか適性を持ってない人でも魔法師団に入って、昇格はできる。あくまで実力至上主義だから、平民でも貴族でも強ければ良いのだ。では、適正があるのとないとのでは何が違うのか。それは、魔力量の消費が多くなる。多分適性がある人に比べたら2倍消費する。それだけだけど、魔力10消費が20になってもあまり大きくはないが魔力100消費が、200になるのはかなり大きいだろう。
しかし、これは基本属性六つの話。上位魔法属性や特殊魔法属性は違う。上位とか特殊というだけあって魔力消費はでかい。一つ持ってるだけでもかなり強いし、属性によっては国の保護対象となる場合もある。だから、適性がない上位属性や特殊属性は基本的に行使できない。基本的には。
それがセスは二つ……
「キース様に
「まぁ、うん……そうだよね……俺もセスだったら言われたくないわ……」
ステータスを見る方法なんて教えてもらってなかったし、見ようなんて思わなかったからなぁ。
「お二人はこのステータスを誰かに言ったことはありませんよね?」
「「ないです。」」
「では、国王陛下に報告しますので、判断を仰ぎましょう。レベル1の段階でかなりの魔力量、そして上級魔法適正や特殊魔法適正が二つ以上あることを公表するのは憚られますからね。」
「確かに、セスタも俺も身分が高いし、狙われたら危ないよね。」
「その通りです。特に殿下。あなたは将来王太子となられるお方なのですよ? ただでさえ、お命が狙われるお立場なのに……」
超大国の王子というのは狙われやすい。
貴族からは貴族の傀儡として懐柔されたり、王家の秘密を知るために色々な情報を抜き出すためだったり。
だけどそれは自分の頭で先の未来を考えられないような子供である場合の話。俺は頭のいい子供なのは、割と広まっている。一度言われたことは絶対にしないし、たまに大人みたいな発言(自重を忘れた時)するからね……
実際に他国や他国の歴史でもそういう理由で暗殺された第一王子はいる。どこの国でも起こる時は起こるということだ。
アイスリア王国は超大国ではあるが、もちろん全員が全員王家に絶対の忠誠を誓ってるわけじゃない。こういう厄介な貴族もいなくはないんだ。なぜ、そういう奴らがいるのに排除しないのかというと…そういう奴らの大半は地位が低い(色々あって昔に爵位を取り上げたり地位を落としたりした)し、王家や王家に絶対の忠誠を誓った貴族が牽制しているからだ。今までそいつらに反乱行動を起こさせなかったのは、ひとえに王家や牽制する貴族たちが優秀だから。たとえ当主が凡人であっても周りが支えればいい話。
ここまでは、現段階での推測。
もし、俺がこのステータスを公開したとしよう。大半の貴族や平民は喜ぶだろう。次代の王が優秀なのは嬉しいことだから。
だけど、反乱分子はどう思うだろう。また優秀な子供が王になるのなら、このままの生活だ、と思うだろうか。
いないとは言い切れない。どういう思考回路してるのかわからない人間もいるし、何がきっかけでそうなるかもわからない。
つまり、どんな些細なきっかけでも、バカは助長する。なんでって? バカはバカだから、常識が通じない。HPの低さ、自衛手段を習ったばかりの弱い子供の時期に、こんなチートを持ったと公表するなんて、そいつらの恰好の的になる。これも実際あった話なんだが、すごいステータス持ちの王子が暗殺されたとか良くあるよ…。最近の王族はステータスを公開しないこともある。家族溺愛の父上が公表するとは思えない。少なくとも、今だけは。
セフィリスタはその辺わかっているからこその判断だろう。
「とりあえず、今日は全属性には適性がある殿下と、炎属性に適性があるセスタ様なら、基礎魔法である火魔法、ファイアにしましょう。」
セフィリスタは右手を正面に掲げて、魔力を込めてファイヤを放った。ちゃんと的にあたり、的は燃え上がる。俺たちはセフィリスタの魔法を真似してファイヤを放った。お互い的には当たらず、地面が燃えた。
「「あ」」
「ふふ、大丈夫ですよ。『ウォーター』」
セフィリスタが予想していたとでも言うかのように、落ち着いて、水魔法ウォーターを燃えているところに放った。「「おぉー。」」と二人で感心していると、セフィリスタが微笑ましそうにして笑った。
「お二人とも、威力が少し高めでしたが問題はなさそうです。魔法の飛距離も十分。イメージは今ので大丈夫です。初めて魔法を使ったとは思えませんね。」
セスと顔を見合わせて、セフィリスタの言葉を理解した俺たちはハイタッチをした。
「やったな!」
「はい!」
「じゃあ、どっちが先に的に当てられるか競争な!」
「負けても泣かないでくださいよ?」
「だれに言ってんだよ!」
この日、俺たちは、的に当たるまでファイアの練習をした。まぁ勝敗はセスの勝ちだったんだけど、水魔法のウォーターは俺の勝ちだった。
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