幼き忠誠 〜side:セスタ〜

 俺の名はセスタ・ガーディーアン。宰相を父に持つ長男だ。貴族の子供は、正式に社交会デビューをするのは、7歳なんだが、母がお茶会が好きでお客様は頻繁に出入りする。もちろん、お客様の中には子供もいる。大体は、社交デビュー後の子供だが、デビュー後とはいえ子供は子供。少しだけ関わる機会がある。

 

「お前、女みてぇ。」

 

「目の色も薄くて、気色悪い。」

 

 悪意なく言う言葉が、俺の胸に刺さる。俺の目の色は、両親よりも薄い。たったそれだけだ思うかもしれない。だけど、それが思っていた以上に、俺には辛いことだった。

 

 

 俺は自分の目の色が嫌いだった。

 

 

 数日して、父上に連れられて、王宮へと赴いた。どうやらグラキエス殿下にお会いになるそうだ。俺と同じ歳だから学園でも顔を合わせるだろうし、将来お支えするかもしれない方だから、今のうちに仲良くなっておけ、と。一応、2回目以降は会いたくないなら会わないようにもできるらしいけど……

 憂鬱だった。あの子供らは8歳。殿下はまだ5歳。悪意なく無邪気に言われる可能性さえある。会いたくなかった。だけど、それはいらぬ心配だった。


 公式の場ではないから、堅苦しいのは無しだといい、父上と少しだけ話すと、俺に視線が移った。できるだけ、目を合わせないように臣下の礼をして挨拶をする。次の瞬間聞こえた声に、俺は目を見開いた。

 

 瞳の色が綺麗だ、と。

 

 一瞬なにを言われたのか分からず、顔を上げて殿下の顔を見た。最高級のサファイアのようにくすみ一つないその青い目に映る俺は間抜けな顔だったと思う。

 

 純粋に、俺の目を綺麗だと、言った。

 

 それがわかった途端、込み上げてきたのは安堵だった。俺の目を好きだと言ってくれる人がいたんだ、と。おかしくないと思ってくれる人が家族以外にいるんだと。嬉しかった。

 泣き出してしまった俺に戸惑っているが、怒りはしない。懐の広い方だ。少しだけ、同い年の子供には見えなかったけど、それでもよかった。俺は、この人の役に立ちたい。この人のためなら、命すら投げ打とう。この人が作る世の中を、見てみたい。

 

 俺は、一瞬でグラキエス殿下に惹かれた。

 

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