側近候補

 それから約半年。予定日より少し早めに双子は生まれた。切開出産(前世で言う帝王切開)で、生まれた。それはもう可愛い双子が生まれた。乙女ゲームの情報通り、二卵性双生児で男女。夜明けに生まれたことと、星が綺麗だったから、星という意味があるルナにちなんで姉にはルナミリア、弟には宵という意味があるウェスペルと、名付けられた。

 

 父上共々、俺は弟妹を溺愛した。前世の経験から子供達に嫌と言われない程度に猫っ可愛がりした。

 

 それから一年半。

 

「ルナー、ウェスー、ご飯食べよー」

 

「「にぃたま!」」

 

 愛しき弟妹は、俺をにぃたまと呼び、それはもう懐かれた。ものすごく。これが極楽浄土。

 ちなみに、父上はうざがられてたまに「やっ!」って嫌がられては、落ち込み、また猫っ可愛がりして嫌がられての繰り返し。俺にも似たようなことして嫌がられていたらしいぞ。たまに死んだ魚のような目をして受け入れていた、とも聞いた。ちょっと笑った。あの人のメンタルはダイヤモンドメンタルなのか、お豆腐メンタルなのかよくわからん。

 

 ちなみに、ルナは母上よりも少し淡いストロベリーブロンド、どちらかというとプラチナブロンドに近い感じの髪に、母上と同じ緑の瞳。ウェスはおそらく先代国王陛下、俺たちのお祖父様が金髪だったので、そこから来たであろう金の髪と、夜空のような深い青い瞳を持っている。

 

 俺たち王族は基本的にブロンド系の髪か、青い系統の瞳のどちらかを持っていることが多い。

 母上は公爵家の長女で、俺にとっての曽祖父先代公爵が王族だったから、ブロンド系の髪を持っていた。

 

 

 

 さて、家族と王族の紹介はこれくらいにして、話を変えよう。俺は5歳になった。今日は遊び相手兼、将来の側近候補であり、俺が王位を継いだら宰相となるセスタ・ガーディーアンに合うらしい。実は攻略対象その2なんだよな。ワクワクしながら待っていると、到着したと侍女が呼びにきたので、応接室に向かった。

 

 中に入ると、ゲームでよく見たセスタを幼くした美少年とそのセスタに歳を取らせたような男がいた。二人は俺に気づくと、立ち上がって頭を下げた。二人とも、海のような青い髪にアメジストのような瞳だ。

 

「グラキエス第一王子殿下にご挨拶申し上げます。」

 

 すぐさま二人は頭を下げてくれたんだけど、堅苦しいなぁ。苦手なんだよね〜。

 

「非公式の場だから、堅苦しいのはなしにしよう。頭を上げてくれる?」

 

「相変わらずですね、殿下。それに、大きく立派になられましたな。」

 

「そう? 服のサイズくらいしか変わってないように思えるからちょっとわからないや。それより、ゴルドール、彼はあなたの?」

 

「はい。私の息子である、セスタ・ガーディーアンです。」

 

 ゴルドールの半歩後ろに控えていたセスタに視線を移すと、ゴルドールがセスタの背中を少しだけ押した。それに合わせてもう一度セスタが頭を下げて、臣下の礼をとった。

 

「お初にお目にかかります、グラキエス第一王子殿下。私はゴルドール・ガーディーアンの息子、セスタ・ガーディーアンと申します。」

 

「君の目の色、綺麗だね。」

 

「は……?」

 

 さっきちらっと見えたけど、生で見ると、本当に綺麗だったな、セスタの目の色って。セクハラとかじゃなくてまじで。

 

「透き通るような薄紫ってさ、儚い印象があって美しく感じて、僕は好きだからさ。ゴルドールみたいなアメジスト色も綺麗だけどね。」

 

「……薄気味悪く、思われませんか?」

 

 儚い印象、本人の色白さ、感情があまり顔に出ないのが相まって、人形のように思われているらしい。家族や使用人はそうでもないが、社交界に出ると結構言われるとか。別に気にしなくていいと思うけどね。どうせ、将来はめちゃくちゃかっこいいクールイケメンになるんだし。

 

「え、全く。めちゃくちゃ綺麗じゃん。って、男に言われても嬉しくないか。」 

 

「いえ、もったいなき、お言葉です……」

 

 ゲームのセスタは気にしていたけど、まさか今からコンプレックスだったのか。少し目が潤み、声が震えていた。俺の言葉に少しでも辛い思いをしなければ良いと思って言っただけなんだけどな。正直言って、俺、セスタを幼馴染兼婚約者から奪ったヒロインは嫌いだし、セスタはセスタの婚約者と結婚して欲しいからフラグは折るに限る。それに、セスタの瞳が好きなのは、俺だけじゃない。婚約者ちゃんだって好きだからね。

 

「なぁ、セスタ。俺と友達になってほしい。」

 

 セスタに向かって手を差し出すと、セスタは服の袖でゴシゴシと涙を拭って、握手してくれた。

 

「ぐすっ、はい。私でよければぜひ。」

 

「じゃあ、俺のことはキースって呼んでくれ!」

 

 セスタがゴルドールの顔を見上げると、ゴルドールは頷いてくれた。

 

「では、私のこともセスとお呼びください。キース殿下。」

 

「ちっちっち、殿下もなし!」

 

「うぇ、あ、キース様?」

 

「様も!」

 

「それだけはご勘弁ください!」

 

「ちぇ。じゃあ今はそれでいっか。いつか呼び捨てしてくれよ!」

 

「善処します……」

 

「それしないやつじゃん! ま、いっか。」

 

 これが俺と俺の側近、セスタとの出会いだ。それから、ゴルドールが仕事で登城するとそれについてきて俺に会いにきてくれるようになった。

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