第17話 海辺のドライブ

 黒いSUV。ランドクルーザーの文字が見える。自分は車に詳しくないのだが、これは新車で相当高額な車種だと思う。しかも車高を上げているし、ピカピカの大径ホイールも履いているし、あちこち社外品のパーツが組み込んであるようだ。改造費だけでも2~3百万かけているんじゃないかって気がする。


「ははは。大殿大路君はランドクルーザーは初めてかな? これは伝統あるトヨタのフラッグシップ四駆なんだぜ」


 初めても何も、実家の車は型落ちのプリウスだし、運転した事があるのはホンダの教習車と実家のプリウスとこないだ運転した軽トラだけだ。一応、免許がAT限定でない事は自慢したい。


「近くで見ると本当に大きい。こんな大きな車は運転できませんよ」

「このサイズは誰でも戸惑うよ。でも慣れたら問題ないさ。さあ乗って」


 こうが後部ドアを開いてくれた。アザミは嬉々として乗り込み、僕も彼女に続いた。助手席には築山あかねがちゃっかりと陣取っている。


「さあ行こうか。海岸沿いの国道でいいよね」

「おっけえ。海大好き!」


 あかねがはしゃいでいる。こいつが体を揺らすたびに巨乳が揺れるのが悩ましい。僕は一月前に彼女と関係を持った。初体験だったその時の記憶が蘇る。


 彼女のふくよかな裸体。豊かな胸元。それを遠慮なく貪った。彼女は口で奉仕してくれたのだが、僕は情けないほどっけなく果ててしまった。


 僕はアザミの虜になっているのに、初体験の相手であるあかねにも執着しているようだ。そしてもう一度、あかねを抱きたいなどと思ってしまった。

 

 するとどうだろう。アザミが僕の横腹をつまんでギュッとつねったのだ。


「清ちゃん。ダメだよ」


 これはヤバかった。アザミは人の心が読めるんだ。


 彼女は怪しく微笑みながら、僕に抱き付きリアシートに押し倒した。二人で横になって見つめ合ってしまう。


「ごめん。思い出したんだ」

「感動の初体験だったのよね。ちょっと拗ねちゃうわ」


 アザミに唇を奪われた。抱き合って舌を絡め合う。衣類の上からからお互いの体をなでまわしている。僕の理性は、他人の車の後部座席で何をしているんだと訴えているのだが、自分に押し寄せてくる情欲の前にそれはあまりにも貧弱だった。


「あれれ? 二人共、熱いね!」

「だよな。俺も猛ってきたぜ」


 いつの間にか車は停車していた。海沿いを走っていたと思うのだが、周囲は山の中のようだ。


「俺たちもさ、カーセックスをしようって思ってたんだ。ちょうどいいからここでやっちゃおうぜ」

「うん」


 功とあかねは助手席で始めてしまった。僕たちは後部座席で。二組のカップルが一つの車内で性行為に耽っている。このシチュエーションは異常なほどに興奮をもたらしたようだ。


「こいつは興奮するなあ。悪い。ちょっと降りてくれ」


 行為の途中だったが、僕とアザミ、あかねは彼に従って車を降りた。功は後部座席、二列目と三列目のシートを畳んでフラットにした。


「ちょっと狭いが立派なベッドの出来上がりだ。ここでやっちまおうぜ」


 功はあかねを車内に引きずり込み、行為を再開した。嬌声を上げながら、あかねは何度も体を震わせていた。

 アザミは躊躇なく僕を車内に引きずり込んで、そして僕に抱きついた。そして腰を振り始める。


「奈々ちゃんだっけ? 綺麗な尻だぜ」


 今は僕とあかねが並んで横になっており、その上に功とアザミが乗っている格好だ。


「あは。今日は目一杯乱れちゃお。ね」


 あかねは功に貫かれながら僕に抱き付いて来た。ふと見ると、功とアザミも舌を絡めながらキスをしていた。


 一瞬、嫉妬心が沸き上がった。しかし、それは一瞬だった。異様な興奮状態の中で、四人はほぼ同時に絶頂を迎えていた。

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