第14話 ヨットハーバーへと向かう
僕は悲壮な顔をして歯を食いしばっていたのだと思う。見かねた髭面が話しかけて来た。
「なあ坊主。気持ちは分かるよ。彼女がヤクザに連れていかれたんだ。追いかけてどうにかしたいと思うのは仕方がない。でもな。これは警察に任せる案件なんだよ」
ごもっとも。
しかし、僕はここでじっとしているなんて出来そうになかった。
「おい、坊主。仮に追いかけるとして、足はあるのか? 車は持ってるのか?」
髭面だ。
言われてみればその通り。タクシーで来たのだから、自転車だって無い。
髭面は赤く腫れた頬を撫でながら、小さなバッグからキーを取り出した。
「実家の軽トラだ。ボロなんで少々傷つけてもかまわんぞ。これで追いつけるかどうか分からないが、行くだけ行ってみろ。場所は恐らく東のヨットハーバーだ。わかるな」
僕は頷きながら髭面からキーを受け取った。
「おい。無茶な事をさせるなよ」
「そうだな。だけど俺は、この彼氏にちょっとだけ期待したい」
「そうか。そうかもな」
何故か二人で頷き合っている。
「どうしたんですか? 僕に何か期待できるような要素があるんですか?」
髭面がニヤリと笑って僕の両手を握った。
「俺たちは先輩を説得しに来たんだ。逃げないで出頭しろってね」
「そう。ここで逃げちゃ再起不能になる。逃げずに責任を果たせば、多分有罪になる。ついでに借金は残るかもしれないが、再出発できる。冬二先輩はやり手だから、もう一度やり直せるはずなんだ」
色黒にも嘆願された。
僕は彼等に乗る事とした。幸い、普通免許は持っているしビールも飲んでいなかった。
「通報は俺たちがしておく。お前の事は言わないでおいてやるから、上手くやれ」
「わかりました」
それはつまり、アイツらを追いかける僕が警察に確保されるかもしれないって事か。僕は焦る気持ちを押さえながら駐車場へと向かった。駐車場とはいうものの、門の傍の空き地だ。そこに何台か乗用車が止まっていて、その中に老舗旅館に似合わない本当にあちこち錆びている軽トラを見つけた。
ドアロックしていない。キーを差し込んで回すと、すぐにエンジンが始動した。苦手なマニュアルシフトだったのだが、何とか発進させることができた。殆どペーパードライバーな僕はぶっ飛ばすような運転は無理で、それでも制限速度の一割増くらいはスピードを出して頑張った。30分くらい走ったところでヨットハーバーが見えて来た。
ヨットなどの小型の船が多数係留されている埠頭で、夜間は人がほとんどいない。脇にある駐車場に黒いワゴン車がエンジンをかけたまま止まっているのが見えた。多分あれだ。僕は知らん顔して通り過ぎ、少し離れたコンビニの駐車場に軽トラを停めた。
300メートル位だろうか。早足で黒いワンボックスカーへと向かった。幸い、マイクロバスや他の車両が駐車してあったので、その陰に隠れながら、車間をすり抜けるように近寄っていく。
黒いワンボックスカーはスライドドアを開け放ってあり、中の様子が丸見えだった。
「お嬢ちゃん。もっと念入りにしてあげなよ」
「昨日ね、パパは頑張り過ぎちゃったからね。今日は無理かも?」
水音を立てながら、アザミがハゲに奉仕していた。
「反応しねえな。俺は後回しでいいや」
「それで良いんですかい?」
「仕方ねえだろ。お前たちがやってるのを見てたら元気がでるかもな」
「じゃあ俺からだ」
アザミを連れ去ったリーダー格の男がファスナーを降ろす。アザミはうっとりとした表情で奉仕を始めた。男の方も感じて来たのか、くぐもった声を漏らしながら眉をしかめている。
「あううう。何てテクしてやがる」
「我慢しないで」
いったん口を離したアザミがまた奉仕を始めた。しかし、男はアザミを無理やり引きはがすと、ベットのように平坦にされた後部座席へアザミを押し倒した。そして彼女の上にのしかかった。
「この尻は最高だぜ」
男はうつ伏せのアザミに覆いかぶさり、行為を始めてしまった。
「はあ。こっちもいいじゃねえか。こりゃ最高だ」
他の二人も加わり、三人がかりでアザミを犯し始めた。しかし、僕はあの時の事を思い出した。そう、アザミと初めて出会った夜の事を。
行為が一段落ついたところで、アザミは服を脱ぎ始めた。全裸になったアザミが体を起こして怪しく笑う。
「次は誰? さあ、いらっしゃい」
「おおおお!」
極道との行為に興奮したのか、ハゲのパパがアザミにのしかかり、激しく腰を動かし始めた。
それらの行為を覗き見ている僕は異常に興奮していた。今にもオナニーしたい欲求を何とか抑えて様子をうかがう。
そうだ。
アザミの本体が姿を現すその時を待つんだ。
ハゲ頭が果てたその時に、男二人が車外へと放り出された。アザミは全裸のまま、薄笑いを浮かべながら裸足でアスファルトの上に降り立った。
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