第108話さらば、海音寺!
この日は原口の四十九日法要だった。親しい友人と数名の親族が集まり法要は終わった。
その後、友人同士で「みち潮」で、軽い飲食をした。
海音寺も参加した。市川由美の説得により、ようやく海音寺も通常の状態に戻ったので、みんなでビールで乾杯した。
最初は皆んな静かだった。
20分ほど静かな状態が続き、早くも酒の回った由美の夫の秀樹が先陣を切った。
「あのぅ、海音寺さんは今後どうされるんですか?」
これは、皆んなが海音寺に聞きたいことであった。
「今、受け持っている仕事が終わったら、東京に帰ります。この土地は居心地の良かったのですが、原口君がいないと思うと寂しいし、思いだすので……」
海音寺な目線は、ビールの入ったジョッキに向いていた。
「海音寺さんと、原口君との素敵な思い出が出来て嬉しかったです。東京に戻っても元気でいてくださいね」
と、倉橋が言った。
「うん。ありがとう。今日で終わりにしたくないので、僕がお盆休みには必ずお墓参りするので、その時はまた、飲み会に参加させてください」
「勿論ですよ、海音寺さん」
「副市長の神田さんには、色んな力添えありがとうございました」
「いえいえ、今日は土曜日なので思いっ切り飲みましょう」
と、神田はスズキの洗いを口に運んだ。夏はスズキに限る。
皆んなは、平目の煮付けやタコの塩辛を食べていた。
「そうだ、皆さん。久し振りに『なだ千』に行きませんか?」
と、酔った海音寺が言うと、
「良いですね。よし、5人だからタクシー2台呼びましょうか?」
「お願いします。神田さん」
一行は、料亭なだ千に向かった。
海音寺のはからいで、何度もこの高級料亭で皆んなは飲ませてもらっていた。それも、今日が最後。後は自腹で来るしかない。
だが、神田以外はこのなだ千は敷居が高かった。
皆んな、スマホで記念写真を撮った。
酒が進むにつれて、原口の思い出話しを海音寺は語り出し、皆んなも原口の笑い話をした。
取り分け、秀樹がバーでチンコを触られて勃起して、由美の顔に向かって射精した話しはインパクトがあった。
これが、きっかけで由美は秀樹と付き合い出し、神田が由美の両親を説得して結婚に至ったのだ。
あの時、原口が秀樹のチンコを触って無かったら、市川達はお友達で終わったかも知れない。
それから、半年後の12月に一同は空港にいた。
海音寺を見送るためだ。
軽く空港で食事をして、海音寺は11時半の便に乗るために、11時過ぎには搭乗口に向かった。
「皆さん、今までありがとうございました。また、来年の初盆には帰ってきます」
と、言うと、
「海音寺さん、待って!これ、はいっ」
それは、今までの飲み会で撮った皆んなの写真だった。原口も写っている写真も沢山あった。
海音寺は受け取ると、ありがとうございます。と、言ってから目頭を熱くしてゲートに向かった。
こうして、原口と海音寺とのお別れをした。
その日は、平日だったので皆んな仕事場に向かった。
それぞれ、車で来たので駐車場に向かい一言も喋らずに別れた。
皆んな、ホントは泣きたかったのかも知れない。
さらば、海音寺!
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