第4話学校風景

次の授業は恐怖の中瀬先生の英語の時間だ。

今度こそ、ビンタを喰らわないように休み時間に小テストの最終確認をしていた。

僕は呪文を唱えるが如く、英文をぶつぶつ呟いていた。

すると、突然後ろから、

「おい神田~、古畑のサントラ貸してぇ~」


ドゴッ!


「アババババッ!」

僕の裏拳が竹川の唇を直撃した。


「な、殴るなよ!いちごミルク用意してあるのに!」

「オレにたかるな、ハエ」

「か、神田の分際で!もういいっ、真美ちゃんにお願いする」

「お前は、馬鹿か?何故、真美が古畑のサントラを持ってるんだよっ」


竹川は唇を腫らし、

「わたしが、あんたの彼女にお願いすると、話しが早いからね!この、短小包茎」

「な、なんだと。オレのはヘソに付くくらいなんだぞっ!」

「ペッ、ペッ!嘘つき。アンタみたいな男は短小が似合うのよ」


キーンコーンカーンコーン


チャイムが鳴った。


……し、しまった!今のやり取りで暗記してた英文忘れちゃった。


中瀬先生は20点満点の10点以下の生徒を立たせた。

「神田、お前は何点だ?」

僕は恐る恐る、

「5点です」


バキッ!


グハッ!


「神田、やる気無いだろ?バカモンがっ!」

そして、中瀬先生は竹川に近付き、

「竹川、何点だ?」

「……2点です」


バッチーン


ゲバッ!


「竹川、このクラスから外すぞ!」

「そうだ、そうだ!先生、悪いのはその竹川なんです」

「黙っていろ、神田。お前も同罪だ」


バキッ!


ウグッ!


僕は2回も殴られた。真美は窓側の席で、グラウンドでサッカーをしている生徒達を眺め、欠伸をしていた。


長い50分間だった。

「ねぇ、とし君。君は馬鹿なの?」

僕はいちごミルクをチューチュー吸いながら、

「何で?」

「あの、小テストで5点はないでしょ?」

「あのなぁ、スペル違いだよ。隣のヤツがめちゃくちゃ厳しくて、○を付けてくれないんだ」

小テストの採点は、隣同士の生徒がする。

「わたしは20点だよ。隣の宮地君も20点だったよ!」

僕は、紙パックを握り潰し、

「明日、20点じゃなかったら、パスタおごってやる。グラッチェの」

真美は破顔して、

「ホント?じゃ、とし君が20点だったら?」

「オレ、負けないよ!こう言うの、マジで強いんだ」

「……期待してる」


翌日。

「神田、今日は何点だ?」

「……2点です」


ドゴッ!


グハッ!


「お前は、気がたるんどる。次っ竹川、何点だ?」

「……0点でした」


バキッ!


アベシッ!


いつまでも、馬鹿な生徒道を歩む神田と竹川であった。

その日の帰りに、1200円もするカルボナーラを真美は美味しそうに食べたのである。

因みに、僕は500円のクリームソーダで我慢した。

これが、大体の1学期の風景であった。

2学期が始まるまでは、まだ遠い日常に青春を謳歌するお年頃である。

僕と真美は、まだ危機感を感じていない。

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