第3話放課後

ここで、1学期のクラス編成時の事を書いておかねばなるまい。

3年3組は特進クラス。進学しか目指さない生徒で、尚且つ全クラスで文系20位、理系20位以内の成績を収めていないと進級されないデスマッチのようなテストを生き残った生徒の集まりである。

この特進クラスは2年生時から始まるが、僕は7点足りずに2年時に特進クラスに進級できなかった。

彼女の真美は理系トップだった。

この、偏差値落差が僕の心に火をつけた。

毎日、6時まで弓道部で腕を磨き、8時までに風呂と夕食を済ますと、3つの水槽のある自室でラジオを聴きながら、勉強した。

グラミー10匹と、リュウキン20匹を育て、たまに、水槽にエサを入れ、pHを測ったり、兎に角深夜2時までは呪文を唱えるが如く勉強を頑張った。

そのかいもあり、3年時やっと僕は彼女と同じ土俵に上がれたのだ。

僕は嬉しかったが、僕以上に喜んだのは真美だった。

「とし君、やっと、側に来てくれたね」

と、手にいちごミルクのジュースを渡すと、

「追い付くのに1年掛かったよ」

「でも、全体でとし君は7位、わたしは3位。まだまだ、わたしに勝てないね」

僕は悔しいが、紙パックにストローを刺し、チューチュー飲みながら、

「次の模試で勝負しようよ。勝った方が旨いもんを奢るって事で」

真美は笑顔で、

「かかってきなさい」

「やけに、居丈高だなぁ」


しばらく、2人がしゃべっていると、同じ3組の島村渡と犬飼なつきが、渡り廊下で繋がる向かいの棟の階段の踊り場で、イチャイチャしていた。

「ねぇねぇ、とし君、あの子ら何してるんだろ?見て見て~」

僕は、面白い事を思い付いた。

「真美、賭けようか。アイツらキスするか?しないか?」

「いいよ。しないに賭ける」

「じゃ、オレはする。勝ったら、帰りオレんち寄ってよ」

「何するの?」

「エッチ」

「……バカ」

と、彼女は軽く僕の頭を小突いた。


渡となつきは、階段の踊り場でキスをし始めた。

勝った!


あぁ~ヤってるアイツら。

僕たち2人は、人気のない放課後の教室から、じっと見つめていた。


「うわぁ~、僕たちAV見てんの?」

「……学校で大胆だね」

チラリと僕が真美の横顔を見ると、ちょっと頬が紅くなっていた。

そして、約束通り真美は僕んちに寄り、エッチをした。

部屋には、エロDVDが参考書の間に挟まっていた。

教科書はそれだった。

真美は身支度を整えると、僕にキスしてからバス停に向かった。

僕は、バスが来るまで一緒に待っていた。

こんな事が永遠と続くのであろうと思う、おめでたさであることから、将来の不安は皆無と言っていい程であった。この頃までは……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る