第13話 ゆっくりとした変化
城石高校。教室。
「楓、おはよー」
教室に入ると、雪が楓に挨拶をする。
何の偶然か。
三人は同じクラスだった。
「おはよう、雪」
「今日も白鳥くんと一緒なんだね」
雪は秋悟と楓を見るなり、眺めるようにそう言う。
「んー、そうだね」
雪の言葉に楓は記憶を遡るような顔をしてそう言った。
今日も――。
そう言われても一緒にいたいのだから、しょうがない。
「そう言う雪も普段は夏樹と一緒だよな」
秋悟は雪の言葉を否定することなく、ふとした顔で言った。
中学時代、夏樹と雪は常に一緒だった覚えがある。
高校は違えど、登下校は途中まで一緒なのだろうか。
雪と夏樹は、スワンで同じシフトだった時は、行きも帰りも一緒だった。
高校生になってから減った夏樹との時間が増えて良かった。
以前、雪がそう言っていた記憶が秋悟にはあった。
「そう?」
何食わぬ顔で雪は首を傾げた。
別に私たちは兄弟なのだから。
一緒にいても違和感は無いはずだ。
「・・・・・・休日とかはどうしてるんだ?」
最近の夏樹は自身の休日の話をしてこない。
昔はよく遊んだりしていたが、
俺も夏樹もスワンがあったりでほとんど遊ばなくなってしまった。
やがて、夏樹がスワンを離れれば、次第に会わなくなってしまうのだろうか。
「休みの日は・・・・・・二人で買い物とか行くかな」
「スーパーとか?」
「ううん。映画とか洋服買ったりとか」
思い出しているように雪は首を振るう。
「えー、良いなー。私も・・・・・・な」
想像しているのか、嬉しそうな顔で楓は秋悟を見つめた。
「えっ。うーん、今後な」
秋悟には楓のその顔が物欲しそうに見えて、咄嗟にそう答える。
「っ! うん」
秋悟の返事に楓は晴れた笑顔で強く頷いた。
「夏樹が映画に誘うのか?」
話を戻し、秋悟は不思議そうな顔で言う。
「ううん。私が寝ているお兄ちゃん起こして誘ってるよ」
何食わぬ顔で雪は答えた。
こんな顔をする雪を見るのは珍しい。
「・・・・・・それは誘っているに入るのか?」
解せない顔で秋悟は首を傾げた。
突然起こされる夏樹。
果たして、どんな起こされ方なのか。
それ次第であいつの苦労が大きく変わる。
夏樹の反応を想像し、秋悟は自然とため息をついた。
変わらぬ日常に少しずつ変化が訪れる。
ゆっくりと俺たちは変わっていく。
――スワンに関わることで。
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