第5話
「(シャロが付いてこない、何かあったのか?…いや)」
長狭仁衛は一度止まったが、再び歩き続ける。
「(シャロの事だ、俺の成長の為に一人で行かせた可能性があるな。…事前に教わった事を思い出してやれって事か…ええと)」
長狭仁衛は、シャロの式神である小太郎丸が付いて来るので、小太郎丸が口に咥えている携帯端末に顔を向ける。
「初見の人にもわかりやすく、今回は俺の術式を教えます。俺の術式は封緘術式と言います、畏霊と戦闘を行った際、瀕死の畏霊を封印し、調伏する事が可能です」
言いながら歩いていると、長狭仁衛の前に、畏霊が出現する。
この幽霊公園に出てくる幽霊は、這いずり回る幽霊が現れると言う話を聞いている。
ここは普通の公園とは違い、大自然豊かな運動場が備わった自然公園である。
大きな敷地である為に、よく人が迷いやすく、行方不明にもなった事がある。
「幽霊公園の畏霊ですね、あそこの、池方面を見て下さい」
犬の小太郎丸に命令をすると、池の方に携帯端末を向ける。
長狭仁衛はゆっくりと歩いていくと、池の中から手が出て来た。
「恐らくは、池で溺れて死んだ人間の、溺死に対する恐怖が畏霊となったものですね、行方不明の人間は、あの畏霊が原因なのでしょう」
池から出てくるのは、両手に、真っ黒な髪の毛が顔面に張り付いた畏霊だ。
下半身は、多くの手がひっついていた。その手は、長くて、池の中に沈み込んでいる。
「見た目から、名前を水百足とします。今回は、あちらの畏霊を討伐します」
長狭仁衛はそう断言した。
「(使えそうな畏霊だけど…でも、シャロは育成の強化用に使えって言ってたんだよな…)」
少なくとも、この畏霊には軽く見積もって七人ほどの行方不明者を出した。
その為、犠牲者の家族と言う背景があれば、その水百足を捕まえて調伏すると言うのは不謹慎に繋がるとシャロは言っていた。
なので、手駒にはせず、あくまでも討伐をする事で、不穏な声を潰すと考えていたらしい。
「えーっと…それじゃあ、始めます…来いよ、『
長狭仁衛の言葉に応じて、黄金色の毛並みを持った狐が召喚される。
「(他にも強い畏霊は居るけど…シャロがこいつが良いって言ってたしな…)」
視聴者受けが良いのは、『可愛い』か『格好良い』式神だ。
見た目的に嫌悪感を過らせる式神は、危機的状況である事以外、なるべく使用しない事。
同時に、その式神を一定の育成を終えるまで、他の式神を使用しない。
色々な式神が見たい視聴者も居るが、ファンを作る事も重要だと、シャロが言っていた為である。
「(燈狐は火を放つけど…弱いからな、だから、俺も戦闘に参加する)」
懐からナイフを取り出す。
護身用のナイフは、祓ヰ師が所持する護身用のものとは違い、戦闘用に作られた刃物であった。
「では、戦闘を開始します」
長狭仁衛は一度、自分用の携帯端末を懐に仕舞い、後は、撮影用の小太郎丸に託して戦闘を開始するのだった。
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