第3話

「じんちゃんの服って基本的に複数あるよね」


色々な動画を確認したシャロが、長狭仁衛の服装を見て言った。

シャツや学生服の姿と言うものが多く、統一性と言うものが無かった。


「配信者ってのは覚えて貰うのが大事なんだから、ボクみたいに配信用に同じ服を着てるし、なるべく印象に残る様な恰好にしないと」


「えぇ…服洗ってないのか、とか言われないか?」


長狭仁衛は別の部分を心配しながらそう言った。

当然、シャロは長狭仁衛の言葉に反感を覚えて握り拳で長狭仁衛の肩を叩いた。


「失礼なッ、ちゃんと洗ってるよっ!」


そう叫びながら、シャロは指を五本立てる。


「配信用の衣装は五着用意してるんだからっ、それに、衣服の統一をするメリットはそれ以外にも、希少性が生まれる事にあるんだよ」


シャロの言葉に長狭仁衛は首を傾げる。


「希少性?」


「例えば、ボクは定期的に朝配信とかしてて、その時も基本的に同じ服だけど、偶に時間が足りない体で何時もとは違う恰好で配信する。するといつもとは違う配信で視聴者さんたちは盛り上がるんだよ、希少性の利用の為に、衣服の統一はするべきなんだ」


時間が足りない体。

とはつまりは、ワザとしているのだろう。

計算高い親友であるなと、長狭仁衛は思っていた。


「そうか…でも統一する服かぁ」


「じんちゃん、あれあるでしょ、スカジャン。今後はあれを着込んで配信ね」


長狭仁衛の壁に懸けられた外出用の青色のスカジャンを指差して、シャロは言った。


「あー…夏の日は暑いよなあ、上着は」


「まだ春だから大丈夫っ、それに夏服用も用意すれば良いから」


段々とシャロによるコンセプトが固まって来た。


「それと、じんちゃんの配信って、方向性が決まってないよね」


「ん?あぁ、…でも、他の配信者とかは色んな事に手を出してるし、その中でも、動画は評価されてるし」


特に目の前に居るシャロは様々なジャンルの配信をしている。

その上でかなりの視聴数と高評価を獲得していた。


「じんちゃんは登録者数が少ないからね、色んなジャンルに手を出しても広く浅くなるだけだから、登録者数も伸び悩んでるんだよ、方向性を固めて、…ジャンルを絞った方が、コアなファンが増えて登録者数も増えると思うんだ…取り合えず、じんちゃんの再生数の中で、一番評価と視聴数が高いもの、そしてその動画の中で登録者数が増えたものを選んで…それにしようか」


シャロが動画から選ぶ。

その中で、特に評価、視聴数、登録者数が増加している配信を発見した。


「この『記録:12月11日、配信』って言うのが一番高いね、あとじんちゃん、人の興味を引く為にサムネを工夫したり、タイトルも変えた方が良いよ」


「サムネとか、作り方とか分からないんだよな」


「じゃあボクが発注しているサムネ職人を紹介してあげるよ…で、この動画の内容は…」


シャロは動画の中身を確認した。

そして、その動画に出てくる長狭仁衛が、畏霊と戦っている姿が確認出来る。


「ああ、それはクリスマス前に発生した畏霊だな、強かったから調伏したんだ」


「ふぅん…じんちゃんの術式、封緘術式だっけ…確か、畏霊同士を喰らい合わせる事で強化も出来る奴…」


考えるシャロ。

そして指を鳴らして長狭仁衛の方に顔を向けると。


「じんちゃん、決まり。今後の方針は、畏霊の育成配信だよっ」


「育成配信?」


長狭仁衛は首を傾げてシャロに聞くのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る