洞窟遊園地

遊園地を見つけたのは、山中の茂みの奥深くの洞窟の中だった。

洞窟には、ジェットコースター、メリーゴーランド、観覧車など、聞いたことのあるアトラクションが揃っていた。

「洞窟遊園地にようこそ。今日は楽しんでいってね」

ひらりひらりと精霊が優雅に舞い降りてきて、僕にそう言った。

初めてのジェットコースターは、口の中で山で熊から逃げた時のように興奮した。

初めてのジュースは、腰に下げていたひょうたん水筒いっぱいに詰めてもらった。

初めてのイルミネーションは、煌びやかで、山から見える星空よりも刺激的だった。

どれも一生でもう体験できないだろう、素晴らしく優雅なものなだろう。


「あれは隣のウロ太郎兄ちゃんじゃないか」

パレードの列に見知った顔があった。

最近、山仕事から帰ってくるのが遅いとおばさんがぼやいていたが、こんなところに出入りしていたのか!

何やらめかしこんでいる一方で、表情には笑顔が張り付いているように見える。

「彼には踊り子をやってもらっているの。動きがしなやかで美しいからピッタリでしょう?」

ぼくは気がついた。遊園地を楽しんだ子供は、遊園地の住人にさせられるのだ。

「ああ、なんて優雅」

精霊は続けた。

「君も優雅になりたいでしょう?」


ぼくはウロ兄を抱えて洞窟から逃げる。ウロ兄は気持ち悪い笑顔のまま、正気に戻らない。

ひょうたんからジュースをかぶせても戻らない。ええい、奥の手だ。

プスという音と共にウロ兄は我に帰った。屁だ。ぼくの屁は村でも評判の威力なのだ。

「くらえ!」

精霊にもお見舞いしてやった。すると、どうだろう。遊園地の輪郭がぼやけて、陽炎のように消えかけてきた。

「なんと下品な…こんなのは優雅では…ぼえっ」

精霊が倒れている隙にぼくたちは洞窟から抜け出した。

外の光を浴びながら振り返ると、そこにはもう何もなかった。

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