始まりはいつも雨1-1
始まりはいつも雨
1
物事の始まりを、いつも晴天で迎えられるとは限らない。
曇天、雨天、雷、嵐。
俺の運命が動き出すのはいつだって、灰色で濁った空。
厚い雲に覆われ、太陽を一目見ることさえ難しい。
晴れやかな空の下、清々しい気持ちで一歩を踏み出すことが出来ればどれだけ良いか。
そう、願わずにはいられない。
たとえもう、二度と叶わない願いだとしても。
「俺がいるからだ。俺のせいで、たくさんの人を巻き込んだ。もう放っておいてくれ。俺なんかにもう構うな」
そう宣言し、部屋に籠って早いもので、もう二ヶ月弱が経つ。
今日もまた夢を見る。
見たくもない、思い出したくもない過去の夢を。
俺を断罪する彼らを。
「お前のせいだ。お前が皆を殺すんだ」
夢の中の人物は皆、こぞって俺をそう非難する。
滝に打たれたかのようにサッと血の気が引く。
突きつけられる事実に返す言葉も無い。
それでも、夢の中でさえ会えるのなら、何を言われても耐えられる。
今日もまた会いに来てくれ。
血にまみれ、憎悪を宿した瞳で、俺の心に楔を打ち込んでくれ。
どんなお前たちでも受け入れる。
それが、残された俺に出来る唯一の償いの形だ。
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