第2話 とりあえずダイブ
「はあ!つっかれた~」
家に入ってすぐにリビングのソファにダイブする。
そうまの能力を見せてもらった後、とりあえず私は自分の家に戻ることにした。
やっぱりまずは冷静に考える時間が欲しい。
私の家は、そうまの家のお向かいさんの隣、つまり斜め前に位置している。私が7歳の頃にここに越してきたが、その時には既に萩野一家は今の家に住んでいた。かれこれ10年近く今の家に住んでいるわけだから、お互いにとって家は一番落ち着く場所である。
「おい姉貴、ソファを占領するな」
「ゆうた。ちょっとだけ横になりたい~」
「どいたどいた。買ってきたアイスやんねえぞ?」
「アイスあるの!?何アイス?」
「ストロベリー」
「最高!やるわねゆうた!」
「当たり前だろ。ほら、とってくるから俺の座る場所あけとけ」
そういって冷蔵庫からアイスを取り出すのは、私と二歳差の弟、片倉ゆうただ。
どうやら部活帰りに家族の分のアイスを買ってきてくれたらしい。最近、前と比べて優しくなった気がする。もしや…あいつ彼女でもできたか?
「おかえり、さな。今日もそうま君の家行ってたの?」
「お母さん。そうだよ、ただいま~」
エプロン姿でキッチンから顔をのぞかせるのは片倉家のお母さんである。キッチンからは生姜焼きの香ばしい香りが漂ってきている。
「まーたそうま君にタダで漫画読ませてもらってたんだろ」
「そうだけど?ゆうたも今度来れば?」
「俺はサッカー部があるからな。漫画を読む時間はないんだよ~」
「さな。最近ちゃんと部活行ってるの?しっかり練習しないとついていけなくなるわよ」
「は~い。明日は出まーす」
「もう…。そうまくんは元気にしてるの?」
「うん。いつも通りだよ。そうだ、聞いてよお母さん!そうまがね…」
ん?もしかして言わない方がいいのかも…??
「なぁに?そうま君がどうしたの?」
「う、ううん、やっぱり何でもない」
危なかった。危うくそうまの秘密を口外してしまうところだった。もしうっかり言ってしまったら、直ぐに噂が広まってそうまは居場所を失ってしまうかもしれない。何がどうかるのか分からないから、私もしっかりしなきゃ!
…ーーーーー…ーーーーー…ーーーーー…ーーーーー
「ふぅーさっぱりした♪」
夕飯も終え、たった今お風呂から上がると、気がつけば時刻は21:00を回っていた。
「今日は色んな事があったからちょっとだけ疲れたな~」
フワァ~と大きなあくびをしていると、ピロんっとスマホの通知が鳴る。
「そうまからだ。今日のことは絶対に誰にも言わないこと!約束な!…だって。勿論誰にも言えないわよ…。了解!お休みっと」
いろいろ考えたけど、やっぱり答えは変わらない。
そうまが吸血鬼でもきっと今まで通りだし、少しも怖くない。私の場合は…だけど。そうまがどういう経緯で現在の状況になってしまったのかはまだ分からないけれど、本人は絶対に困惑しているし、きっと不安で怖いはずで、誰かの支えを必要としているだろう。
そしてその支えに私を選んでくれたんだ。
選ばれたからにはそうまと真剣に向き合って、必ず心の支えになってやるんだ!
幼なじみがまさかの吸血鬼だったなんて まっちゃ @hot_latte
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