第一部の登場人物(ネタバレあり)とあらすじ

第一部のネタバレを大量に含みます。未読の方はご注意ください!

















〈人物紹介〉

・シエル(本名アリシエル・ドゥ・ノーランディア)

主人公兼ヒロイン。十六歳。女。罪状:なし。

ノーランディア王国第一王女だが、身分と性別、名前を偽ってヴァイマリアードに単身赴いた。少年「シエル」として劇団「月部屋」で働いている。好物はドーナツ。

健気な努力家で、ズィヤード曰く「控えめだが人に寄り添うタイプ」。

子供っぽいことがコンプレックスで、大人っぽいアドラに憧れている。

王宮にいた頃は父親の良いように使われて、従者たちに嫌われないように金で機嫌を取る臆病な少女だった。

「いい人=優しい人、お金を渡さなくても私と仲良くしてくれる人」と信じていたが、バンの裏切りによってその認識が間違っていたと分かった。


・アドラ(本名ラヴィ)

二十代前半。男。罪状:詐欺、窃盗。

月部屋の座長兼女優。自他ともに認める美人。中性的な容姿を生かして、女性の役を演じることが多い。ヴァイマリアードの顔役でもある。

正義感が強く、困っている人は放っておけない。そのためシエルを月部屋にスカウトした。

親友のズィヤードに友情以上の感情を抱いている。

実は四歳年上の姉がおり、彼女の名前が「アドラ」。姉の死後、「ラヴィ」の名を捨てて「アドラ」を継いだ。それ以降容姿から言動まで、すべて姉を演じて生きている。

六年前にある大犯罪を起こした。どうやらバンと因縁があるらしい……。


・ズィー(本名ズィヤード)

二十代半ば。男。罪状:不明。

アドラの護衛。月部屋一の武闘派。人間離れした身体能力と体術を用いて、大体の敵は一撃で吹き飛ばす。

物静かで自分のことをあまり語らない。何を考えているかわからない、とよく言われる。本人曰く「何を選べば正しいかわからない」ので、いつもアドラの命令に従っている。

ヒュッレムから「砂漠の民」と呼ばれたり、人を殺すことにためらいがなかったり、バンに毒殺されたはずだがなぜか生きていたりと、謎が多い。


・バン(本名バン・オブ・アンジュー)

二十代後半。男。罪状:なし。

月部屋の頭脳担当。四角いフレームのメガネが特徴的な、理知的な紳士。シエルの直属の上司でもある。

穏やかでいつもにこにこしているが、時たま毒を吐く。

元は大貴族だったが、ある事件をきっかけにして家が没落した。「お父様」に拾われて、以後ノーランディア王国騎士団の特殊部隊「空冷」の一員として働いている。主な仕事は月部屋での諜報活動。

妹のリサの死をきっかけに月部屋を裏切り、シエルの回収を試みたり、アドラを捕らえたりした。


・シエル親衛隊

ニェン、バーバラ、カザハナ、の三人組。シエルが大好き。三人で孤児院を営んでいる。


・カーネリアン

シエルの親友で乳母子。高潔で勇敢な騎士の鑑のような人だったが、一五歳で戦死した。


・ヒュッレム

子供を誘拐しようとした褐色肌の女性。ズィヤードと互角に戦っていたものの、「お父様」によって毒殺される。


・元闇医者(本名アッシュ)

月部屋のボーイ。月部屋唯一の医者であるため、激務でなかなか眠れない。

バンの裏切りに加担しているようだ。


・女神

髪色と髪型以外アドラとそっくりな容姿を持つ謎の人物。天才キス魔。対価を支払えば何でも奇跡を起こしてくれるそうだが、目的は不明である。

バンの裏切りや空冷の存在を知っており、最も真実に近い存在だが、今のところ語るつもりはないようだ。


・お父様

本名不明。加工された声で子供たちに指示を出す。自分の思い通りに動かない子供は容赦なく切り捨てる、非人道的な男。バン曰く「機嫌を損ねたら毒殺されるか文字通り首が飛ぶかの二択」。


〈あらすじ〉

22世紀。温暖化の影響で貴族は残された涼しい土地を巡って他国と争い、庶民は地下へ避難した世界。

ノーランディア王国の第一王女であるアリシエルは、親友の死をきっかけに、身分と性別に加え、名前を「シエル」と偽って地下最下層の街「ヴァイマリアード」に向かう。しかし、ここは更生不可能と判断された大犯罪者たちが住まう街。シエルは暴漢に襲われそうになるが、運よく「アドラ」と「ズィヤード」に助けられるのだった。


アドラたちに「自分は記憶喪失だ」と嘘をついたシエルは、記憶が戻るまでアドラたちが所属している、男性のみで構成された劇団「月部屋」で男装して働くことになる。だが、月部屋では従業員が消えるという奇妙な事件が起きていた。


シエルが月部屋に入団して二か月後。ヴァイマリアードに騎士団の徴税部隊がやってくる。騎士団と月部屋には因縁があるようだったが、それと同時にシエルは、騎士団が自分を探してることを知った。シエルは消えた従業員たちを探しつつ、自分がうっかり落としてしまった王家の鍵を探すことにした。


月部屋のみんなと交流を深めながら、従業員を探すシエルはある日、何者かに襲われている子供を庇う。シエル自身も窮地に陥るが、ズィヤードが助けてくれた。しかし、ズィヤードと交戦していた誘拐犯は「お父様」と呼ばれる謎の人物に毒殺されてしまう。月部屋一門は毒がどこから来たものなのかを調べてもらうため、女神と呼ばれる天才の元へ向かった。


女神はシエルにゲームを持ち掛けた。ゲームに勝ったシエルは毒の正体こそ知れなかったものの、仲間に裏切者がいることを知った。一方、バンはその夜お父様から妹の死を知らされ、月部屋を解体するように命じられた。


些細な誤解がきっかけでアドラとズィヤードの秘密を知ったシエル。シエルとアドラの間には、友情を超えた義兄妹の絆が芽生えた。しかし、二人は突如騎士団に襲われてしまう。月部屋まで逃げたものの、そこには月部屋一門を従えたバンの姿が。バンはアドラを撃ち、彼を捕らえる。アドラは最後の力を振り絞り、ズィヤードに放心状態のシエルを託したのだった。

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