第一部

第2話 目を覚ますと小説の中だった

ピピピ、、、ピピピ、、、


頭の上で携帯のアラームが鳴っている。

どうやら寝てしまっていたらしい。

俺は目を覚まして起き上がる。


「あれいつのまにベッドに、、、。」


周囲を見回す。


見慣れない部屋だ。ここは一体何処だろう。


疑問符ばかりが浮かぶ中、階下から声が聞こえてきた。


「颯!いつまで寝てるの!今日秋也君と会うんでしょ!?遅刻するよ!」


女性の声?いや待て颯と秋也だと!?


まさかと思い階段を駆け下り、洗面台の鏡で自分の顔を確認する。


そこにいたのは自分の小説のキャラである白銀颯(しろがねはやて)だった。

それを自覚した瞬間、白銀颯の人格と人生が頭の中に流れ込んでくる。

それが自分の人格と混ざり合い、俺は酷い頭痛を覚えた。

頭の中に大量に情報を流し込まれてふらつきながら鏡に手をつく。

間違いない。これはテンプレといえる異世界召喚の様なものだ。

そして俺が入り込んだのは自分が書いた作品の中。

つまり今後の展開がわかっている世界だ。

だが今の不思議な現象のせいで、細部の情報は朧げになってしまった。

一先ず流し込まれた情報からわかったことは3つ。


1.今日は秋也と遊びに行く約束をしている。

2.今が春休みであること。

3.この日にヒロインとの出会いがある事。


3に関してはこのイベントを自分で書いた記憶があったからだ。

であれば問題なくイベントを起こす為に、ダラダラとする時間はない。


俺は準備を済ませると、重い頭を振ってリビングへと向かうのだった。

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