あのまばたきの意味

紫陽花の花びら

第1話

 優弥へ

 元気か? 今時手紙を書いている俺って何だ。書きたい訳ではないが、ライン入れても既読無視。電話しても出ないとなれば残る手段はこれだ。

 お前が帰って来なくなって三年過ぎた。あの頃は判り合えていたのに、今のお前は、一体何を考えているんだ。都会を楽しみ尽くしている? それとも仕事が辛すぎて、心病んでしまっているのか。本当に心配為なんだ。お前親にも連絡してないんだな。おじさん物凄く悲しんでたよ。

なあどうしたんだよ。あんなに優しかったお前がさ。せめて親には連絡しろよ。        

           正樹


正樹へ

 手紙なんて古めかし過ぎるし、相変わらず汚い字で読めないし。俺ってそんな心配されてるのか? 

それって嬉しいな。

美容師の仕事は楽しいよ。この仕事は好きだから辛いとは思わないけど。お前とやり取りしていると……里心がつくんだよ。逢いたくなって気持ちが不安定になる。なんてお前には話したら、自分責めるだろう? いつも自分が悪かったって謝るだろう。俺それが嫌なんだ。そんなお前に心配かけたくなかった。だから無視したんだ。家にはたまだけど、連絡しているのに、親父呆けたかな。そうそう今年の暮れは帰るよ。後、あれ解読出来たかな。あっ! 俺はあと一年で田舎暮らしに戻ります。何かとよろしくね。     優弥    


優弥へ

返事来たぁ。驚いたぞ! 生きていたのか? 幽霊かと思って心臓が止まったわ。馬鹿たれ! 

はいはい読めないって言いながら、しっかり内容把握為てくれていて有難うね。 

それよりは! 本当に戻ってくるのか。こっちで仕事するのか。

噓はやめろよ! こんな大事な事を最後にチョロって信じらんないわ。判ってるって。おじさんに言わないから。お前の口からが筋だ。然し秋山たち喜ぶぞ! 暮れに帰ってきたら飲もうな。今から楽しみだよ。なんの解読? 覚えてません!      正樹


正樹へ

 忘れたなら良いんだ。

それより三十日の昼過ぎに着くよ。本当迎えに来てくれるの? 当てにしてます。    優弥


「お帰り。荷物」

「じゃあこれ頼むわ」

俺たちの秘密基地に向かう。 

確認なか入らない。


「変わらないね」

「時々掃除してる」

優弥は俺を見つめ徐に瞬きをする。

「あの日と同じだけど判った?」

あの時の、あのまばたきの意味を聞いてきた。

「瞬き信号なんて狡いぞ」

俺は握りしめていた紙切れを広げた。

「正樹-------為ている優弥」

「正樹愛している優弥。書くのもハズいわ」

「答えはどう返してく……」

俺は優弥を引き寄せ呟く。

「ずっと昔から愛していた」



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