第4話 10月27日 火曜日

 学校。

 賢治はバイトが続いたせいで、今日は家で寝ている。

 小嶋さんは、やっぱり学校では元気で、仲の良い女友達とバカ話で盛り上がっている。

 授業が始まる前、ふと小嶋さんが俺の所へ来た。

 秋らしい落ち着いた色のスカートとブーツ。恰好は女の子らしいんだけどな……。まあ長袖のおかげで手首は隠せるのか……。

「おはようカズくん!」

「カズくん?」

 今までは浅井くん、だ。

「賢治がね、そう呼んでやれって」

 阿呆どもめ。

 そう呼ばせようとする賢治も賢治だが、それで呼ぶ小嶋さんも小嶋さんだ。

「いや、浅井で良いよ。小嶋さん」

 急に呼び名が親しくなったら、明らかに変だろ。クラスメートにどんな風に見られても俺は構わないが、小嶋さんに迷惑がかかるのは困る。

「なんだよ、遠慮するなよ~。私のことは亜希ちゃんで良いよ」

 俺の肩をポンポン叩いて笑いながら言う。

 学校の姿だけを見ると、やはり三日前のことが信じられない。

 授業開始のベルが鳴った。

「ほれ授業始まるぞ、小嶋さん」

「む~、亜希ちゃんって言わないと戻らない」

 何が何でも言わせたいらしい。子供め。

「季節は秋、ちゃんとメシ食ってるか? 食欲の秋だぞ。ほれ席に戻れ」

 こうなったら意地でも言わない。俺も子供だな……。

「可愛くないな~。まあカズくんらしいか」

 そう言って小嶋さんは渋々席に戻った。

 全く……。心配するのがアホらしくなるな……。

 亜希ちゃん……か。

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