第5話 僕様は自称魔法使い
学校による教育があるのは人間に限った話ではないし、夏休みには宿題がどっさり出されるのも、人間に限った話ではない。
ケヴィンも、宿題の山に
彼の自室の
それもそのはずで、ケヴィンはその
歳のわりにほんの子供のような身体や、人々が見れば目を
つまり、とても
彼は妖精王の
学校の宿題のみならず
とはいえ、
だから、この
「
ケヴィンはそう
この地を選んだ理由に特別なものはない。どこか遠くへと考えた時に、地図の一番
おあつらえ向きの古い洋館が長年空き家になっているのを見つけ、すこしばかり──いや、かなり、
夏の間だけとはいえ、ご近所にヒソヒソと
ケヴィンには、それだけのことをやってのける魔法の力があった。
「休暇とはいえ、知見を広めるため……
「当然、承知しているさ。ちゃんと問題集もやるし、
「人間観察レポートの観察対象は、この国の人間から
「それが、日本に来る条件だからな。近所から適当に
──そうだな。屋敷までの地図をいくつかの場所に
ケヴィンの指示で、ケットは様々な場所に地図を隠しに出かけた。
彼が黒猫の
そのうちの一つ、ある小学校の図書室に隠した地図を持って、小学生の男子が一番はじめに屋敷に
「おお! さっそく人間が来たぞ!」
二階の
魔法使いっぽい衣装を選んだのは、観察対象に妖精とバレてはいけないからだ。正体が知られてしまうと、
日本ではどうかわからないが、
だからといって魔法使いを
この地では妖精は
「僕様はケヴィン、魔法使いだ!」
一番初めにたずねてきた男の子を
「ええっと、ぼくは何から質問したらいいのか……。いろいろ聞きたいことや言いたいことはあるんだけど……」
「僕様が名乗ったのだ。君もまずは名乗るのが
「……ユウヤ」
「そうか。ユウヤ! なあ、この格好はどうだ? 映画を参考に、かの有名な魔法学校の制服を着てみたんだぞ? どこから見ても魔法使いだろう?」
「ああ、どこかで見たことがある服装だって気がしたのは、そういうこと……」
「ユウヤ、君が来てくれて嬉うれしいよ。さあ、お茶にしよう。ゆっくりと語らおうじゃないか」
そうして
まんまと“妖精の食べ物”を食べれば、このユウヤと名乗った男の子はケヴィンの手の内だ。
お
観察対象としてもちょうどよく、すべては
ユウヤが
「どうでした? 彼は」
「とても好感が持てた。仲良くなれそうだ」
「では、まだ一人目ですが、本当に彼で決まりですか?」
「そうだな。ちょっと
ケヴィンは大きめの羊皮紙を机の上に広げた。
そこに、ユウヤが使ったティーカップ、すこしばかり飲み残した紅茶が残るそれを、
カップの中身がポタポタとたれ、そのシミは
しばらくすると紙全体がびっしりと、細かい、細かい文字で
ケヴィンは文字で
「なあ……ケット。ちょっと……文字が大きすぎるというか……。あのくらいの歳にしては明らかに、余白が少なすぎやしないか?」
「そうですね。たったこれだけの余白では、この先何十年とあるだろう未来を書ききれないでしょう。このような例の場合は……」
「近々、生命が終わるということになってしまう」
ケヴィンは、羊皮紙に書き
とはいえ、とても個人的なものだ。本人が無意識にでも
「近々どころじゃない! エピローグまで
ケヴィンは、はぁ、と同情を
紙には、要約すれば、八月の始めの花火大会で暴発事故が起こり、ユウヤもそれに
打ち上げ
(なんという
「坊ちゃん? 未来を知ってそれを曲げようとするのは、
「言われるまでもなく、わかっているよ。
──が、しかしなぁ。知ってしまったものを
「過干渉する気、満々ですね」
「宿題の論文には
──ただ……ユウヤの他にもたくさんの犠牲者が出ているのが問題だ。
例えば、雨を
「ユウヤさんだけを救うことは?」
「現地に行かせないという
「干渉がすぎれば、
「叱られるで
ケヴィンは、
「観察対象はユウヤで決まりでいいだろう。先のことは置いといて、ひとまずは
知ってしまった未来とどう向き合うのか。彼の決断は、運命の日に明らかになるだろう。
ケヴィンは机に向かうと新しい紙を広げて、ペン先をインク
end?
【連作短編】自称魔法使いと怪しい洋館 冲田 @okida
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます