第118話 聖女
それから12日後、俺達は神聖国へ辿り着いた
道中何事もなく済んだ、というわけではなく
魔物だったり盗賊などが襲って来たのだが、相手が悪い…
俺やゼシアが一瞬で片付けてしまった、危険なんかあるわけ無いのだ
「うわ〜街並みは綺麗ね!」
「神官服を着ている人が多いですね、流石は宗教国家」
「あれは恐らく見習いでしょう…露天も結構並んでいますね」
3人とも思い思いに感想を話している
……綺麗、ね…
ふと、路地が目に入る、ボロボロの服、痩せて細い手足…こんなのは何処にでもある事、王国ですらある事なんだ…
「ま、自国ですら無いここではやれる事はないかな…」
拳を握る手に力が入る…よせ、余計な事は考えるな、俺には立場がある、父上にも言われたじゃないか
「もうすぐ到着ですね、見えて来ましたよこの国の大聖堂が」
大聖堂、この国を治める教皇がいる場所となれば最早、城だな
今回は聖女に呼ばれたわけだが…謝罪もしなければならないので教皇にも会う必要があるだろう
……うぅ、胃が痛くなりそうだ
「アーク様、ご到着しましたよ」
「あぁ、ありがとう」
御者の言葉と同時に馬車が止まる、窓から見える光景に俺は襟を正して気合いを入れ直す、3人も顔を強張らせて、緊張しているな
馬車から降りる、続けて彼女達も降りる、もう一台の馬車からもカリン達が降りて来る、やはり表情が硬い、フェリが走り寄って来てので撫でる
「お待ちしておりました、アークライド・ルグウィン様…それとご一行様方、私はこの国で聖女の名を賜っております、ジャンヌ・アトランテと申します」
まさか聖女本人が出迎えとは、それに並び立つ白銀の甲冑に身を纏う騎士…聖騎士か、一個師団程の人数が控えている…牽制、威圧のつもりなのか?それとも純粋に彼女の護衛なのか
「お初にお目に掛かります、アストラル魔法国、ルグウィン公爵家嫡男、アークライド・ルグウィンと申します、この度は我が国の不始末、申し訳なく…」
「ふふ、堅苦しい挨拶は後程、まずはお部屋にご案内致します、どうぞ、此方へ」
「…では、お言葉に甘えて」
んー何を考えているのやら…
大聖堂内へと入り、割り振られた部屋へとそれぞれ案内された
「こちらのお部屋にはアークライド様が、その左右隣のお部屋と正面のお部屋に婚約者様方がお使いください」
「お気遣いありがとうございます、ジャンヌ様」
「ふふ、長旅ご苦労様です、それと…アンゼリカ様、お久しぶりですね」
「はい、何年振りでしょうか、お元気そうで何よりです」
2人は会った事があるみたいだ、この国には来た事があると言っていたしな
そう思っていると、ジャンヌが侍女に目配せをすると部屋から出て行った
俺に近づいて声を落として話しかけて来た
「アークライド様、防音の結界などは張れますか?」
おっと、何やら不穏な気配が…ゼシアも寄って来る
「私、出来るよ…………張ったよ」
彼女がそう言うとジャンヌがベッドへと座り込む、雰囲気がガラリと変わった
「ふー漸く、自由に喋れるわ…ごめんね?態々来てもらってしまって、どうしても貴方達と話がしたかったのよ、何よりも貴方、勇者シュウ様?」
ニヤリと笑う彼女は聖女というよりもイタズラ好きな無邪気な子供の様な笑みだった
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