第114話 敗北


「そう言えば、アーク…貴方、神聖国へ行くのよね?聖女に会いに…」


アメリアがジト目でこちらを見てくる…


「好きで行くんじゃないぞ?バカの尻拭いだ」


「申し訳ありません、アメリア様…ウチのバカが…」


「あ、いいのよ、マリアベル様は何も悪くないのだから」


マリィが申し訳なさそうにしたのを見たアメリアは慌てる


「神聖国…ですか」


アンが何やら考え込んでいる…何かあるのだろうか?


「それにしてもアークに何の用があるのかしら、聖女様は」


「そうですよね、アーク様は会ったこともないのでしょう?何も起こらなければいいのですが…」


「そう言う…事を…言うと…本当に…起こる…です」


「多分、神託関連じゃないかっておじさんは言ってたなぁ」


「アーク様、私も着いて行ってはいけませんか?」


「え?いや、まぁ俺は構わないけど、観光しに行くんじゃないぞ?謝罪をしに行くんだ、もしかしたら嫌な思いをするかもしれないぞ?」


「大丈夫ですよ…きっと」


「?アンがいいならおじさんに話を通しておくよ」


「「私も…「貴方達は授業があるでしょう?」………はい」」


シャルにピシャリと止められたアメリアとアルは萎れていく…


「なら、暫くは2人で研究だな」


「そうだね、私、風属性で思いついたことがあるんだけど…」


何やらあちらは盛り上がってるなぁ…あの2人、実際にはどうなのだろう…今度それとなくヴァニタスに聞いてみるか


「アン!ずるいわよ〜」


「えへへ、お土産、買って来ますから」


だから、観光じゃないって…


お茶会らお開きとなり各自部屋へと帰っていく、俺も自室に戻り少し勉強をしていた、最近慌しかったのであまり授業にも出られなかったので、ヴァニタスにノートを借りて復習中だ


「ふんふん、これなら問題なさそうだな…相変わらず学力は低いなこの世界…歴史を覚える事や魔法の研究は別として…数学もまだ算数レベルだしな…」


暫く集中していると、扉をノックする音が聞こえた誰か尋ねてきたようだ


「はい、今開けます…っと、有希とゼシアか」


「こんばんは、お兄ちゃん」


「ヤッホー、遊びに来たよ〜」


「よく来たな、どうぞ、お菓子あるぞ」


2人を部屋に招く、ふと、気がつく…


「2人共認識阻害の魔法を掛けてるのか?」


「やっぱり、アークにはわかっちゃうか、まぁ、一応ね、私達は教師!いくら婚約してても外聞は良くないでしょ?その対策よ」


意外としっかりしているな、ゼシアは…そう言えば授業でも分かりやすくて人気があるってシャルが言ってたな、まぁ彼女の性格からしたら親しみやすいのだろう、別の人気もありそうだがな…


「また、そんなに着崩して…外聞を気にするなら身だしなみもきちんとしろよ」


「えーサキュバスにとってはこれは普通よ?寧ろ抑え気味なんだから」


「まぁまぁ、ゼシアちゃん…確かにゼシアちゃんの格好は思春期の子達には刺激が強いと思うよ」


それとなく有希もこちらの援護にまわってくれた


「ぶーぶーユキはアークの味方なんだ…」


「あ…お、お兄ちゃん、ゼシアちゃんも授業ではキチンとしてるし少しくらい大目に見て…くれない…ですか?」


シュンとしたゼシアを見た有希が手のひら返してきた…


「おい、ゼシア…ずるいぞ、有希の優しさにつけ込みやがって……俺はゼシアがあまり注目されるのが気に入らないだけだ…」


そう言ったら、バッ!と顔を上げたゼシア、その表情は目を見開き驚いた様子だった


「嫉妬?」


「うっ!」


「へぇ〜ふ〜んそぉなぁんだぁ〜」


すっげぇニヤニヤしてる…くそ、言うんじゃなかった


「分かったよ、嫉妬深い婚約者の為に我慢してあげる」


ムカつく…なんだその勝ち誇った顔は…って、なんで有希がむくれてるんだよ


「むぅ…ゼシアちゃん…ずるい…」


「「可愛い…」」


俺とゼシアは敗北した

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