第101話 姉と兄と妹


アストレア魔法国第一王女スカーレット・アストラル


彼女を一言で表すと戦闘狂である…


「あの人は…未だにそんな事を…」


「いつかは落ち着くと思ったいましたが…最早、諦めかけています…」


小さい頃から、よく騎士団、魔法師団に顔を出しては訓練と称して暴れ回っていた…しかも、格上の父上や母上には喜んで挑んでいき、負けてるのにめちゃくちゃ嬉しそうに地に伏してしているのを見た事が何度もある…


「陛下はなんと?」


「勿論、激怒していますが…あの人も魔法狂なので強くは言えず、お母様が説得しております」


「はぁ、で、その事を知ったあの人が調子に乗っていると」


「身内の恥ですがその通りです…」


マリィの兄、この国の第一王子…この方は…なんと言うか…優秀ではあるんだけど、なんと言うか…


「あの軽薄な態度さえ改めればお父様も素直に認めると言うのに…それを理解しないのです」


そう、第一王子サリュバート・アストレアは軽いのだ…前世で言うとチャラが可愛く見えるレベルで軽い…放つ言葉は空気のようで、内容がない…側から見たら…その、アホなんだけど…優秀なんだよ…学園も主席で卒業してるし、おじさんの公務も幾多か振られても難なくこなす…なのに言動というか王族としての心構えというか…色々足らなさすぎる…なので、おじさんも素直に王太子に出来ないのだ


「でも、あの人がそうなのは昔からじゃないか、それで、なんで俺が王位に?」


「……このままでは私が王位に就かなければならなくなりそうだからです…」


「え?まさか…」


「えぇ、あのバカ兄がやらかしたのです…それも相当な事を…」


な、なんだって…


「お、おじさんがあの人に外交を任せたのか!?」


「いえ、独断専行、兄が個人で他国と交渉して大失態をしました」


「…ど、どこの国で何をしたの?」


「はぁ、神聖国です…」


う、嘘だろ!?神聖国!?あの人…あのアホは本当に何やってるんだよ!

神聖国は国力こそ王国や帝国には及ばないが…この世界では有数の宗教国家だ…国王は教祖で、信仰している神は、えーと…ル、ルミネーザ?だったかな…?ヤバいな…勉強しないと…

いや、そんな事じゃなくて

あの宗教は世界中に信徒がいて、この国にも教会がいくつもある、信徒も相当な数いる…そんな国を怒らすなんて…


「で?何をしたんだ?」


「聖女様を口説きました…それも、かなり悪質に」


「ホントに何やってんだよぉーー!!!!」


交渉ですらないじゃん!


「ふふふ、私も聞いた時は叫びましたわ…お父様もお母様もです…」


マリィが枯れた笑いを浮かべている


「…………もう、廃嫡しない?」


「アーク、その意見には同意しますが、口を慎んでください…同意しますが」


2回言った…本気で考えてそう…


「それで、その事が教祖様に知られて、激怒、我が国の教会から全ての信徒を引き上げさせると言っております…流石に実行はしないと…思いたいですが…今の聖女様は教祖様の娘なので…溺愛していると噂ですし…正式に神聖国から苦情の信書が届いています」


「最悪じゃん…」


「えぇ、もうホントに…と、言うわけで兄にはもう王位は絶望的です…本人は自覚ありませんけど、そして、姉は旅立ちそう…継承権が私にまで降りてきそうなのです」


「…あードンマイ?」


「いや、無理です…私が王位なんて無理に決まってます!そんなつもりも有りませんでしたし、それなら、もうアークに継いでもらった方が国の為です!」


「………あの、マリィ、俺さ…今、帝国の帝位を継がないかって話があるんだよ」


「はぇ?………………えぇぇぇぇええ!!!!!!」


今度はマリィの叫びが響いた

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