第89話 感謝


「う………ここ…は?」


目を覚ますとお城の私の部屋だ…私…どうしたんだっけ?…確か、魔王さん達と魔界の……魔力!!


私は体を急いで起こす…かなり気怠さがある…そうだ…あの時、あのまま気を失って…


「あれから、どうなったの?…魔王さん、ハングさんは!?魔界は!?」


「失礼します……!!ユキ様!目が…い、今医師を呼びますから!」


部屋に入ってきたの…多分メイド…なんだろう…うん…あの人…ハーピィだよね?本当に手が翼だった…よくあれでドアノブ持てるな…


「ユキ様!?目が覚めたと…!はぁ〜よかったぁ」


次に飛び込んできたのはハングさん、私を見て安心したのか座り込んじゃった…


「ご、ご心配をおかけしました…はは…」


「ユキ君が目覚めたと聞いたが!?」


魔王さんまで来ちゃった…


「どうだね!?体調は!?何処か痛んだり苦しい所はないかい!?」


「だ、大丈夫です…あの、あれからどうなったんですか?」


「そこまで…」


更に増えた……うっ!……下半身が蜘蛛…って事はアラクネ……あ、上半身は凄い美人…白衣着てるしお医者さんかな?


「魔王様、宰相様、彼女は私の患者ですよ?入室もまだ許可した覚えはありません…出て行ってもらえますか?」


ここここ怖い……美人って怒ると迫力あるなぁ…2人もタジタジだ…


「むぅ…す、すまない…ルーセルス…ユキ君を頼むよ」


「も、申し訳ありません、ルーセルス殿、ユキ様も騒がしくしてしまって…失礼します」


すごすごと2人は出て行ってしまった


「全く、この国のトップ2人がまるで父親の様だな…ん?なんだい?」


「あ、いや…えっと…初めまして、有希です」


「あぁ、そういや自己紹介がまだだったね、この城の専属医師をしている、ルーセルスだ、しっかし、人間を診たのは初めてだよ…上は割と私らと同じだけど下がねぇ…ま、検査した所アンタはただの魔力切れを起こしただけさ、何があったか知らないけど魔力を放出しすぎて気を失ったんだよ」


「魔力…切れ…」


「でも、気を失ってよかったね、じゃなきゃアンタ死んでたよ」


「え?…」


「まぁ、普通は魔力を使いすぎると気を失うだけなんだが、アンタは使いすぎだ…生命力を削る一歩手前だったね…魔力を使ったのは初めてかい?」


「は、はい…昨日が初めてです」


「そうかい…誰かに習った方がいいね……ん?昨日?アンタが運ばれて来たのは2週間前だよ?」


「………へ?に、2週間!?わ、私そんなに眠って……あ!ま、魔王さん!ハングさん!まだいますか!?」


多分、外で待っているだろう2人を呼ぶ


「ど、どうしたんだ!?ユキ君!」


「な、何か問題が!?ルーセルス殿!?ユキ様は!?」


「うっさいよ!親父ども!ここは病室だよ!」


「あ、あの!魔界は!?魔界の魔力はどうなったんですか!?」


もう、4人で叫びまくっていたのだが、私がそんな質問をすると3人はピタリと時が止まった様に動きを止めて、こっちを見て来た……え?何?怖い…


「ルーセルス、ユキは?」


「体に異常はないよ、まだ魔力が完全には回復してないけど普通に過ごせるさ」


「そうか…ユキ君、少し来てもらいたい所があるんだが、いいかね?」


「え、は、はい…」


そう言われて、私は魔王さん達について行った…連れてこられた場所は…知らない部屋の扉の前だ…


「あの…ここって?」


魔王さんは何も言わずに扉を開ける、3人に続いて中に入ると私は驚いた


部屋の中はとても広く中央にレッドカーペットが敷かれ、その先には玉座があった…ここって謁見の間?ってやつじゃ…それに左右に分かれて凄い魔族達が集まってる…あ、ルーセルスさんが列に入って…魔王さん玉座へハングさんはその傍へと行ってしまう…


こ、これ進まないといけないのかな?凄くみんなに見られていたたまれない…


「ユキ君、こちらへ」


中々動かない私に魔王さんが呼ぶ…私はゆっくりと歩みを進めてその前へとやって来た


「さて、ユキ君…あの後の事を話そう、君が気を失った後、大地の揺れは凄まじくなりあの穴は割れ出した…」


こ、これって…ダメだったんじゃ…


「そして割れ目から水が湧き出て来た…」


「水?ですか…?」


「そう…ハングと確認した、すぐにでも飲める綺麗な水だそれが割れ目から噴き出しあの穴を満たした…大昔に枯れてしまった湖が蘇ったのだ」


私は俯いていた顔を上げる


「それだけではありません、ユキ様が気を失っておられた間に調査したところ、魔界の様々な水源が蘇り大地は潤い、なんと新しい緑の草木が突然生え、急成長したと報告が上がっております」


目が熱くなる…


「更に魔都周辺にも草木が生え、花なども発見されています、そして魔物化していた動物達はなんと元に戻っていると」


もう、無理かも…


「そう言うわけだ、ユキ君…まぁ、まだやる事はあるが君のおかげで、魔界には大きな希望が生まれた」


魔王さんは立ち上がり、こちらに歩み寄って


「ユキ殿、此度はこの魔界を、我が民達の為に尽力してくれた事、本当に感謝している…ありがとう…」


頭を下げた…え!?ま、魔王さん!?王様って頭下げちゃいけないんじゃ…

魔王さんに続いて、ハングさんは膝をおって膝跨いだ…他の皆さんも…


「「「「「「我ら魔族一同、ユキ様に最大の感謝を」」」」」」


こうして、私は魔界を救った救世主になりました

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