第87話 決意



コーランさんに弟子にしてくれとお願いされた後私はハングさんに食糧の事を詳しく聞くために食糧管理をしている所にやって来た、あ、弟子入りは断りました、当然です、私なんて家庭料理が多少出来るくらいですから…知識はありますけど…


「ユキ様、ここが食糧の備蓄倉庫です、担当の者は今呼んでおりますので少しお待ちください、それまでお好きにご覧いただいても構いませんよ」


「ありがとうございます、ハングさん…」


少し中を漁ってみると…あ、さっきのジャガイモだ、でもあまり数はないみたい…あとは……これってさつまいも?んーなんか知ってるのより色が黒い…形は同じっぽいけど…これは、ごぼうかな?……根菜類が多いみたい…環境のせいかなぁ…ん?


「ハングさん、この扉は?」


「そこは冷凍庫です、生物などを凍らして保存しております」


「中を見ても?」


「構いませんが、寒いですよ?もう少し上着を…」


「大丈夫です、じゃ、失礼して…」


冷凍庫を開けると冷んやり冷気が漏れてきて、中に入ると…うぅ、やっぱり寒い…さっと見てでよう………お肉があるけど…なんのだろう?………魚はないみたい……ん〜〜…お肉しか無い……もう無理!寒い!


「うぅ、さむさむ…この中ってお肉しか無いんですか?」


「えぇ、そうです、魔界では食べられる肉は貴重でして、こうして保管しているのですよ」


貴重…


「あの、ハングさん…私、まだこの城の外に出た事なくてこの辺りの気候…と言うか環境ってどうなってるんですか?」


「………恐らく、ユキ様は食糧をみてここの環境は良く無いと推測されているのでしょう」


「は、はい…そうです、お肉が貴重…と言ってもこの大きな城の冷凍庫にあれだけしか無いなんて、いくらなんでも少なすぎます、それに野菜も根菜ばかりでしたし…」


「その通りです…ここのは満足に作物も育たない荒れた大地、魚も泳がない汚れた川…野生動物は軒並み魔物へ変化するか、食われるか…もう、何百年もこの飢餓は続いています、それでも我々魔族は元々も能力が高いせいか餓死者はそれほど多くはありません…しかし、0ではないのです、流石に子供は満足な食事を摂らなければ生きる事はできません、なので今我々はなんとか子供を守ろうと力がある者達が子供達へと魔力を渡しています」


「…魔力を?」


「えぇ、我々、魔族は食事を摂らなくても魔力を一定量体内に取り込むことが出来れば生きる事は出来ます、勿論、食事を摂らなければ力は付きません、普通、魔族の力は種族的に強い方なのです、ユキ様達人間の大人よりまだ5歳の魔族の方が腕力、魔力などは上でしょう、しかし…今の子供達は人間と同じもしくは、弱いかもしれません」


「そんな……あ、あの…大人も碌に食べれないのに子供達に魔力まで渡して大丈夫なんですか?」


「……もう、今年だけで数百、大人の魔族は死にました…子供は千、二千…今だに増えています…現在…我々魔族は滅亡の淵に立たされている状況なのです」


ここまで酷い者だったなんて…思っても見なかった…そして、ここの人達は優しいんだ…自分が死んでも子供達を護りたい思い出魔力を与えている…私たちで言えば死んでもいいから自分の血を全部あげている様な者だ…あの魔王さんも、物語に出てくる様な世界を自分の物にする様な悪い人なんかじゃなく、ただ自分の国の人達を護りたいだけの王様なんだ…


私には何が出来る…?なんのためにここに来たんだろう……おにーちゃん、私…出来るかな?考えいる事はある、やったことなんかないし、出来るかもわからない…でも、ただここで見ているだけは絶対に嫌だ!あんな…あんな思いをするかもしれない人達がここには大勢いる、その人達を助けたい…


「ハングさん、外に連れて行ってもらえませんか?実際に見たいんです…この世界を、そして、私にも手伝わせてください、この国を救うために!」

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