第81話 おじさん襲来
「…ぐす………スン……えへへ…おにーちゃん!」
誰か…助けて…前世の妹に泣きながら笑顔で抱きつかれて心が痛い…
「有希。なんでこっちの世界に?魔法陣から現れたってゼシアから聞いたけど」
「ずぴ!えっとね、私がこっちに来たのは3年前だよ、おにーちゃんが死んじゃって1年くらい経って高校に入学してすぐだね」
やはり、時間がおかしい…あ、でも俺がこの世界から前世の世界に帰った時も時間が進んでなかった…世界別で時間の進み方が違うのか…いや、俺の時は全く進んでなかったけど有希は向こうで一年経ってから来たと言った…けど、こちらでは既に15年が経ってる…この差は…考えても仕方ないか…
「そっか、じゃあ有希はもう高校生なんだな…三年って事は高三だな…急にこっちに来て不安じゃなかったか?」
「うん…最初は凄く怖かったよ…見たことない形をした生き物が一杯いて…でもねおじさん…あ、魔王さんの事ね…凄く優しくしてくれたの…見た目はすごく怖くて初対面では泣いちゃったけど、根気よく話しかけてくれて…それに、ゼシアちゃんとも友達になれたし」
よし、妹を泣かした魔王は後で殴ろう…
「ゼシアも仲良くしてくれたんだな」
「ホント、最初は何事かと思ったよ…たまたま、この街にいた時にいきなり魔王さんがやって来て「すまん!ちょっと人間の女の子の友達になってくれ!」って言われたんだから、新手のナンパかと思ったわよ」
何してんだ?魔王…
「で、実際会ってみたら、ユキってばなんていい子なんだろうって!凄いのよこの子、魔界の民もこの子には頭が上がらないからね!」
「あ、そうだった、有希は魔界の立て直しをしてるんだよな?昔から頭が良かったのは知ってるけど、よく国の運営なんて出来るな」
「えーとね…私、国を動かしてるわけじゃなくて…作物の作り方とか、農業、林業とか皆んなに自給自足をできる様に教えて、それをしてもらってるだけなんだよ…政治とかは魔王さんや宰相さんがやってくれてるから」
「そうなのか?なら、有希が魔王やる事ないんじゃないのか?」
「あはは…それね…」
有希がなんだが気まずそうに言葉を詰まらせる、その時、扉が勢いよく吹き飛んだ
「我らが愛しの魔王ユキを個室に連れ込んだ男はどこのどいつだ!」
「あちゃー、気付かれちゃった」
「あわわわわ…」
なんか変なおっさん魔族が入って来た…いや、おっさんかどうかは見た目じゃわからないが言ってる事が親父臭い…というか、なんだよ…このプレッシャー…ゼシアよりも…まさか!
「なぁ、この騒がしいおっさん?は誰?」
「アーク…もう気づいてるでしょ?魔王さんよ」
「あ、ゼシア君、元だよ元…今ではユキ君を見守る守護者だ」
急にキリッとしやがった…でも、そっかーコイツが魔王かぁー…………よし
「それで、貴様がにんげぶらっ!!!!」
「「!!??」」
「俺の妹を泣かせたらしいじゃないか…クソ魔王…」
俺は魔王の顔面を思いっきり殴った、勿論魔力も全開で乗せた…壁を突き破って吹き飛んでいく魔王…
「ふぅ……すっきりした」
「いやいやいやいや!!!何やってんのよ!」
「おにーちゃん!?なんで!?」
「いや、有希があいつに泣かされたって聞いたから制裁を」
「それ、もう3年前の話だよね!?ホントに何してんの!?」
「うるさい!大事な妹を泣かせた罪に時効などない!」
「そ、そんなおにーちゃん…」
「ユキ、嬉しがってる場合じゃない」
「きさまーー!!!いきなり殴るとは何事だ!!礼儀を知らぬガキめ!」
あ、戻って来た…鼻血出してる…
「ぷぷ…」
「何笑っとんじゃーーーー!!!」
魔王が魔力を解放して襲いかかって来た
「かかって来いや!よくもウチの妹に3年も魔王なんてやらしたな!ふざけんな!」
右!おらっ!右左足!ぐは!こんの!!
容赦なく殴ってくる魔王に対して拳を避けながら殴り返す…一発一発が重い…
「ちょっと〜こんな所で暴れないでよ!」
「「うるさい!」」
「ギャ!!!!!」
俺達は止めに来たゼシアをぶっ飛ばした…
「あんた達……何すんのよ!!」
ゼシアまで魔力を解放して魔法を展開して一緒に突っ込んで来た!
「纏めてかかっこいや!」
「私の力を舐めるなよ!若造どもが!」
「2人纏めて潰してあげる!」
3人は魔力を漲らせて衝突しようとした瞬間
「いい加減にしなさい!!!!」
突然、横から特大の魔力砲が放たれ俺達は纏めて飲み込まれた…城の一部が完全に崩壊してそのまま外まで吹き飛ばされ、瓦礫に埋もれている俺たちの前に有希が並々ならぬ魔力を纏わせながら降り立つ…
「3人共……正座…」
凍える様な表情で冷たく言い放つ有希に俺達は
「「「ご、ごめんなさい」」」
すぐに謝った…
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