第67話 進行する破滅


「そうか!ソロモンは無事か!」


妻の報告を聞き、椅子を倒しながら立ち上がって安堵の声をあげるのはアストラル魔法王国国王アルガルド


「暫くは絶対安静ですが峠は越えたので、あの方なら回復するでしょう」


子供を見る様に夫を見つめ微笑むミレディ王妃、しかしすぐに目を細め、笑顔を消す


「アルガルド、ソロモン様を倒す人物が死の森に…警戒が必要です」


倒した椅子を元に戻して座ったアルガルドも真剣な表情で返答する


「あぁ、すぐに死の森方面への警戒線を払う、我が国に被害が出ては堪らぬからな…だが…」


「ソロモン様が叶わなかった相手…対抗できるのは彼等以外にはいないでしょうね…」


彼等、とはルグウィン家のアーク一党の事である、既にこの国に彼等以上の力を持つものはいない

何より、齢15歳にして大魔法使いソロモンを超えているアークには頼る他ないだろう


「はぁ、魔法国の国王であるのに…子供に頼らればならぬとは、情けない…それに、国内には愚か者がいる」


「ルグウィン家の…こう言ってはなんですが、戦力の事が漏れた様ですね…」


「あぁ、アークの事も凡そは知られているだろう…15歳の子供に何が警戒だ!全く…」


ルグウィン夫妻から、アークは規格外の強さを持っていると数年前に聞かされ、初めはなんの冗談だと笑った、アルガルドだが、目の当たりにした彼の力は王である自分ですら足元にも及ばない程の力を感じた、それ以来この事実を秘匿し限られた者にしかアークの力は伝わってはいない…はずだった…


「まさか、信頼していた家臣が口を滑らすなど…あまりに軽率な…俺も見る目がなかった様だな…」


「アルガルド…今は、ソロモン様を襲った人物の警戒を」


「あぁ、すまん…話がされたな…すぐ「失礼します!!陛下!!!至急、ご報告が!!」…


突然、部屋の扉が強く叩かれた…ここは王の自室本来ならばあってはならない事だが、だからこそアルガルドは緊急事態だと悟った


「入れ、どうしたと言うのだ」


兵士の1人が随分と慌てた様子で入室し、膝を折る


「はっ、ご無礼を…つい先程、帝国から使者が参りました…いえ、使者と言って良いものか…」


「帝国から?それにそれはどう言う意味だ?その者はなんと?」


「帝国が宣戦布告を…」


「は?……待て、確かか?」


馬鹿な…!平和条約を結んでまだ一年だぞ…たった一年で我が国に攻め込む準備が整うはずがない!


「はっ!こちらが、帝国より届いた信書であります」


信書は本物…一体何が起こっている


「すぐに大臣達を集めろ!先程戻ったルグウィン卿も呼び戻せ!」


「はっ!」


アルガルドはありえない事態が起こっていると判断し命を下す、それを受け、兵士が退室していく


「アルガルド…」


「一体何が起こっているのだ…」












〜死の森〜


「準備は整ったか?」


「バッチリよ!そっちこそ大丈夫なのぉ〜」


「抜かりなどあるはずがないだろう…」


「グハハハ、次の国には骨のある奴がいるといいなぁ!」


「そうですねぇ〜帝国は歯応えがまるでありませんでしたからな…」


「うぇ〜戦闘狂の2人もいるのぉ〜」


「なんだ〜俺らがいるとダメなのか?」


「我々が勝手をしないか心配しているのでしょう…ご安心を、我らが王より貴方の旗下に入る様命じられております」


「了解した…では進軍開始…目標はアストラル魔法王国」


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