第56話 掛け替えのない家族
家の片付けが終わり皆でリビングに集まると師匠が
「私もアークの妻になるぞ、よろしくな!お前達」
「…え?お師匠何言ってるんですか?」
「アーク…まさか、大魔法使いまで手籠にするとは…呆れを通り越して尊敬するぞ」
「何言ってんだよ!ふざけた事言ってる場合か……うわ!アメリア!その規模の魔法はヤバイ!家が吹き飛ぶぞ!」
「アンタは!どれだけ…遂にお師匠まで!」
「これこれ、やめんか…アメリア、お前アークからの告白の返事をまだしとらんそうだの」
「うっ…それは…」
師匠がアメリアの魔法を破壊しながら問いかけるとアメリアはバツが悪くなったように俯く
「散々、アークを追っかけまわしといて何しとるんじゃお前…もうシュウとの踏ん切りも付いたのだろう?もたもたしとるからこんな事になるんじゃ…それにどうせこいつはこういう奴じゃ…最終的には数名の妻を持つと思っとったしの、お前は反対なのか?」
「………アル達の想いは知ってるし、彼女達ならアークと一緒になってもいいと思っています…」
「なら、さっさと返事をしてやれ…追いかけてきた奴が急に戸惑ってるとアイツも不安になってしまうぞ」
「はい……それで、お師匠もって本気なんですか?」
「そうじゃよ、アイツと一緒になりたいと思っとるよ」
「お師匠、歳を考えてくださいよ……「あ"?」ひっ!」
「…いくらお前でも言っていい事と、悪い事があるぞ……そもそも、齢なぞ私に取っては関係ない様なものじゃし」
一瞬師匠から物凄い殺気が飛んだ…やはり同性でも女性に年齢の事を言うのは禁句な様だ
「師匠、どういう意味ですか?」
「私の年齢は300は超えとるからの、だって私、エルフだし」
「「「「「「は?」」」」」」
「ワォん?」
僕らは揃ってポカンと口を開け、フェルも首を傾げる…
「ま、待ってくれ…エルフだと……生き残りがいたのか…」
「流石に驚愕過ぎますね…」
「?…皆…どうした…です?」
「あ、そうか…アルは歴史とかわかんないよな」
「バカにされた…です?」
「いや、今はいいから!お師匠!!ホントにエルフなんですか!?だって…なら、耳は!?」
「そんなもん、魔法で隠しとるに決まったろうが………ホレ」
師匠は耳に手をかざし、魔法を解除した………前世やこの世界の本で見た長く尖った耳が師匠についていた……
「???」
アルが首を傾げている
「アルよ、私達エルフはな…800年ほど前に絶滅したと言われとるんじゃ…私自身も母以外のエルフを見たことはない」
エルフは昔は森の守護者として自然を愛する種族と本で読んだことがある、永遠に近い寿命を持ち、高い魔法適性と多くの魔力量も持っている…しかし、師匠の言う通り、800年前に絶滅した…いや、今は絶滅させられたと言った方がいいか…大昔には禁忌とされた魔法が多くあった、その中でも生贄なんかを用いた魔法があったと言われている…中でもエルフを触媒とした邪法が存在したと…真実かはわからないが…エルフの魔力は人間よりも遥かに超越してた、その為か邪法の材料となってしまう…人間がその邪法を用いるためにエルフを刈り尽くしたと記録が残っている……師匠の書庫で読んだ本の内容には胸糞悪い内容が記してあった
「でも…ソロモンさんの耳…見たこと…ある…です…あの人達は…エルフ…じゃない…です?」
「それはハーフエルフじゃろう…混血は割とおる…じゃが、純血のエルフはもういないとされてきたんじゃ…私達が隠れて暮らしているのも理由じゃろうが…他の者達が何処にいるのか、そもそもいるのかすら分からん」
「ソロモン様、そもそも…何故、エルフである貴方が元とはいえ、王国に仕えたのですか」
ヴァニタスが師匠に問いかける
「三代前の国王と母が馴染みでな、母が亡くなった時に…途方に暮れていた私に居場所をくれたんじゃ…わかっとると思うが、私達エルフの存在を広く知られると厄介ごとが舞い込むのでな…人間として、この国に仕えたのじゃ」
「なら、おじさんは師匠の事を」
「知っておるよ、もはや…アイツくらいしか私の正体を知る者はおらんじゃろ、お前達以外はな」
「どうして、私達に教えてくれたのですか?黙っている方がリスクもないのに」
「当然、お前達を信用も信頼もしてるからな」
「お言葉はありがたいですが、私とヴァニタスは今日、会ったばかりです…その様な秘密を教えていただく関係ではないのでは…」
「お前もアークを好いとるのだろ?アークもまたお前に惹かれとる…それに、アメリア達とも心が通じ合ってらからの、そっちの奴もアークが身内として信用してるなら私にとっても身内さ、なら教えても構わないと思ったまでじゃ」
「光栄です」
「そうだな…貴方に身内と思ってもらえるとは…」
「師匠……」
「なんじゃ?エルフは好かんか?アークよ、アメリアも受け入れてはくれんのか?」
師匠が笑って茶化してくるが少し、怯えた様な目をしてる気がした…
「そんなわけない!師匠がエルフだったとしても師匠は師匠です、俺の掛け替えのない家族です」
「私も、お師匠が何者でも…私を救ってくれたのはお師匠です…私のもう1人のお母さんです」
俺とアメリアは師匠に抱きしめた
「そうか……感謝するよ」
師匠は俺達を抱き返した…師匠の目に光る物が見えた気がした…
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