第55話 憧れ


「師匠、この本は何処ですか?」


「それはあっちの棚じゃ、悪いのぉ片付けてもらって」


「悪いと思うなら普段からしてくださいよ」


あの後、僕らは家の大掃除をしていた…アメリアが


「こんな家耐えられない!片付けるわよ!」


「私はまだ眠いんじゃが」


「何か言いました?お師匠」


「さ!片付けるとするかの!」


アメリアの冷たい笑みに師匠がビビる…


「ヴァニタス!まずは片付けを手伝いますよ!いつまで読んでるんですか!」


「まて、アン…まだ読み始めたばかり…グボッ!」


「い・い・か・ら・き・な・さ・い」


アンとヴァニタスはリビングを片付けてくれるようだ


「では、アルさん…私達はキッチンをなんとかしましょうか」


「わかった…です」


シャル達はキッチン、アメリアは寝室を担当する、僕と師匠は本を片付けに書庫に来ている


「相変わらず広すぎますね…これ何処にあったかとかわかるんですか?」


「魔法でマーキングしとるから問題ないわい」


「相変わらず、ちょっとした所に手が届く魔法を開発してるんですね」


「生活を便利にして何が悪い」


「だから、師匠は生活能力皆無なんですよ」


「やかましいわい!」


師匠は基本的には魔法の開発と研究をしている…師匠が開発した魔法は様々、重いものの重量を軽くしたり、体を綺麗にしたり、今のように本と本棚に魔法でマーキングを付けたりと多種多様な魔法を開発している…自分が楽をしたいがために…


「ところで、アークよ…アメリアとはうまくいったのか?」


「なんですか、急に……告白はしましたけど返事はまだです」


「なんじゃそれ、アメリアめ…肝心なところで足踏みとはな…アルとシャルはどうじゃ?」


「え?なんで師匠が知って…」


「あの子らがお前を、好いとるのは昔から知っとるわ…知らんのはお前だけじゃ、朴念仁が…」


「うぐっ…」


「あれほどわかりやすい好意もないじゃろうて…それに、もう1人の娘、あの子もお前を好いとるの」


「ええ、まぁ…アメリアに告白した事を知ったら、皆に告白されました…」


「一気に4人か…幸せ者じゃな」


「そんな簡単じゃないですよ…」


まだ僕の中で皆の好意にどう向き合えばいいのかわからない…


「簡単じゃろ、皆貰ってしまえ…好いとるのは、お前も同じじゃろ…なら、問題ないではないか」


「そうは言っても、俺に皆をもらう器があるとは思えなくて…」


「なら、私が女の扱い方を教えてやろうか?」


「へ?また師匠何言ってるんですか?」


少し僕が動揺すると、師匠は服の胸元を少し開ける


「先程も、私に見惚れておったろ?どうじゃ?触りたいか?アメリア達よりも大きいじゃろ?」


自分の胸を持ち上げ、強調する師匠…


「ちょっと!からかわないでください!」


「遠慮するな、それにお前のことは好きじゃぞ?勿論、弟子としてではなく男としてじゃぞ?」


「は?……………はぁ!!??」


「なんじゃ…急に大きな声出して…信じられんか?悲しいのぉ…しかし、事実じゃ…お前となら子供だって作ってもよいと思っとるしな」


「いや、あの、えっと…」


突然の師匠の告白により俺は絶賛パニック中だった


「それとも、なんじゃ?私のような年寄りは好かんか?」


「そんな事ありません!師匠はいつだって俺の憧れで……あ」


「ふふ、憧れか、そうかそうか」


「いや、い、今のは…」


「違うのか?」


「いえ、本当です……あぁもう…」


恥ずかしすぎる…俺は顔を伏せる


「アーク…こちらを向け」


師匠が俺の顔に触れ上げると


「うむっ?!」


「んっ……」


キスをされた……


「ふふ、良いものじゃの…私の初めてじゃありがたく思えよ」


そう言って笑う師匠の顔はとても魅力的で俺は見惚れてしまって何も言えなかった

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