第53話 何言ってんの!?


しばらく、アンがフェルと戯れているとヴァニタスが父上に


「ルグウィン卿、あの…我々をこの屋敷に置いてもらえるとアークからは聞き及んでおりますが、本当によろしいのですか?」


ヴァニタスがそんな質問をするのでアンも姿勢を正し隣に立つ


「我々はもはや、帝国に戻るつもりもありませんが、向こうからすれば皇位継承権がある我々を放っておく理由がありません…必ずと言っていいほど刺客がまた来るでしょう…こちらの事情に巻き込む事になってしまいます」


「えぇ、勿論それは分かっています…しかし、それでも、と息子に言われましたからな…大切な友人だからと」


2人が驚いた顔で僕を見る…父上なんで言うのさ…


「学園も安全だけど、ここに攻め込んでくる愚か者なんていないよ」


騎士団と魔法師団の団長、大魔法使いとその弟子、SSSの冒険者、それに僕もいるからね…国だって落とせる戦略だよねここにいる人たちって


「アーク…」「アーク様…」


「大丈夫!迷惑だなんて思ってたら、連れてこないし、父上だって了承しないから」


「「ありがとうございます」」


「お話は済んだかしら?そろそろ夕食にしましょう!あ、先にお部屋に案内しますね」


母上が両手を鳴らして皆に移動を促す、それぞれ部屋へと案内され、荷物を置いてから食卓に並ぶ


「じゃあ、揃ったし食べましょうか」


【いただきます】


「あ、そうだ…アンちゃん、ヴァニタス君、彼女達も紹介しとくわね、私の侍女のエマとアークちゃんの侍女のカノン、エステルの侍女のメイよ…この家では彼女達がメイドの中心だから何かあったら言ってね」


「エマで御座います、何なりとお申し付けください」


「カノンで御座います、アーク様がお世話になっているようで、感謝いたします」


「メイで御座います、よろしくお願い致します」


「「こちらこそ」」


エマ達が母上に紹介され、それぞれ挨拶をする


「私の従者も紹介しておこう、クロード」


父上に呼ばれ、一歩前に出るクロード


「この家の従者の取りまとめをしております、クロードと申します、御用向きがあればお声掛けください」


「ありがとうございます」


「皆様のご好意、感謝いたします」


アンとヴァニタスが立ち上がり、頭を下げてお礼を言う


「父上、そういえば師匠はどうしたんですか?」


「あぁ、ソロモン殿なら先程、呼びに行かせたのだかな…ここしばらく自室から出ていないようだ」


「お師匠…また、研究に浸ってるのね…」


「どうやら、そうらしいね…後で挨拶に行こうか」


「おい、アーク…今、ルグウィン卿はソロモンと言ったか?あの大魔法使いのソロモンか!ここにいるのか!?いるんだな!会わせてぐはっ!」


「やめてください!ヴァニタス!皆様の前でみっともない!申し訳ありません!この愚弟は魔法の事になるとどうにも…」


「お兄様と同じタイプなのね…ヴァニタス君は」


「お兄様と言うと…」


「国王陛下だね」


「まさかヴァニタスと同じ人種がアルガルド陛下とは…お会いした時はそうは思えませんでした…」


「まぁ、お兄様も謁見で醜態を晒すのはもうしないでしょ」


「もう、って事はしたんですね、おじさんは…」


「あぁ、それはもう酷かったよ…」


「そうよねぇ、宰相にもこってり絞られてたし」


父上と母上が遠くを見つめている…一体誰に何したんだ…おじさん…


「アーク、ほら貴方の好きな物じゃない?早く食べないとなくなるわよ」


「あぁ、ありがとう、アメリア」


「あ、あんなお兄様の事より、アークちゃん…アメリアちゃんとは上手く行ったの?」


「ぶっ!げほっ…は、母上!何を言うのですか!いきなり!」


「お、お義母様…」


「えー、だってぇ2人ともなんだか距離近いし、もう恋人になっててもおかしくないじゃない?」


「いやいや!だからってこんな皆がいる所でやめてよ!」


「あ、あの…アークにはずっと前から好きだって言われてて…その、返事を待ってもらってるんです…」


「「「え"」」」


「まぁ!まぁまぁまぁ〜そうなのね!アークちゃんったらいつの間に!うんうん、年齢が離れててもママは気にしないわ!アメリアちゃんとってもいい子だし!ね、アドルフ」


「うむ、これほどの器量の持ち主そうそうはおらんからな、アメリア殿身分の事は気になさらずに、アークを好いているなら、息子のことよろしく頼む」


「ひゃ、ひゃい!お、お任せください!お義母様!お義父様…あ!し、失礼しました…」


「あぁ、構わないよ、エレナと同じように呼んでくれ…しかしめでたいな」


「ちょ、ちょっと!何、話進めてるんですか!まだ返事もらってないって言ってるでしょ!アメリアも!帰ってきて!」


「えへへ……」


母上と父上に認められてアメリアはどこかに旅立ってしまった…幸せそうな顔をして…


「アーク様…」


「ん?何?アル…どうしたの?」


「アーク様……す、好き…です」


「ア、アル!?」


「まぁ!」


「ほぅ…」


アルが突然告白してきた…僕は動揺してしまって立ち上がり、椅子が倒れてしまう…母上は面白そうに顔をきらめかせてる…父上は見ものだなみたいな顔を…


「アーク様…私…本気…です」


「アル…えっと、僕は…」


「待ってください!私もアーク様を心から想っております!アーク様!愛しております、私とも結婚を前提にお付き合いしていただきたく!」


「シャル!?」


シャルまで…い、今決めろって言うのか…


「あ、あの!アーク様!」


「え?アン…ま、まさか…」


「私もアーク様を愛しております!どうか私も一緒に居させてください!」


「そ、そんな……」


まさか、アンにまで告白されるなんて…僕は一体どうしたら…」


「アークちゃん、何を悩んでいるの?皆の事好きなんでしょ?なら、皆貰っちゃえばいいのよ!」


「何言ってんの?母上」


「むぅ、アークちゃん…少し口調が変わったわね…可愛くないわ」


「いや、今はそんな事どうでもいいよ!それより!皆貰うって4股しろって事!?」


「その言い方は不適切ね、一夫多妻よ?この国は」


「はぇ?」


「だから、一夫多妻!妻を複数持つ事が許されているの、国の法律としてね、だからアークちゃんが皆好いていれば、全員をお嫁さんに出来るのよ?知らなかったの?」


「……………」


「アークちゃん?……あら、気絶してるわ、この子…」


あまりな事に僕は意識を手放してしまった…

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