第49話 出来ないだろう


「はぁ,はぁ……」


暗い裏路地を駆けるアンを追い複数の人影が飛び交う


「はぁ,はぁ……蒼炎!!」


アンが魔法を放つが素早く動く人影に容易く避けられる


「くっ!……あ……」


アンは足止めにもならない攻撃をやめ、更に逃走するが袋小路に足を止める


「アーク様の様子と急な意味のない呼び出し…まさかとは思いましたが…当たってしまいましたね…」


アンは自分達を狙う刺客の存在に気付き、1人王城から抜け出した…そして、予想通りに刺客ぎ現れ襲われて、逃げていた


「ふふ、自身の力を驕ってしまいましたか……ここまで通用しないとは…」


「……帝国皇女殿下アンゼリカ様…お覚悟願います…」


「帝国の暗殺部隊…貴方…筆頭のバルガスですね?」


「殿下に知ってもらえているとは、光栄です」


「私とて王族です…調べるくらいは簡単でしたよ」


「それは、違う…貴方だからこそ…ですよ……我々は皇帝以外には姿すら見せない…多少、調べたところで我々の存在を知る事などまず、出来ない…今は王弟殿が皇帝に一番近いと判断して従ってはありますが…」


「それこそ違いますでしょう?、父を殺したのは貴方ではなくて?あぁ、別に恨んではいませんよ…」


「ふふ、えぇまぁ…あんな人形の様な皇帝に捧げる忠義などありません…勿論、皇帝になる気のない貴方と弟殿にもありませんがね」


ふざけた様に、礼をするバルガス…


彼は幼い頃より暗殺者として教育を受け、その才覚を教育を施した、実の父親を殺す事で覚醒させた…皇帝の命で数々人間を暗殺してきたかれは一国の暗殺部隊の筆頭へと上り詰めた男だ


「……私達を狙うなら、貴方だと思っていました」


「そうでしょうな、他の者なら貴方には敵わないでしょうから…他の者には逃がさない様にただけ指示しています…それにしても、わざわざ自分から姿を現し、1人になるとは…何か目的が?」


「それを言うと思いますか?」


「いいえ、結構、貴方様を亡き者にすれば済む事です…しかし、惜しいですな…才気は陛下…いや、王弟殿よりもあるというのに…帝位つく気がないとは…」


バルガスは闇に溶け込み姿を隠す…


「意外とお喋りなのですね…あんな国なんて治めたくもありませんよ…上から下まで力で解決しようとすると者達にはうんざりです…私はここまでのようですね…ヴァニタス…貴方を守る事が出来なかった私を許して…いえ、忘れてください…貴方は自由に生きるのです…アーク様…あの子を頼みます…」


アンは諦めたかの様に天を仰ぎ、祈るように目を閉じる…


アンの首に目掛けて暗闇より現れたバルガスがナイフを振るう…瞬間、バルガスが吹き飛ぶ…


「え?…………あ……」


「間に合ったか…アンが逃走経路に焦げ跡を残してくれて助かったよ」


「アーク様…」


「ゲホッ!何者だ…」


口から血を流して、フラつきながらもバルガスが立ち上がる


「アン、後で説教だ…僕とアメリア、アルからのね…ヴァニタスにも事情を教えて、叱ってもらうからね…復讐の事も教えるから」


「そ、それは…」


「喋ってんじゃねぇよ!」


「うるさい…」


バルガスが飛び掛かるが、空中で止まる…バルガスだけではない、周囲を囲んでいた暗殺者達も見動きが取れなくなっている…弱過ぎる


「既に、お前も仲間達も拘束済みだ…お前達を王国の騎士団に引き渡す…抵抗するなら命はない…まぁ、出来ないだろうけど」


「くっ!この俺がたかが学生の拘束魔法になど……な、なぜ?!…レジストできない!?こんなガキの魔法だぞ!それにこの人数を全てを一瞬で拘束したというのか!き、貴様は一体何者だ!」


バルガスは確かに帝国随一の暗殺者だ、実力も充分備わってるが、相手が悪すぎた…アークは前世で培った魔力をそのままに転生を果たし、転生後も魔法の修練をする事でアークとしての魔力も上達していく


産まれて成長する過程で、秀とアークの魔力が混ざり合い、一つとなった…その為に膨大な魔力量、前世からの知識、技術に更に磨きがかかり既に、この世界随一と言える力を有している…


「諦めろ…お前達では抜け出せない、魔力の質が違うんだ」


「ふ、ふざけるな!こんな…こんな事があってたまるか!」


「帝国の暗殺部隊を…あ、あんなにあっさり…」


「アン、怪我は?」


バルガスを無視して、アンに近寄り安否を確認する


「だ、大丈夫です、助かりました…」


「さて、全然大した事なかったな…魔力もほとんど使わなかったな…アメリアを呼ぼう」


「よ,呼ぶ?」


少しアンから離れて、魔力を解放する…ついでにうるさい奴も黙らせて、他の奴らの戦意を無くしとくか


「ひっ!…」 「こんなの…」「ば,化け物…」


おい、誰だ化け物って言ったの…失礼な……アメリアが来るまで待つか…


「あ、あの…アーク様…」


「復讐なんてやめたら?」


「え?………今更説得でもするんですか?」


驚いた顔をするがアンはすぐに俺を睨む


「いや、君が何かを起こすとこれから俺が駆り出されそうだからね…面倒だなと…」


「は?……私が…どんな思いで…それを…」


「いや、それ僕に関係ないよね?アンが復讐をするのは勝手だけど僕を巻き込まないでほしいな…それに、そもそも君の動機がね…君からしたら相当な事なんだろうけど、わざわざ国に復讐さらには弱すぎると思うんだ、身内を殺されたわけじゃないし」


「なら、放っておけばいいじゃないですか!私の事なんて無視していれば!貴方が私の復讐を軽いものだと思うなら!散々、私への協力を断っておいて、今更助けないでください!私が死ねば貴方も楽でしょ!?迷惑な女が消えるのですから!」


「本気で言ってんの?」


「ぁ………」


俺は解放していた魔力に殺気を乗せ飛ばす、アンに向かって…すると、アンは腰が抜けたのかその場にへたり込む……顔は青くなり歯がカチカチとなっている、体も震えている…


「そんなに死にたいなら…今、殺してやろうか?」


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