第47話 囮?


「はぁ、アーク様…やり過ぎです…」


シャルがため息をしつつ、僕に苦言を伝えてくる…僕は今、理事長室に来ている…バカを焼いたことでシャルに呼び出しを受けた


「腹が立って、衝動的にやった…後悔はしていない…」


僕がはっきりと言い放つとシャルは頭を抱えて


「はぁぁ…アメリアさんとアルさん、それに多くの生徒の証言で今回はあの者に、全面的に非があります…あの者は解雇いたします…全く…この学園の理事として情けない…あんな軽薄なものがいるなんて…人事の見直しをしなければ…」


苦労してるんだな…責任者って


「アーク様、貴方様もお咎めなしとはいきません」


「なんで?」


「罰を受けてもらうと言っています…いくらなんでもやり過ぎです」


「ちゃんと手加減したのに」


「それでも、全身火傷に全治3ヶ月です!何故か回復魔法の効き目が悪くて」


「あぁ、それは僕の魔力をあいつに少し送ったからね、体内で別種の魔力が反発しあってるんでしょ」


「今,なんとおっしゃいました?…魔力を送った?本当なのですか?」


そうなのだ、母上が僕やエステルの魔法の練習の時に魔力を送って感じとりやすい様にしてくれていたが、本来魔力は他人に送ることはできない…母上は相手の魔力を分析して、自身の魔力を変換し送っていると言っていたがあれは例外だ


でも、回復魔法は対象者の傷に光属性の魔力を送って癒している、つまり送ることは出来る、が体に流すことはできない…いや、出来はするが体内で自身の魔力と送られてきた他者の魔力が反発し合って、魔力の流れを悪くする…それによりいくら魔力を送っても、その魔力を使うどころか発動すら困難になる


これはお互いの魔力の質によって結果が変わることもわかった


魔力の質が相手より悪ければ送った魔力が抑え込まれてしまい魔力の流れは乱れることはない、つまり質を高めて相手に送り、魔力のコントロールを乱すことができる


さらに、回復魔法は傷を直接癒すわけではなく、光属性で対象者の魔力の流れを活性化させて、傷を自身の魔力で癒すのだ…なので、魔力が乱れた状態だと回復魔法の効果が薄くなる


「もう、呆れます…どこまで…貴方は…」


「結構大変だったけどね」


「大変では済まないですよ、普通…」


「それで?罰って何するの?」


「はぁ…アーク様には、護衛を頼みたいのです」


「護衛?シャルの?どこか行くの?」


「いえ、私ではなく…アンゼリカ、ヴァニタス両殿下のです」


「え?2人の?」


「はい、三日後に王城にお二人をお連れするのですが、この学園と王城は同じ王都にあっても少し、距離があります…移動には馬車を用いますが、道中の護衛をお願いたく」


「……護衛くらいいるよね?何か気になることが?」


「暗部が帝国からの刺客を確認した様です、すでにこの王都に入り込んでいると」


「確認したって会ったの?」


「どうやら会敵しましたが、逃した様です…こちらに被害が出てしまったと」


「なら、刺客がいると分かっているなら何故、わざわざこの学園から出すのさ?……囮?」


「………はい」


「ッ!そんな!」


「どうやら陛下はそのつもりの様です…」


おじさん…なんで…


「……分かったよ、護衛を引き受ける」


「ありがとうございます、アメリアさんとアルさんにも協力してもらいます」


「それは、心強い…絶対に守ってみせるよ」


どんな奴が来ても、2人を絶対に守ってみせる、僕…俺の全てを賭けて

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