第44話 あ、キレた


特訓にヴァニタスの参加が決まって翌日、魔力切れのシルは大事をとって今日はお休みだ、寮の部屋でまだ寝てるんじゃないだろうか


今は修練場でS、Aクラスの合同でアルが受け持っている戦闘の授業だ、物騒ではあるが、この世界に戦いは身近だ…生き残る術を学んでおくに越したことはない…のだが…


「うわぁー!」


「キャー!!」


「ひぃ!」


これはひどい…次々に生徒を吹き飛ばすアル…はぁ、後からシャルに怒られないか?


今から数分前、授業が始まってすぐのこと…Aクラスの1人が


「こんな小さな奴がSSSの冒険者?信じられるか!そんな事!」


などと宣った、おい!小さい言うな!

すると同調する様に他の生徒も


「そうだ!貴様なんかに学ぶことなどない」


「私達はもう充分な実力があります、今更戦闘訓練など時間の無駄ですわ!」


「そもそも何故、私達が戦闘訓練などしなければならないの?」


「俺は貴族だぞ!そんなもの必要ない!」


「僕らはすでに強い!自分より弱い奴に学ぶことなどない!」


などと、好き勝手に言っている…コイツらは何を言ってるんだ?貴族は戦争になれば国を守る為に率先して戦場に立たなければならない…なので学生の内から戦闘訓練をするのは当たり前だろ


それに自分が強いと言ってる奴も所詮は学生の中での話…Sクラスの奴も何人かいるな…上位のクラスに入れたとしても、学園の外に出ればあの程度はごろごろいる、井の中の蛙とはこの事だな…貴族ばかりだし


そして、最初の言動でキレかけているアルに禁句を言う奴が…


「おい!チビ!どうやって理事長に取り合ったんだ?」


「…………………コロス」


あ、キレた……って!


「待て待て待て待て!」


僕は慌てて大剣に手を伸ばすアルに近づいて小声で宥める


「アイツらは、アルのこと何も知らないんだよ…だから、一々気にしてもしょうがないよ、それよりこう言うのはどう?………」


「わかったです…おい、お前達…不満がある奴は私を倒せたら授業しなくてもいいです、全員でいいのでかかってくるです…この雑魚どもです」


そして始まった蹂躙劇…大丈夫だよね?死人出ないよねアルさん…


「愚かだな、相手の力量すら測れないのは」


ヴァニタスが言う、何人かはアルの力を見抜き参加しなかった、Aクラスにも数名いるので全員が節穴ではないのだろう…平民の生徒は冒険者は貴族より身近なのか、アルを知っていた様だ


「全く嘆かわしい…これが、これからこの国を背負って立つ貴族達とは…後でお話しなければ…」


「まぁまぁ、まだ学ぶ機会が出来たと思いましょう、マリィ」


「アン…そうですわね、先生にしっかりしごいてもらいませんと」


マリィとアンは仲良くなったのか?…アンの狙いが復讐なだけに心配だ……


「終わったようだな」


ヴァニタスが言うので見ると最後の1人がアルによって蹴り飛ばされる…生徒は魔法、武器有りなのに対してアルは素手…身体強化も無しで純粋にアルの身体能力と戦闘技術で戦った


まぁ、やる前から結果は分かりきっていたけど


「……弱すぎです、お前達は戦場ではすぐに死ぬです、今の甘い考えを捨て鍛錬するです」


アルはこっちに来て


「まだムカつくです…けど、貴方達は合格です、私の力をキチンと理解してるです、なので、そこのAクラスの4人はSクラスに推薦しとくです」


「「「「え?」」」」


「戦いに置いて最も必要なのは何だと思うです?」


「えっと…魔法の強さ?」


「いや、力だろ?」


「戦略だよ!」


「魔力、腕力、知略全て違うです、必要なのは生き残ること…です、敵の力を…過信せず…冷静に…見極める…時には…引く…それが…一番…です」


「で、でも逃げるなんて…」


「では…死にます?」


「そ、それは…」


「恐怖は…悪では…ない…です…逃走も…罪では…ない…です。生きている…限り…何でも…出来る…です」


彼女が長年、冒険者として培ってきた生き様なんだろうな…


「では…残り時間も…少ない…です…授業を…やる…です」


アルからの戦闘訓練を終えた僕達は今だに伸びている生徒達を魔法で浮かせて教室に戻ったのだが目を覚ますと、マリィからお説教を受けるハメとなる


その後、授業が終わりアルはシャルに連れて行かれた…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る